千二十七生目 犠牲
残り1つ片翼のみといったところで2連続で魔法を放ってきた。
範囲は翼を巻き込む広域。
どうせ自分で自分へのダメージは入らないだろうから期待せず逃げるしかない。
兵たちも全力で逃げインカとハックは私と共になんとかエリアから抜ける。
武器はまだ振りかぶり段階。
兵士たち逃げ切れるか!?
「うおおおわあ!?」
「死ぬー!」
「次食らったら退却だー!」
兵たちも各々叫びつつ全力飛行。
結局は自分が被害食らうからね。
さらに彼らは戦いのプロ。
問題なくとはいかなかったが遅れた兵を他の兵が無理やり引っ張り込みつつ既の所で抜ける!
彼らや私の直ぐ側で極光が視界の全てを染めた!
「うぐぅっ!?」
「慣れねえな……!」
「音もすごい……!」
極光が消えれば次は決まっている。
凄まじい勢いで空気がその場に流れ込む!
いい加減世界の空気がなくなるんじゃないかと不安になる!
「「うおわぁ〜!」」
「つ、掴まって!」
風に煽られれば当然ギリギリだった兵たちは吹き飛ばされる。
方向は確実に極光が出た方向だからそれは読みやすい。
"千の茨"!
「あぁっ!? 武器の色が!?」
「マズイ! もう一度ビームが来るぞ!!」
ここで武器に神力が戻った!?
"千の茨"で網を作り飛んでくる兵たちにつか回らせているが……
このままじゃあ全部極太ビームで薙ぎ払われる!
「「ウワアアァ!! ……あ、ああ……?」」
「風が止むよりビームのほうが早いっ!」
「なんとかなって!!」
こうなったら少し賭けだ!
何十何百も移動させる余裕は普通の魔法じゃ時間がなさすぎる……が。
イチかバチかなら……できる!
大きく槍が薙ぎ払われ……
あまりに巨大なビームが当たりを焼き尽くす!
「「ワアアァッ!?」」
「今だッ!」
空魔法"インターラプトル"発動待機!
迫りくる光線が私のイバラを焼こうとした瞬間。
自動発動!
私達はどこかの安全圏にワープさせられる。
魔法がうまくいったなら……
「な、なんだ!? ビームは!?」
「どこだ……?」
「ええと……魔王の背中の一部に引っかかってるのかここは!?」
良かった。
兵士たちもくっついていた者たちは共にワープさせられたらしい。
場所は指定できないので思いっきり戦った場所から遠のいた背中側に来てしまったようだが。
空に多数の光線が飛び交っていく。
私達のところはともかくこれで何人も倒されただろうなあ………
『妹! どこだ!?』
『大丈夫! 兵士たちと一緒に安全なところまで来てる! すぐ戻るよ!』
『良かった……ああ、それまでこっちも立て直す!』
ハックから急ぎの連絡もあったが向こうも無事らしい。
"千のイバラ"をしまい向こうへ急いで戻ろう。
その後戻って私はまた各地をめぐる。
弱点での戦いはみな同じ様にひどい目にあっていたらしい。
私の補助にハックの補助が重なっているのを消耗して何百何千人で済まない数が地面まで落ちかけていたとか。
ニンゲンは本部送り魔物は自動でアノニマルース送りになり残った兵力で次々押し込む。
全力で残った片翼に向けて白刃をきらめかせ突撃し敵の武器を恐れ全力撤退。
そして……
「そろそろ……終われー!」
ドラーグが尾の方にある残りひとつの片翼に向かって砲撃を放つ。
キレイに撤退中の兵士を避け……
ダカシとたぬ吉をすり抜け……
敵の細剣にも被らずに……
大きな衝撃音と共に翼に着弾。
大爆発をかました!
「どうだ!?」
「翼は……」
「み、みろ!」
兵士たちからどよめきの声が上がる。
残っていた片翼の色は少しずつ黒く変わり……
やがてボロボロになって砕け落ちた!
「や……」
「「やったぞー!!」」
「「オオォーーーー!!」」
兵やドラーグたちから歓喜の声があがる。
武器がついには虚空へと消え去りついに戦闘能力を失ったことを示す。
……ただ。
「まだだ!」
ダカシは油断せずそのまま翼が守っていた地点の尾一部へと降り立つ。
そうだ。
今のは文献外にあった弱点を守る翼を倒しただけにすぎない。
多少はすでに弱まっているだろうが……まだここからが肝心。
各地から聞こえていた歓喜の声はおさまって行き代わりにみな自分たちのやることを思い出す。
ここまでが長かった。
だがやっと魔王に弱点を露出させただけにすぎない。
私もゼロエネミーと共にダカシの隣に降り立つ。
なるほど……ここだけ魔力の感覚が違う。
なんというかニンゲンで言うツボに似ている。
「ここを全員で叩くぞ。ただし……大暴れには気を付けろ」
「「ウオォォー!」」
ここが決め時!
相手の動きを止めてグレンくんと共に乗り込む!




