千十九生目 大地
オウカから送られてきた情報。
武器は翼から一定距離までしか離れられない。
これは私の剣ゼロエネミーにも似ている。
昔どこまで飛ばせるかを旧形態でためした事がある。
それはかなり遠くまで飛ばせたもののどんどんとリンク率が落ちて雑になり最後には勝手に帰ってきてしまった。
あれは魔法の問題だけだと思っていたが念じる今の形態でも似た問題はあるかもしれない。
それがそのまま魔王の出した翼の武器に似た弱点があるとは思っていなかったが。
「――というわけで、距離さえとればかなり安全にはなると思う」
「だったら、遠くから攻撃を続ければなんとかなるんじゃないか?」
「そ、そうだ!」「希望が見えた!」
「いや、言っちゃあ悪いが……」
ダンが兵たちの喜びに水をさす。
だけれどもその懸念は私も思っていた。
「……光線は来るし、おそらく武器を離したくないのはあの翼を守るためだ。俺たちの鉄砲が当たる程度の距離ならば、何か別の対策を……」
「……あ!」「っ!?」
「ん? どうし……おおっ!?」
私は"魔感"でグレンくんも何かですぐ察知。
ダンも翼が輝き出したことで反応した。
もちろん兵たちも嫌な予感が駆け巡り動揺の声があがる。
「遠距離は遠距離で、魔法が来るのか!」
「「近づいて!」」
「お、おう!」「危険なのでは……!」
「どこも安全なところはないのか!」
私とグレンくんが安全圏を示す。
それは敵の槌が待ち構えているところ。
みんな困惑はしつつも素早く背の翼をはためかせ移動する。
幸いこの飛ぶ力は各々の重さが多少左右されようとも一定以上の質を保ってくれるらしい。
ダンだろうがグレンくんだろうがビュンと飛び……
翼の輝きが最大になった。
「「ウッ!?」」
重い音と同時に恐ろしいほどの光。
それが魔王の身体から放射される。
極光はビームと言うよりもはや私達がいた場所を白に染め上げ……
空気ごとすべて滅した。
終わりは始まりの重い音とは逆にあまりに静かで……
そしてなくなった空気を埋めるため異常な風が起きる。
「うわっぷぷ! 流される!?」
「翼は影響が大きいんだ! みんなうまく敵のハンマーをかわして!」
「こ、これじゃあ踏ん張れないー……!」
「「うおおわあーっ!?」」
翼で飛ぶということを甘く見ていた。
私の"エアハリー"時よりもみんな空気に吸われる。
このままでは振りかぶっている槌に狙われる!
すぐにイバラを魔王自体とみんなへトゲなし"千の茨"で伸ばす。
地面……ではなく魔王だが適当にツタで掴む。
"千の茨"のおかげで細かく分けたり先だけわけて擬似的な手のひらをつくり掴まることなどもう楽々できる。
そしてみんなの方向に伸ばしたイバラたちは……
みんな何も言わずとも掴んでくれた!
魔王の方に伸ばしたイバラを縮め私たちを引き寄せる!
意外にパワーがあるため風が収まるまで十分耐えられる。
空気が消滅した場所が埋まればやっと収まった。
短い時間だが爆発的な収縮のせいでなんだか時間が長く感じる……
「無事かー!」
「全員いまーす!」
「よーし!! ならば行くぞー!」
イバラを戻して……と。
敵の槌はかなり色が溜まっている。
もうすぐビームを放たれるが……
それまでに1撃入れられる!
にしてもやはり魔王の身体……
大地として使えないか?
割と変な発想だと自覚はあるけれど……
これほど大きい存在は蒼竜みたいに扱えそうな気がするんだよなあ。
ということで土魔法"アーティトアン"!
魔王を土として連続で盛り上げ翼に当てる!
もちろん鞭剣ゼロエネミーも振り込み私自身も接近。
さあ……発動!
「あっ! いけた!」
魔力が通る感覚。
そして少し遅れて翼の下から魔王の身体が隆起し槍となって飛び出る!
そのまま槍の先からさらに槍が連続で飛び出し……
翼を穿つ!
「もっと!」
私達が辿り着く前にさらに"二重詠唱"の力で土槍たちを派生させて突き刺していく。
幸い翼は大きく6翼もあるのだから……
突き刺し放題だ!
「行ってすぐ戻れ!」
「「ウオオオーッ!!」」
槌は見えていて横に大きく振りかぶられている。
逆に言えば今は仕掛けられるチャンス。
"アーティトアン"をさらに発動して太い槍をさらに爆発的に増やす!
今度は刺さってるところを中心にガンガン槍を生やして翼を傷つけていく。
素材は魔王だから十分効くだろう。
まさか本当にできるとはね!
そのまま鞭剣ゼロエネミーによる強烈なしなりにより切り裂き各々の武器や私のイバラを全力で殴りつける。
そのまま素早く高度を上げ槌による横薙ぎを避けた!