表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/2401

九十六生目 夢双

『やあ、また来たね!』


 あ、"私"だ。

 進化した姿の"私"がこの精神の世界で出迎えてくれた。

 今はキレイで血の跡がない。


 それでこの感じ、私も何かしなくちゃダメなの?


『そう、ただ寝ているだけじゃない。

私を襲う精神界の敵をしばいてもらうよ』


 あー、やっぱりそうなのか。

 でもこの世界、私はどうやって戦えば良いのかイマイチわかっていない。

 スキルとか魔法とか使えないみたいなのよね。


『そりゃあそうだ、あれは現実世界のものだし。ここは……そうだなあ、本来は全て私のものなんだよ』


 私の?

 ……あー、そういうことね。


『そう、言ってしまえばここの支配者、だいたい思うがまま。

 だけれど今は弱りきっていて支配力が薄まっている。

 だから改めて戦い方を覚えてもらわないと』


 だから私はこの世界で"私"にひたすら戦い方を教えてもらった。

 はっきり言えばこの世界はなんでもありだ。

 なんでもありだから、なんでもありを返される。


 強敵に挑むつもりでいけば相手は無限に強くなる。

 気持ちで勝てなければ距離すら関係なくやられる。

 距離という概念を私が無理やり持ち出すことで前は攻撃を避けれていたのだ。


 意識して概念を持ってきたりはずすことで自由に動ける。

 空だって飛べるし大火力で焼き尽くすことも出来る。

 攻撃をすり抜けて一方的に打ち込むことも可能だ。


 だからこそ、ちゃんと理解しないと危険。

 一方的にそれらをやられるから。

 時間概念すら曖昧なここでは私と"私"が協力して1分がどこまでも長くなるようにして延々と修行した。


 そして1分経過後。


『見違えるように強くなったね! もはやこの世界では敵無しだよ!』


 いやまあ見ためは変わってないんだけどね。

 ただ理不尽を押し付けられるようになっだけだ。

 しかし競り勝てるかどうかは私と敵の妄想妄信の強さにもよる。


 神経を酷使するほど強く思わなくちゃ神経を守れないという矛盾。

 『癒やす』という思いもあるから併用するけど。

 ……ん、この感じは。


『時間概念を戻したらさっそくやってきたね』


 黒い塊が次々とどこからともなくやってくる。

 そしてそれらが形をなすのは……

 かつて戦った相手たちだ。


 様々な魔物の姿をしている。

 鹿に兎や雄鶏と烏で鼬に狸が氷魔。

 それらがごちゃごちゃと群れをなしていて……何万といるのかな。


 うん。


『敵じゃないな』


 私と"私"が前足を軽くひと振りするとそれらが激しく砕け散って吹き飛ぶ。

 このぐらいは出来るようになった。

 ふ、強くなりすぎたか……


 なんて遊んでいる場合ではなかった。

 視界を埋め尽くすほどの見渡す限りの敵たち。


 あらゆる魔物の姿をしている。

 未知のもたくさんいるが私の中の想像が生み出したのだろうか。

 自分というものの負の部分が延々と蝕んでくる恐怖。


 私が戦っているのは、結局これなんだろう。

 さあ、行こう!


『血をまき散らせ!』





 私は今魚と戦っている。

 あまりに大きく自由に襲ってくる泡魚。

 陸をつくってもすぐに川に変えられてしまう。

 こっちは陸じゃないと戦えないが向こうは川でなければ全力が出せない。


 妄想は一切の根拠なしの行動では根拠が弱くて相手に跳ね返されてしまう。

 だから足場というのは存外大事だし、攻撃するという素振りは大事だ。

 泡がマシンガンのように飛来し私が口からの光線で薙ぎ払っているのを現実的とは言い難いからこそ強く信じる土台がいる。


 不可視の攻撃が飛び交い被弾した箇所は時間が巻きまどるように治る。

 もはや物理法則だなんて通用しない異次元の戦い。


『そおら!』


 "私"が放つ爪ビームが魚を三枚おろしにする。

 しかし次の瞬間には戻ってしまった。

 お返しに撃ち込まれた水の泡で"私"が砕ける。


『ええい、なかなか倒れないな!』


 しかし次の瞬間には頭を中心に体が生えそろった。

 頭は大事だ。

 自己を認識する部分だから想像をするという行為に説得力をもたせやすい。

 うん? 頭……そうか!


