千二十四生目 魔撃
斧の大翼……
魔王の左背翼にいるこの敵と戦っているのはジャグナーだ。
力強く獣爪を振るい指示を飛ばしている。
「3班! 2班の撤退遅れをカバー!」
「「ハッ!」」
「1班引ききったら無理をするな!」
ジャグナーはまるで戦場をきちんと全体把握しているかのように振る舞い兵たちも無事に斧の振り回しを避けている。
見ていると1つの狂いが1つの犠牲に繋がりそうだがそこもカバーが回る。
普段から指揮なれしているジャグナーならではか。
「おまたせ! 勇者の配達便だよ!」
「補助魔法の配達もあるよ!」
グレンくんが勇者の力で対魔王パワーを撒き私が補助魔法……特に土魔法"クラッシュガード"を撒く。
もはやいつもどおりの流れながら兵数も万ではすまない数になってきていて結構たいへん。
「助かる、それらがあるだけで多少の無理は効くからな!」
「危ないから無理はしないでね! おっと」
ジャグナーと言葉を交わしている間にも斧は迫る。
グルグル回りながら横薙ぎしようとしていたため高度を変えて距離をはなし……と。
「くっ、どれだけ硬いんだ」
「諦めるな、まだまだこれからだ!」
「あの翼で寝たら気持ちよさそう」
翼は現在でブンブン斧は振られるがたまにくる下からの援護砲撃や爆撃もある。
攻撃が刺さるのなら絶対はない。
鞭剣ゼロエネミーにも頑張って斬らせる。
「誘導して……ちいっ!」
「ジャグナー、一体何を?」
「この斧に翼を斬らせたら早いんじゃないと誘導してみたは良いんだが、何度やっても当たりゃしない。見た目は食い込んでも、すり抜けやがるんだ。おかしいだろ!?」
「あー、気持ちはかなりわかるな……ボス敵の倒し方だ……」
グレンくん前世と今を若干知識で混ざっているのはともかくとして。
ジャグナーの視点はなかなか良かったように思える。
ただ自傷対策はされていたというだけで。
「それは全員に通達しておいたほうが良いかも。試すには危険なことだし」
「なる程……念話しておくか」
ジャグナーは念話をしつつ大翼から離れ斧から逃れる。
斧は見事大翼を切り裂いたようにみえるが……
当たった感触はまるでなく違いに雲でも当たったかのよう。
「ジャグナー、そういえば飛ぶのは出来るんだね。普段あんなに魔法は怖がっているのに……」
「あ、ああ? グルシムという神に貸してもらっているこの翼か。これはな、俺が俺の力で飛んでいる感じがあるから良いんだ。誰かに飛び方が制限されると、怖いだろ……?」
「うーん、まあそういうものかな……」
私はどっちも飛ぶものだからな……って気分が抜けない。
それはともかく。
「良し、ここは抑えておく! 新しい兵たちにも力をわけてやってくれ!」
「うん、わかっ……うん!?」
「翼が!?」
「なんだ!?」「変化が……」「効いていたのか!?」
全ての弱点は巡ったのでインカのところへ行きつつ兵器運用兵にも力を……といったところで。
ついに敵の翼に変化が現れた。
具体的には全体的に震えたかと思うと翼が1つどんどんと黒ずみ……
燃え尽きるように消え去る。
「これは……」
『こちら、敵の翼1つ減少したぞ!』
『同じく、減ってますー!』
『こっちも翼が――』
インカそれにたぬ吉からも念話が。
次々と報告が相次ぎどうやら
これは……1つ削れたと見るべきか?
……うん!? 魔力が急激に高まっている!?
「『全員、翼から魔法が来るよ!』」
「なに!?」『む、通達する!』
「残った翼が……光りだしやがった!」
「全員現在位置から離れて!」『うおお!? また来るのか!?』
会話が混ざり合いあちこちで同時に同じことが起きているのだけはわかる。
急いで敵魔法発動準備地点から逃れる!
私の土魔法"Eスピア"みたいに事前に放たれる目安がつけられるからわかる。
離れたところでまた光が魔王の身体を起点に放たれ極光が空気ごと焼き尽くす。
当然また空気が消滅するので……
「みんな! 掴まって!」
「うおおっ!? これが話に聞いた爆風!?」
「もうやだー!」「斧も来るぞ!」「勝てるのかこれ?」
さすがに経験は2度目。
今度は初めから魔王にひっつき早めにイバラを伸ばす。
ジャグナーは自力で魔王身体に取り付き耐える。
間に合わなった兵も多くいてイバラに捕まったり土魔法"クラッシュガード"を消費して魔法を耐えた兵も。
だが容赦なく斧は振られる。
光を纏った横薙ぎは風に煽られた兵の一部を斬り裂く!
「「うわああぁ!?」」
「クソッ、かなりまずい!」
「兵士のみんなが!?」
「まずい、ハックの追加補助がまだ!」
ここにいる兵はジャグナー含め初期の組ではない。
能力も落ちることながらなによりハックの身代わり効果がない。
追加がまだきていないためだ。
まずい……!




