千二十生目 剣舞
攻撃を当て離れて避ける。
単純ながら1つ1つが命がけ。
少しズレれば死ぬ。
土魔法"クラッシュガード"とハックの身代わりはあくまで保険だ。
特にハックの身代わりはそんなに頻繁に撒けない。
困ったことに連続使用が出来ないタイプらしいのだ。
後からくる兵たちはそのバックアップがない空白時間が多く生まれる。
それだけ危険が増すから……
この戦いは常に緊張にまみれていた。
「ビームが、ビームがまた来るよ!」
「あの色が戻ったから、かな?」
「避けろー! 全力回避ー!」
「「回避ー!」」「ビームだー!」
槌が大きく振りかぶられ光が凄まじくたかぶっていいく。
前も見た……極太ビームが来る予兆だ!
コースはどう来る!? 動きから逆算して振りを計算すれば……
(……これはヤバイな!)
「みんな斜め左下から右上に来る! かなり広く危ない!」
「うわ!? どこだ、どこが安全圏だ!?」
「あの翼を中心に考えて! 自分の位置から高度を変えるんだ!」
みんな急ぎ背の翼をはためかせる。
横に広がった兵たちが一律に動いたら必ず当たる。
各々の判断こそが生死をわけた。
1度2度耐えられるとはいえ後がなくなる。
今後どれだけこれを繰り返して戦うかまだまだわからないから……
この程度もらうわけには行かない!
「うわっ」「カッ!」「クッ!」
光線が走り私の横を薙いでいく。
なんとか避けきれたらしい。
やってて良かった近接戦闘訓練。
「全員、無事です!」
「"クラッシュガード"がとれた相手はいるね……それっ、追加!」
「次まではチャンスタイムだ! ローズ、グレン! 他のところを頼んだ!」
「それっ! うん、わかった!」
「行こうグレンくん!」
兵たちがさらに背後から近づいてきている。
グレンくんが勇者の力を振るい再度効果をかけなおし。
私も切れそうな補助を再度かけつつグレンくんやゼロエネミーと共に戦地を離脱。
背後で魔王で作った槍が砕けていく……
そのまま素早く飛び続ける。
今度向かう先は近くのオウカがいるところだ。
他の弱点にも強力なメンバーが攻め入っているのが見える。
「は、速い……!」
「あ、ごめんグレンくん、少し飛ばしすぎた」
「いや、俺もなんとか追いつくよ! やあ!」
グレンくんはまだ飛行してそんなにたっていないんだった。
けれど意地で食いついて来てくれている。
道中通りがかった兵たちに補助魔法と勇者の力を振りまきつつ目的の場所へ。
そこは魔王の右腕付け根付近。
常に腕振りに悩ませられる激戦区域でもある。
だがそこには確かに剣持ちの翼とオウカたちがいた。
「ローズ! それにグレン! ちょうど良いときに来たね! 事前の話通りこっちのみんなは強兵揃いだ!」
「勇者の力、撒きます!」
「すごい……腕相手にオウカさんと共に立ち回っている……!」
腕の付け根なため完全な被害位置ではないものの腕が振られさらに大きな脱色した刃が振られているのにものともしない。
その立ち回りにオウカが大きく寄与しているのは間違いなかった。
「彼女、とんでもないですよ」
「我々は1度1度引かなきゃ立ち向かえないのに……ある程度したら、わかったって言ってああやって張り付いて戦ってるんです」
「我々も負けてられないじゃないですか……!」
「なるほど……すごい戦闘だ」
兵たちに土魔法"クラッシュガード"を付与しつつオウカの戦いを横目で見る。
腕の振りに合わせ落ちる様に身体をひねって身を落としながら剣を煌めかせる。
光の刃を斬り裂くたびに巨大化させるだなんて器用な戦い方は初めて見た。
体制を立て直すと間近に迫る剣の横薙ぎに合わせて飛び上がりさらに光の剣を炸裂させるよう合わせて巨大化。
光がかち合い反動で大きく上に飛ばされる。
その反動すら利用して翼を斬っていった。
「行けぇ!! 大業物の扱いはこちらのほうが長いんでねえ! その程度の技術、負けるはずもない!」
「我々も続くぞ!!」
「「ウオオオー!」」
「私達も、次のところに行こうか」
「うん、さすがオウカさんだ」
戦場の慣れ……年の功……
だが彼女も無敗の豪傑ではない。
新たに追加で来た兵たちにもちゃんとグレンくんと私で補助を撒きつつ次の場所へ向かった……
そのまま移動しつつ増え続ける兵たちに補助を撒き続ける。
左横腹にうなじそして右腕付け根……
ゴウは右後ろ足の腿にいた。
2つのナイフを振り回している相手。
正直どれもこれもかすったら死ぬような相手の攻撃をゴウは弓を放って遠隔で仕留めようとしていた。
オウカとは違いゴウは魔法が発動されないよう頻繁に位置を変えつつも撃ち込む。
「……そこ!」
そして前に出たり引っ込んだりする兵たちに合わせ的確に迫りくる大きすぎる短剣に重い一矢に爆発物をくくりつけわずかに軌道をそらし……
逃げ遅れた兵たちを見事に救っていた。