『何をする気なん?』


 こうさ!

 どこからともなくアヅキやイタ吉たちが出てくる。

 ユウレンがさらに骸骨たちを呼び出す。

 これらはもちろん私の想像。


 だけれど全てをつなげるという想像はこの世界では最大の武器!

 空に高く飛んでくるりと地面へ頭を向ける。

 背後に巨大な魔法陣。

 そこに足をつけて反動に耐える!


 目の前に作り出すのは巨大な隕石。

 滅びの一撃!

 いけぇ!!


 亜音速で打ち出される隕石は魚が反応する前に光ほどの速度へ加速してぶつかる。

 そのサイズ差はまるでアリを踏むクジラ。

 プチッと言う音すらせず川ごと、いや辺り一帯全てを吹き飛ばして……





「クニャ?」


 目が覚めて変な声が出た。

 どうやら2時間ほどたったらしい。

 私は種族的に2時間から3時間ほどで一度起きてしまう。


 仕方ない。

 また眠りにつくまでゆっくりしていよう……


 こうして私は眠るたびに壮絶な戦いを繰り広げることとなった。





 日が変わるたびにアヅキやユウレンが来てくれた。

 アヅキは見るたびにやつれている気がするが。


「大丈夫? 本当に休んでいる?」

「もちろん言いつけは守っているのですが……気が、休まらないのです……」

「あ、ああそうなの。絶対治るから、ね、ちゃんとご飯食べてね」


 久しぶりに"ヒーリング"に"無敵"を上乗せして回復を施した。

 うーん肉体よりも精神的な負荷が大きく感じる。

 根本的な解決にはならないなあ。


「うう……私が情けないばかり……やはり主の力は偉大で、私に万の力をくださいます……!」


 感動し震えないているようだ。

 相変わらずこれになんでそこまで喜んでもらえるかはわからない。

 けれどこれで少しでも助けになるのなら良いなあ。


「私と戦ったあの時の傷も、結果的に主を苦しめていた……必ずや、挽回してみせます」

「……ありがとう、アヅキ」


 ユウレンは経過報告がメインだ。


 どのぐらい材料が集まっているとかどれほど開発が進んでいるなど。

 そのおかげでベッドにいながらにして経過が理解出来る。

 私の気分が和らぐからありがたい。


「……とまあ、かなり順調ね。お金も余裕があるから募集枠を増やすところよ」

「群れの仲間たちはどうかな?」

「何も問題なさそうね。トラブルがあっても乗り越える程度みたい」


 ユウレンは早く終わらせてハックの元にいたいと不満を漏らしつつもかなりうまくやってくれている。

 今回は大量の骸骨たちが一番役にたっている。

 運搬も採取も彼等なら疲れ知らずだ。


「まあ、早く終わらせるわよ」

「うん、ありがとうユウレン」





 そして私が入院してから1週間ほど経過してからだった。

 私にとってただ信じて待つという戦いがやっと終わりを告げる足音がとある昼間にやってきた。


「試作が出来たぞ!」

「本当ですか!」


 勢い良く入ってきたのは九尾。

 早速試したいということで移動開始。


「おうふ!?」

「何やっとるんじゃい」


 ベッドから数歩でコケてしまった。

 明らかに身体が動くようになってない。

 筋肉が寝てしまっている。


 徐々に慣らしつつ許可をとって病院から出てたびたび休みながら九尾の屋敷へとやってきた。

 医者にも『身体はもうかなり衰えてる可能性が高いです』とは言われていたものの……実感するときつい。

 だけれども、この実験を乗り切ればきっと……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