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九十八生目 変態

 おはよーごさいます!

 起きたら九尾のところのベッドの上だった。

 身体は何となく疲れているけれど、リフレッシュした気分もある。


 なんだが良い汗でも流したのかな自分。

 そして今回は書き置きメモもないしアヅキが座って眠りこけている。

 これは成功か……?


「お! 起きたか!」

「起きたよー」


 あれ、イタ吉もいたのか。

 今の声でアヅキも起きた。

 なんだか堪えきれないという感じだ。


「主! お喜びください! 成功です!」

「……おおー!」


 実感がないけど感慨深い。

 ついに、ついになのか。


 騒ぎを聞きつけてユウレンと九尾(キツネの姿)もやってきた。


「起きたのね。ローズ、ねえやっぱりこの博士スキルを使って私達の事を調べていたみたいなのよね。どうりであの場所で秘密を打ち明けるわけよ」

「そりゃあ関係者じゃないかぐらい裏で調べるわい。そのぐらいのチェックはせんとな」


 どうやらニンゲン同士でも話し合いがあった様子。

 まあ、何か確証があって信頼してくれたのかなとは思ったよ。

 ユウレンは『こんなメンバーで国の関係者なんているわけない』と疑われた事に軽く腹を立てている様子だがまあ大丈夫だろう。


「さて本題じゃな。ここに取り出したるは『トランスなんなのわかるくん10号』! 早速調べてみるかの」


 私に対してさっそく使うとトランス先が早速2つ表示される。

 片方はガウハリ。

 オスで誰かを従えていればなれる。


「ふむ、当然もう片方は新種じゃから名前がないの。姿もわからん。そこはともかくじゃ、トランス条件は誰かを従えていてレベルが25以上じゃな」

「おお、主なら余裕で達成していますね!」

「ええと、それじゃあトランスするには……」


 どうすれば良いのだろう。

 とりあえずログでも見てみるかな。


「そういえば検査してわかったことじゃが、損耗具合が悪いせいであらゆる力量(レベル)が頭打ちになっているようじゃの。

 心当たりがあるかの?」

「あー……そう言えば」


 今の私のスキルは……

 "串刺し""防御""回避"が6なのだが、ココから上がらない。

 さらに言えば最近全体的に停滞気味だ。

 これ身体の限界だったのか。


 ログを見ると精神世界での戦いでもきっかり経験値が入っているらしい。

 ただレベルは微動だにしていない。

 あれだけたくさん戦ってたくさん記録されているのに。


 いわゆるカウントストップ状態か。

 現状の私としての成長限界。

 成長限界までまだ子どものころに来たらそりゃあガタが来るよね。


 それらを伝えたり適当に話したりしつつログの最後まで目を通すと……あった。


[トランス条件を達成 トランスするには強く思うこと]


 ご丁寧にちゃんと書かれている。

 なるほどなるほど。


「よし、やってみ……!?」


 よう……? んあ、あれ、おかしい。

 声が出ない。

 これは、まずい。


「ど、どうなされました!?」

「まずいわね……安定期を抜けて低調になったのね。この時の薬は……」

「むら……さき……!」


 絞り出すように声をあげてユウレンに紫色の薬を取り出してもらう。

 息が苦しい! 目を開くのも億劫で片目だけ力をこめて開く。

 これだけは液体で口の中で容器に牙をたててドロリとした液体を飲み込む。

 これは緊急薬であり劇薬だ。


 空容器を吐き出して横になりながら長い舌をだらりと垂らす。

 うー熱いし寒い。

 熱感覚が狂ってる。

 全身がチギれそうだ。


 だが紫色の薬が効き始めたのかすっと気分がよくなる。

 この速度で効くのがふつうなわけがない。

 魔法薬のとびっきりキツイやつだ。


「ふう……だいぶマシになった」

「主……大事をとって明日にしましょうか?」

「そうね、トランスも楽じゃないし、今回は人造。どうなるかわからないものね」


 気を利かせて明日にしてくれるらしい。

 確かに今は私が薬の影響でまともな判断が出来るか自信がない。

 それに発作を抑えているだけで疲れているし眠い……


「わかった、眠いし先に寝かせてもらうよ……おやすみ」

「おやすみなさい」


 そう言って私はすぐに意識を手放した。





『おい! 今回はヤバイよ私!』


 こんにちは精神界です。

 っていきなり大ピンチ!


 うんわかってるよ!

 でもここはなんとか耐えないと肉体が危ないんだよ!


『もう! とりあえず目の前の敵の億の軍勢を薙ぎ払うぞ!』


 絶対負けない!

 うおおおおおお!!

 私達の戦いはこれからだ!





 おはよーございます。

 なんとかなった……いやあ大魔王が出てきた時は大変でしたね。

 気持ちが休まる時がない。


 そして今は早朝かな?

 みんな起きていたから朝食を食べてから早速やることにした。


「良いなあトランス、オイラもしてみたいなー! 強くなるんだろ? また離されるよー」

「どのような姿になっても主にお仕えします!」

「うふふ、昔トランスした時を思い出すわね……」


 場所は外。

 かなり大きくなる可能性もあるからだ。

 九尾のおじいさんは家の中で『何かあった時』のために備えるとか。


 うーん必要に迫られてトランスすることになるけれど、今の私の姿から大きく変わるのか。

 凄くどうなるか気になるなあ。

 期待半分不安半分。


 アヅキのトランス前であるアシガラスは小さいし腕がやたら長くアンバランス。

 それが今や2mほどの巨体を持つ人型。

 私はどうなるのかな。


 そして昨日のような発作とも今日でおさらばと考えると既に清々しい気分になれる。

 病気の時に初めて健康を思い知ると言うがまさにそれだ。

 エネルギーの満ち満ちた身体の時はそれに気づけ無い。


 健康のありがたさを噛み締めつつ今日私はやっと闘病生活を終える。

 さあ、始めよう!


「よし、やろう! トランス!」


 強く念じると身体の底から力がわいてくる。

 光が溢れて私を包んだ。

 きらめきが溢れそして……


 全身が境目もなくなるようになり底抜けの快楽が襲う。

 いけない、身体と一緒に、頭も変化、意識が……


キモチイイ

キモチイイ

キモチイイ

アアアアア

クルクルウ





·視点変更


 光が収まった。

 それと同時に九尾は危機を感じ取る。


「いかん!」


 庭の3匹が驚いている中動き出したのは九尾だけだった。

 その変化したものを一言で表すなら化物。


 長い後ろ足が生え宙に浮いた4本の脚。

 背には翼が生え所々に剥がれ落ちそうな甲殻が見える。

 棘のついた薔薇のツタがあまりに太く触手のようにうごめき暴れまわる。

 見上げるほどのそれら全てが酷く黄黒く血に濡れていた。


 そして正気とは思えない眼は獣のように獲物をみつけ目の前の3体に向けて口から唾液を溢れ出させる。

 ツタが俊敏に動き……


 パアン! という破裂音と共に全体に水のようなものがかかる。

 九尾が慌てて用意しておいたものを投げつけたのだ。

 中身は特別な液薬。

 実験時に得たデータから作り出した鎮静剤。


 化物は動きを止め苦しみだしてから黒い光に包まれた。

 そしてズゾゾ……と不気味な肉が縮む奇妙な音と共に遥かに縮んでゆく。

 そして光が収まるとそこには元に戻ったようで少し違う、小さな獣が座っていた。


「え、今のは……?」

「主、終わった……のですか?」

「あれ、針が無くなってる?」


 イタ吉が指摘したとおりあれほど特徴的だったホエハリ族の背の針はなくなっていた。

 さらに気持ち小柄になっている。

 横腹には黄色く薔薇のツタのような模様。

 それは進化時のミリハリと同じ模様だった。


 閉じていた両眼が開く。

 意識を取り戻した証拠でその目はしっかりと理性を感じさせた。


「ふわわぁ、あれ、どこだろう、ここ? わたし、ねてたのに」


 だが、それはまるで別人のような幼い声でつぶやいた。

 全員に衝撃が走った。

 一体だれなのだと。


「ねえねぇ、どーぶつさんとおばちゃん、みんなでなにしてるの? たのしいこと? まぜてまぜてー」

「え、あ、主?」

「一体どうしたんだ!?」

「なにこれ……? どうすればいいの?」


 屋敷の窓から見ていた九尾からしても異常事態だった。

 こんな症例は想定外だ。

 跳んで跳ねて軽やかに舞う。

 ただの仔どものように。


 だから見守るしかなかったのだが……


 獣の額の部分が縦に薄く切れて開いた。

 横開きだがまぶただ。

 そして第三の目が覗く。

 さらなる異常事態に全員身構える。


「ん……あれ、もしかしてトランス終わった? おー身体が軽くなった!」


 しかし当のローズだけは『今』起きて気づき喜んでいた。

 その様子を見て全員複雑な感情から脱力しむしろローズが何があったか不安になって聞く事となった。

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