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千十二生目 月餅

「出撃!」

「「オオー!!」」


 数十万の兵たちがあちこちで声を上げる。

 後方支援している兵たちは物資を運び兵器を運びと大忙ししている。

 私も姿はネオハリーに"進化"している。


 空からみたら壮観の景色だろうがあいにく今はテント内。

 蒼竜に会いに来ていた。


「ふむふむ……モグモグ……結構使ったって聞いた割に、まだ残ってないかい? モグモグ……」

「いや、3分の1は少ないよ……というかあれ、おかしいな、もっと使っていたような……」


 この端がなぜかボロボロに見えるマントの脱色具合で私の神力残量が分かる。

 蒼竜の使いにあたるらしいので蒼竜から神の力を受け取る必要があるのだ。

 ただ……おかしいな。前のときほとんど脱色するまで使い切っていたはず。


 今見たら3分の1程度着色している。

 コレって時間経過で治ったっけ?


「ムグムグ……まあ、とりあえず送るか、そーれかみのちからー」

「なんでも良いんだけれど、なんで食べながら話しているの……?」


 そして肝心の蒼竜は月餅(げっぺい)を食べていた。

 丸く平たいお菓子で中に餡とモチなどが詰まっているはずだ。

 クルミのにおいもする……


 蒼竜はそれをモチモチ食べながら私の方に手をかざす。

 不可思議な力が流れ込み……

 脱色していたマントが元の色へと戻っていく。


「うん、これうまいよ。やっぱニンゲンたちはおんなじ種類に見えても変わったものをたくさん作るね……カムカム……あ、あげないからね?」

「今から戦闘だしいらないよ……」

「そう? おいしいから後で食べるといいよングング」


 蒼竜は本当に食事に関してミーハーというか……

 とにかく回復までひたすら蒼竜の食事風景を眺めることになる。

 まあ"鷹目""見透す眼""千里眼"で他所の風景を見ているが。


 対人ではなく対城壁や対巨竜用兵器が次々運び込まれていく。

 当たり前だが単なる兵たちの豆鉄砲一斉斉射や剣戟では魔王に傷すらつかない。

 魔道士たちの攻撃も複数人が魔力のこもった石を砕きつつ唱える軍事魔法を中心。


 簡易戦術塔も建て直され軍隊の能力は底上げされていく。

 それでも大した驚異を敵に与える事などできない。

 過去の時代と違ってニンゲンたちが非常に優れた兵装を準備していてもだ。


 私達の強力でどこからでもこの国内ぐらいなら魔法や物理的な魔物による運搬で新しい兵器を引っ張ってこられる。

 もちろんミサイルとかレーザーとかはないんだけれど……

 それでもあまりに巨大過ぎる質量を持つ(もり)を見た時はびっくりした。


 あれを発射して勢いで射し込むのだろうか……

 今回攻城にいらないああいう兵器もあとからもってこれたのはよかった。

 さて……しばらく待ったがそろそろかな。


「ゴクン……おっ、これでいい感じかな?」

「うん、溜まったみたい。それにしてもそんなに力あるのに、やっぱり直接的な支援や戦闘は……」

「しないって。なんというか、もともと僕はファイターじゃないんだよ! なんで様々な命を愛している僕が、戦いが出来ると思うんだい。支援に関しても、君が思っているより僕が出来ることは狭いのさ」


 うーむ。菓子を片手にこうも開き直られるとなんとも言えない。

 何いってんだこいつとは思う。

 ただ実際蒼竜本体を戦わせる案はなしだ。

 すでに山として長い眠りについている蒼竜本体を動かしても完全に目覚めている魔王の攻撃で地形ごと吹き飛ぶ気しかしない。


 かといって支援も……おそらく話したとおりなんだろう。

 蒼竜はなんやかんや言ってかなり忙しそうにしている時が多い。

 見ている時以外所在不明と言えるほどあちらこちらに飛び回っている。


 やはり神様の世界も解決待ちの事案でいっぱいなのだろうか。

 うわあ……それはいやだな。

 前聞いた蒼竜教の考えにあるひとつ『蒼竜様は様々な形で使いをよこしてくださり助けてくださる』というのは実際直接や間接的に蒼竜が関わっていることも多いのだろう。


 蒼竜の立ち回りはそういった武力ではないところに生きている。

 ニンゲン兵たちのほとんど……具体的に言うと螺旋軍以外は蒼竜教だ。

 彼等の芯にはそこによる信仰とそれを通じた連携がある。


 こう見えて彼は今回の戦い基盤は蒼竜だ。


「まあ……帝国でどれだけ文化とニンゲンたちに蒼竜が染み付いているかわかるよ。じゃ、行ってくるからあとはよろしく」

「はいはい、飛び火対策ね……食べた分は働くとも」


 蒼竜は帽子を被り直して笑顔を見せる。

 直接的な殴り合いを避けられるのならばこのぐらい……と言ったところか。

 蒼竜は対岸の火事を大喜びで見に行くタイプ。






 本番開始前。

 今魔王はおとなしいけれど攻撃を加えだしたら間違いなく潰しに来るだろう圧も未だ感じる。

 私達少数強襲班はグルシムの前へと集まっていた。

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