千二十五生目 連撃
"クラッシュガード"が剥げてしまった兵が大量に出ている。
今の斧は魔法があたらなかった相手を的確に斬ってきた。
風が収まりすぐに私は飛ぶ。
そして土魔法"クラッシュガード"を危険な範囲の相手からかける!
間に合え!
『お姉ちゃん! みんながピンチに――』
『まずいね、さっきまで調子良かったのに――』
『さっきのにうちの隊が巻き込まれちまって――』
まずい。
念話もどんどん悲鳴が上がってきている。
兵たちがそろってこれからという時に!
「うぐぐ……」
斧もまた振りかぶっているし魔法は時間がどうしてもかかりなんなら安全を取ろうとした瞬間に敵の極光魔法が飛んできてもおかしくない。
グレンくんやジャグナーが斧を引きつけるように動き耐えているが……
それもいつまで持つかはわからない。
相手の行動ひとつでこちらはここまで乱させられる……か。
のこり5枚の翼もあるのにそららを全て耐えきる必要があるのか。
予想よりもずっと大変そうだ。
『お待たせぇ! みんなに助けを配るよぉ!』
『よし!』
『範囲と数が多いからぁ……もっと、もっと大きくぅー……! もっと……!』
やった! ハックから念話だ!
ハックの加護が来れば一気に安心感が増す。
死ぬような攻撃を肩代わりしてくれるだけのためあくまで生き残れるだけだが……
生き残れれば回復しやすさが断然違う。
「こっちだー! うわっ!」
「よおっ! こいせ! グレン! いい調子だ!」
「本当!? ようし!」
ジャグナーはグレンくんもうまく扱っているようだ。
実際グレンくんは率先して危険な斧の目の前まで行きスレスレで避けるなどもして攻撃の誘導をしていてくれている。
じゃなかったらすでに何人かやられていたかもしれない……
『よーし! 発動ぅー!』
『ありがとう!』
ハックがついにスキルを発動した。
この全域全員に敵をのぞいて本当にかかるのかと思っていたが……
空から光の雨が降る。
遠く尾のほうまで光は降り注ぎ……
みんなの身体を暖かな光が包む!
「「オオオーッ!!」」
「すごくやる気がみなぎってくる……!」
「今なら魔王に勝てる気がする!」
「もう何も怖くないぞ!」
「この力も万全ではない! 死に急ぐなよ!」
「「はい!」」
ジャグナーが兵たちの浮かれ気分をしめる。
兵たちの場所に斧が縦に振り下ろされるところをみんなキレイに避けていく。
気力が戻るのは良いが無謀な突貫されたら困るしね。
実際私の補助は全然間に合っていない!
「土! 守り! それ! 数が多い!」
「相変わらず凄い速度で魔法を……」
「いや、早いんじゃなく、て! 4つの魔法を並行して! 進めているだけ!」
「そ、そう……なにを言っているのかまったくもってわからない……俺も勇者の力でそんなことできたらな……」
そういえば精霊は精霊への適性がないと見ることすらかなわないんだっけか。
私は3体の精霊で魔法を並行して唱えられるのだが……
グレンくんには見えないらしい。
あれから再度魔法はこない。
やはり翼が壊された時の特殊な動きと見てまちがいないだろう。
もちろん武器から離れすぎても来る。
……うん?
イタ吉たちの部隊が来る!
「ローズ! こっちも頼む! こんなんじゃあ戦えないぞ!」
「わかった! そうれ!」
「もっともっと、補助魔法がかかったやつから殴っていけ!」
「「ウオオオーッ!!」」
さっきの念話でちらっと聞いたイタ吉たちの部隊もかなり"土魔法クラッシュガード"が壊れたという話か。
見るに少数部隊とはいえ半数も"クラッシュガード"が剥がれている。
イタ吉たちは全体の助けと誘導による攻撃回避で危険な立ち位置だから確かにこれは困りそう。
こちらにも……土魔法"クラッシュガード"!
ハックのあの補助効果範囲は凄まじいなあ。
あんなことが出来るとは……聞いてはいたけれど驚いた。
私も負けてられないなあ。
「そうれ!」
「いよーし! やるぞお前らー!!」
「「オオーッ!!」」
イタ吉の隊はせわしなく飛び去っていく。
私も早く移動しないと……だな。
『こちら、かなりピンチっぽいね。守りが取れている』
『妹! そろそろ一旦戻れるか!?』
『アワワ、下の兵器が1つニンゲンごと吹き飛ばされました!』
私が全力で殴りに行くのはまだあとだ。
今は薬をがぶ飲みしつつひたすら補助を回す。
それが出来なきゃ1つの崩れで全てが負ける……!
戦いは続く。
魔王は変わらず2つの頭が対立し1つの頭はこちらに興味を持たず天を見上げる。
翼たちに兵器や兵士それに私達が攻撃し逃げて補助をかけ直し再突入を繰り返す。
どうにかして勝ちきらなくてはならないのだから。