千三十三生目 乗込
魔王の口内に侵入した!
全員着地などせず急いで先へ進む。
光神術"ライト"で良く見えるものの中身は魔王とは言え結構生なましい。
「あそこから入って!」
私は奥へと続く道を指す。
細くなっているがこのメンバーなら問題ないだろう。
……うん!?
急激にエネルギー反応が高まる。
これはまさか!
「おい、なんか来るぞ!」
「反射的に炎をはこうとしている! 私の後ろに!」
イタ吉たちをいそいで下がらせゼロエネミーを大盾モードに!
左頭が扱うブレスは炎。
私達を焼き殺す気だが……
「効かない!」
凄まじい炎のエネルギーが叩きつけられる!
"四無効"で無効化できる私も減衰しかできないほどの業火。
だが炎なら他の能力よりも防げる。
「ひぃー!」「あっぶね!」
「だから言っただろうイタ吉たち、危ないって……」
ゼロエネミー大盾で守り業火が収まると同時に再突入。
ここで時間をかけていられない!
当然事前準備で自前で空気を肺に満たせるようにしてある。
簡単に言うと水中時処理と同じ魔法だ。
全員にしてあるからここの不要な気体を吸い込まずに済む。
『無事ですか!?』
『うん、ドラーグ、こっちは無事にもぐれたよ』
『よかった……じゃなくて大変です! 本格的に飛行を開始しました! おそらく速度が乗ればすぐどこかへ行ってしまうかと!』
『わかった!』
ドラーグからの念話。
ついに魔王の身体は空に浮いたらしい。
地球を見つけて空に浮かぶ……
まさか行く先は……
いやまさかね。
「魔王が飛行しだしたらしい! もうカバーは得られないかもしれない!」
「ま、ここまで来たら魔王の心臓でも破壊してさっさと出よう。今度こそヤツに止めを刺すぞ」
「よし、やるか……!」
ダカシやインカは気合を入れ直し私達は口内からさらに奥へと飛行。
あの長い首へ入ったのだろうか。
「泡?」「でっか!」「やべぇ!」
「なんだ? すごい敵意を感じる」
「防衛する気なんだ、突破しよう!」
「あんまり近づきすぎないほうがいいよ!」
イタ吉やインカがまっさきに気づいたが泡やら粘液みたいなものが私達の方へ飛来してくる。
私達より下手すると体積があるそれら……
おそらく触れると捕縛され殺される。
私は"フレイムボール"で弾いたり剣ゼロエネミーで斬り裂く。
グレンくんは勇者の剣を振ってビームを放っていた。結構なんでもできるなあ。
それぞれが斬り伏せつつ慎重に奥へと進む。
時間勝負になりがちなときほど焦らず行かないと危険だ。
ちゃんと首を抜けよう。
しばらく斬り進めればどうやら喉元は通過したらしい。
体内の感じが変化し広い空間にたどり着いた。
「グレンくん、どちらへ行けばいいと思う?」
「……こっち! 魔王の気配が濃厚にある!」
「魔王の中なんだからそりゃどこもそうなんじゃないのか?」
「いや、説明しづらいけれど……とにかくこの先に惹かれるものがあるんだ。行ってみよう!」
「ああ」
ダカシの質問ももっともだが対魔王として強い勇者であるグレンくんの感覚にここは任せたほうが良い。
このままグレンくんを先頭にしていそう。
空間のにおいをわざとかいでみたものの不思議と生体特有のにおいが薄い。
正直酸素も通常量確保できるからあそこまで魔法であれこれした意味は薄かったな……
暑くも寒くもなく快適だしなんで魔王内部がここまでまともな環境なんだ。
「こっち! 相変わらず敵は多いから気をつけて……!」
小さな奇妙な生物たちが私達を食らおうと襲いかかってくる。
魔王内の微生物……かな。
微生物たちといっても小型の獣以上のサイズでそれ以上にずっと強い。
「余計な体力を、こんなところで、使いたくないんだけどな!」
インカが前に躍り出て一瞬身震いしたかと思うと全身から槍を出した!
それなのに槍が的確に微生物たちを打ち貫く!
大して強くはないようだけれどインカのあの技強いな……
すぐに引っ込めてさらに槍を刺し伸ばし連続で攻めていく。
「くっ、多いな……こんな奴らに手間取っている場合じゃないのに!」
「傷ついたら治すよ! 万全な状態で進みたいから!」
「頼む」
ダカシが2体ほど斬り捨てたそのスキに3体から鋭い針のようにした身体の1部を飛ばされダカシの頬や腕に僅かな傷がつく。
魔王前に無駄な生命力低下は避けたい。
ちゃんと"ヒーリング"を……と。
とにかくインカが確保していく道にそってなんとか進まねば!
『た、大変です!』
『ドラーグ、今度は一体?』
『魔王が……魔王が高く飛ぶたびに世界がどんどん地獄に侵食されています! みてください!』
ドラーグからの念話。
"以心伝心"使用のためそのまま視界を借りる。
……これは!?




