千十三生目 飛行
私達少数突撃班はグルシムの前に集まっていた。
顕世回帰で半分鳥に戻ったからかかなりご機嫌。
まさに死者が生者に戻ったぐらいに。
「集まったな! 刃掲げる勇士たち! 翼舞う準備は、さあ! あの輝きを打ち破るのだ、輝かしい光を見せつけて!」
相変わらず何を言っているのかはわからないが自身は満々。
ただ今回は少しわかりやすかった。
意気高揚のために放った言葉だろう。
私の他にもいくらかの兵士たちがおりさらにはイタ吉やインカにハックそれと勇者グレンくんたちもいる。
オウカやゴウそれにダンでしっかりグレンくんを守る見積もりだ。
ダンダラ王子は今回指示出しの方へと回っている。
なにせ宝石剣を魔王に近づけたくないからね。
いざという時抑えられるのはダンダラのみだ。
ホルヴィロスやナブシウも私達の前にある壇上に上がる。
「ここの神、グルシムによると、一緒に魔王を倒そう! とのこと! 私は貴方達兵士を回復するけれど、死んだ程度なら治せるから、引きずっても5体揃えて持って帰ってきてね!」
ホルヴィロスは戦闘をしない皇帝を観るのは後回しにして兵たちのバックアップをしてくれる。
ホルヴィロスは私にウインクしてきた
なんだかテンションが私向けに近いと思ったら……
皇帝をみてもほしいけれど……
ホルヴィロスは『まだ生きているなら後でも大丈夫じゃないかな!』とのこと。
「う……お……ご……、わ、我が神……我が神の力……そう、錬金術で、お前らのなまくらを……こう、強くしているから……な」
「ナブシウ頑張ったね……ナブシウというこの神によれば、錬金術の応用で少しずつこの軍の兵装をアップグレードしていくそうだよ。貴方達の武器も間に合った物は多少アップグレードしているから、折れたら再度強化しにもどってきてね!」
ナブシウは切断の概念に詳しかった。
戦いの時はそれに苦しめられたが……
ナブシウが錬金術で武器たちの調整をすることで切断の概念がほんのり上乗せされる。
神の力がほんのり上乗りされるというだけで魔王へ斬りかかるには力不足ながらもかなりマシになる。
相手が避けられる巨体で無い以上相性が良いのだ。
ただしまだ全然間に合っていないのでナブシウが急いで各兵装への付与をこれからしていく。
本拠地と魔王付近には空魔法"ゲートポータル"を置いて行き来できるようにする予定だ。
結構遠いからね。
ナブシウはそれだけいうとそそくさと壇上から去っていった。
ここの少数突撃班は武器を優先して間に合ったものたちの精鋭部隊だ。
少数とは言え千人ほどいるからナブシウの錬金術速度は素晴らしく付与能力はあくまで過信するものではないのがわかる。
そしてグルシムが再び前に出る。
「我ら同胞として、さあ、さあ! 歌うのだ、美しい翼を輝かせ! 雛は飛び立つ時である、翼があるのだから!」
グルシムの能力。
それは……
「ここは我が地の舞台となる!」
グルシムから輝く光が発せられ雪のように広がり降ってくる。
輝きは兵士たちに降り注いでゆき……
「な、なんだ……?」
「お、おいそれ!」
「翼!? これが話にあった!?」
あらゆる兵たちに輝きは降り注ぎ兵の背中には光の翼が生える。
見た目は明らかに重量と翼比が足りていないが神にその理屈は通らない。
自在に動かせるらしく軽く羽ばたいている兵は楽に宙へ浮く。
飛行の概念付与だ。
私はこれを見たことがある。
崖の国にあった刻まれた絵たちだ。
やはり頼んでみて正解だった。
これでも元々の能力より分神である以上劣るらしいが何十万人に付与できるだけ十分。
1番の劣るところは……
「空を舞う心、落ち着きがいる! 広くないのだ、私の領域で無くてはな!」
「みんなー! 事前の話の通り、翼が消えかけたら範囲外に出ちゃっているということ! すぐに戻らないと落ちるからね!」
縦に広い範囲にグルシムの領域が展開されるのがこの能力だ。
私みたいに自前で飛べるタイプは翼が生えていないし自由だが……
背から翼が生えた兵たちはグルシムが指定する範囲外に出ると翼が消失する。
最終的に魔王周辺飛べるよう展開されるためキャンプ地までは飛んで帰れない。
かなり重要なことなので事前通達は行き届いているようだ。
グルシムに説明任せたら時間がかかりすぎるのでホルヴィロスが代弁しつつ。
「さあ共にゆこう! あの輝きの向こう側へ……!!」
グルシムが飛び立つと共にみんな一斉に空へと飛ぶ。
懸念していた不安はあまりないらしい。
飛行という概念は本当にフル装備のみんなが初めての飛行でも楽々とんでいけている!
(いちばん苦戦しているのはツバイだな)
(ずっと飛んでるのにねえ)
うぐ……おかしい……もっとみんな飛ぶのに苦労を……
していないな……
はぁー……だいぶ治ったと思うんだけどなあ。




