千三十生目 突破
こんな魔王とやりあう危険な戦地に乱入者!?
しかもグルシムの力を借りず空を飛んでいる。
一体誰だ……?
背の上。
3つ頭付近にいるのはまずはグルシム。
全体の動きをみつつ2頭の喧嘩に割り込み攻撃を誘って避け互いに食らわせていた。
そして……
両腕を巨大化させ思い切って頭上から叩き込むその姿。
「ドラーグ様に、僕の戦いを認めてもらうんだ……!」
ダルウク!?
ダルウクは螺旋軍の切り札だ。
当然今螺旋軍は撤退してて……あれぇ!?
「ど、どうしてここに!?」
「どうしてもなにも、僕はドラーグ様を選んだ、それだけの事です!」
「いや、ええ……?」
なんだか凄まじい軍務違反を犯している気がするが……
今はとにかく魔王へ集中せねば。
助けはありがたいしね。
「ハッ! ヤッー! 思ったよりも魔王というものは、通りが悪いですね……!」
だがさすがに自慢の身体変形による攻撃も魔王相手では敵が大きすぎてうまく通らない。
左頭を殴っているがうざったそうに軽く払われるだけでダルウクは大きく引かざるをえなくなる。
そこに不意打ちで右頭が頭突きを食らわしていた。
「ジ・アース……カエル……!」
「勇者、タオス!」
まだ2つの頭が争っている。
真ん中の頭は我関せずで上を見たままなため飛ぼうとしているのを邪魔するにはこの2つの頭を殴り合わせてひるませたほうが良さそう。
ただこのままではダルウクの戦力が大したことにならないのも事実……
……うん?
「やあっ!」
力強く暖かな光がどこからか伸びてきて私達を包む。
これは勇者の力……つまり!
「グレンくん!」
「あ、あれ? 螺旋軍……? ちょうど良かったみたいだね! 魔王を止めに来たよ!」
「へぇ……これが勇者の……別の神の力じゃないから、問題ないよね!」
グレンくんが下から飛んできた。
ダルウクはその力を受けとり……
改めて両腕の巨大化!
勇者の力をまといながら思いっきり魔王の横っ面を殴っていく!
先程まで見るからに拳が弾かれていたのが……
ほんの少しながら拳が魔王の右頭顔に沈んだ!
「通った……! さあ、こっちですよ!」
「勇者ノ力……! 勇者、倒ス!!」
明らかに右頭は強い反応を示す。
ダルウクを敵として見て頭を伸ばす……が。
ダルウクは深く追撃せずすぐその場から離れる。
「さあ、魔王! ドラーグ様のアンデッドキルへの負担にならないよう速やかに朽ちてください!」
「勇者ァァ!!」
「ジ・アース!!」
「グッ!?」
右頭は大きく首を伸ばしてダルウクを追いかける。
しかしその首に噛み付くもの。
左頭だ。
少しの間違いに拮抗しあったが最終的に右頭は左頭を振りほどく。
だか明らかに牙跡が見られる。
翼も開いて羽ばたこうとしていたのにまたとじかけている。
牙跡はすぐに埋まるものの痛みは確かにありそうでまた右頭と左頭が睨みあいをする。
真ん中頭は……何をしているんだ?
『こちら左横腹、弱点を破壊』
「グゥ……!」
『弱点のひとつを潰しました。他の手伝いをしてきます』
「ガハァ……!?」
続いて魔王はその姿勢を大きく崩す。
あれほど巨大な肉体が徐々に大きく倒れ込んでゆく。
身体外側にある網に巻き込まれないようにちゃんと私達も移動せねば。
魔王が明確に苦しんでいる……!
「「ウオ、ウゴゴォ……!!」」
大暴れしていた身体がその場で崩れ落ちるほどの衝撃。
今念話が入ったインカやゴウの弱点破壊が原因だろう。
これほど身体を崩してしまえばあとは……!
「うわあ、あっぶない……!」
「少しはドラーグ様の役に立てたかな……?」
「太陽だな! 輝きの上を行くわれらは!」
「すごい……これなら!」
はっきりいって少なくない犠牲を出した戦い。
私だけではない全員の想いが……
ここに実る!
『弱点破壊してやったぜ! 俺の拳の方が上だったみたいだな!』
『主、弱点の方破壊完了しました。いつでも次へ行けます』
『弱点砕いてやったぜ! しばらくは悪さできないだろう、この間に一気呵成するぞ!』
『光の剣でぶったぎってやったよ! コレでどうさ!』
全ての弱点が次々破壊され体制を立て直そうとするたびに地面へ転がる。
ついには地面へ付した!
これなら!
「グレンくん! 魔王内部へ突入しよう!」
「うん! 突撃メンバーを揃えて、今度こそこの戦いに終止符を……!」
グレンくんが飛行してくるので合流。
兵士たちは最後の大暴れで正直全員撤退判断がくだされるラインまで削られてもおかしくなかった。
死者も出ただろうか……ホルヴィロスに治療を任せるしかない。
最終的な突撃メンバーを比較的まだ戦えそうなメンバーで選ぼう。
薬はあるとは言えあまり疲労している面々から選んでも仕方ない。




