千二十一生目 短剣
左横腹にうなじそれから右腕付け根ときて右脚腿へとやってきていた。
ダブルナイフ相手にゴウは見事兵たちを守りきっている姿があった。
「ゴウ! みんな!」
「補助を! それに勇者の力も! 俺たちが来たから少しは楽になるはず!」
「助かります、みなが優秀なので今の所大きな被害は出ていませんが……」
ダブルナイフの合間を駆け抜け飛ぶ兵やゴウとともに動き回りながら弓や十を放つものたちも。
なんだか即席とは思えない洗礼された空気が漂っていた。
ここは脚のモモなため正直かなりの頻度で位置が変わる。
それでもくいついていけているのはゴウたちならではか。
「すごい……動きが完成されている」
「ただ、その分……想定外のことをされすぎると困るんですけれど、ね!」
またゴウが鋭く放った矢が次々翼に刺さる。
少しすると抜けるがまったく効いていないわけではない。
本当に地道に生命力を削るしか無いのだ。
「"クラッシュガード"も……! かけてと。それにしても明らかに他よりも早い武器相手に、よくもここまで……」
「何、実際は意外に遅いんですよ」
「いや、確かにそうだけど、人が振るよりは遅いけれど他の所よりもずっと早いって!」
「いえ……そうではなくて。あの短剣は技がいくつもあるのですが……」
巨人の短剣とも言える私達の身くらい楽に潰せるサイズの2つの刃。
特徴はその他の武器よりかは小さい所かとにかく早い。
風を斬り裂いて突っ込んでくる刃はかなり見ているだけで恐ろしい。
ゴウが次々と矢を放つのに合わせ私もゼロエネミーを瞬時に伸ばす槍にして刺すよう念じる。
魔法枠は補助へ。
「ほら、この右上からの袈裟斬りのあとは、そのまま刃を回すようにしてもう一度袈裟斬り、それに正面下側から斜めに左右別れ切り裂きそのまま上昇しつつ刃たちが回るように切り上がっていきます」
「えっ……?」
ゴウが説明している間にも短剣たちは振り込まれていく。
しかし説明どおりに。
右上から左下へ2つの刃が振り下ろされたと思ったらそのまま一回転するように上へ戻りまた同じことを。
そのまま翼の正面したから刃が∨字型に別れて切り裂かれ……
グルグルと登る竜巻のように刃たちが登っていった。
「やっぱり! ゴウさんの読みどおりだ!」
「一連の技か……これはわかれば楽だ!」
「相手の不意をつけるぞ!」
兵たちも喜びその攻撃のスキに各々の武器を叩き込んでいた。
すごい……
「敵の行動パターンを読んでいたんですか!?」
「まだ全ての動きが決まっているわけではありません! ちゃんとそこも意識して動いてください!」
「「はい!」」
「なるほど……動きによっては長い間安全圏ができる。だから他よりも遅いと……」
魔王渾身の連続攻撃も動きが読まれてしまえばかたなしだ。
あとは向こうがどれだけ引き出しがあるかとの勝負になる。
「みなさんのおかげで私は遠くから見えますから、ね! こちらはもう補助は一旦大丈夫ですので……」
「ええ、これだけのものを見せつけられたら安心します……さらに次に行ってきます」
「ゴウさんたちも気をつけて!」
私とグレン君は補助を撒きおわり再び戦いの場から離れる。
弱点のこり3箇所も攻撃がすでに行われている。
私がこうして飛び回る大きな理由……
それはみんな思ったよりも補助を多くの相手にかけるのが苦手だったからだ。
魔法を範囲化し同じ効果を数百数千名にかける……というのがなかなか難しいらしい。
特に"土魔法クラッシュガード"だなんて誰がかけても同じ効果だから……と思っていたのだが。
わりと対象数や効果時間がみんな少ない。
とはいえ個人差あるがなんとか各々少しずつかけなおしてもらっている。
でも他の魔法まで手が回らないうえ効果の低下ややはり範囲が少ないことから私がひたすら飛び回ることとなっているわけだ。
兵士数もかなり充実してきたし私の働きが重要になってくる。
さて……次の弱点位置は。
来たのは背中側腰。
立派な龍鱗じみた背甲が多数あってほとんどの攻撃などどう見ても弾くが……
ここの1つにもしっかり弱点として大翼3対6枚が鎮座していた。
「ここは……メイスか!」
メイスとは先端に重りをつけた杖のような武器だ。
長物で勢いをつけ硬質な重りを叩きつけるというのは槌ににたものでもある。
こちらはより振りやすくかわりにやや重みを抑えた感じの調整だが。
「アヅキ!」
「主ですか! ちょうど良いところに。今から敵を切り刻むところでしたので」
アヅキはトランスして再調整された手工を身構える。
そして光で出来た扇を構え……
メイスの縦振りに合わせ避けるように飛んで突っ込む!




