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九百九十八生目 聖女

 魔王。それはひとはしらの神だった。

 隠されていた闇と共に魔王を倒さねばやはり生き延びる方法は少ないらしい。


 魔王に関してニンゲンからかかれているからニンゲンの生死はよく記載されているが……

 当時の記録としても[山を破壊した][街ごと潰した][平原を火の海にした]とある。

 この世界を守るために世界が半壊しても良いらしい。


 言ってしまえば命に選別なく平等にやりたいようにやっているとも言える。

 同時に魔王の言葉も複数の文献からある。


「世界は我が作る」

「世界を創り直す」

「世界をあるべき姿にする」


 ……なんとも傲慢な響きだが同時に彼は神で魔王だ。

 それだけの力はあった。

 だから勇者率いる反魔王戦力に(たお)されることとなったのだが。


 今回の戦い……向こうは神としての存在意義をかけて。

 こちらは生存権をかけて。

 そこに正悪のない戦いになりそうだ。


「おい、こいつを見てくれ。魔王の倒し方だ」

「なんだって!?」


 ジャグナーの言葉にみんな手元の本から目をそらし集まってきた。

 ジャグナーが辞書みたいな本を机の上に置く。

 これの内容は……


「魔王の……封印!?」

「なっ、魔王は斃されたんじゃ!?」

「落ち着け、これは魔王の存在自体の封印とはまた違うみたいだぞ!?」

「そこ!! 図書館では静かに!!」


 ……盛り上がり過ぎてフルスおばあさんに叱られてしまった。

 咳払いひとつで静かに再開。


「……失礼。魔王の封印とは言っても、どうやら力を封じたようですね」

「力……というとグッと勝率を高められる気がしますな」

「昔、魔王は多くの神をも越えるもっと絶対的な力を……存在そのものが上位であると考えられたほどの力を持っていたとか」

「そうだ。だからここではニンゲンたちが行った作戦について書かれている。俺はこういうの必要ならば割り切ってやるが、昔のニンゲンたちも思い切ったもんだ」


 ジャグナーが爪先で指した先。

 ここの文字列か。

 さっくり読むぞ。


 ……つまり。

 聖女様と呼ばれる存在がいた。

 聖女様は勇者と共に戦いそして。 


 魔王の力は絶対的だと知り……

 聖女と神々の信徒たちが祈り。

 その命たちと大量の捧げもの……複数の命に魔石なども捧げることでなんらかの極意術式を完成させた。


 神の力すら封じるニンゲンの力。

 恐ろしく犠牲前提とは言え単にニンゲンだけの力で散々書かれている絶対的な神の力に対抗できるとは思えない。

 おそらくはニンゲンに味方する側の神たちの入れ知恵も大きいか。


 そして詳細は不明だが……勇者たちはその力を持って魔王の力を封印した。

 それにより討てたのだ。


「こんな……! 有用なのはわかるがこれを当時したのですか!?」

「何人使ったかはわからないが、こんなもの今ならどの宗教でも禁じているな。聖女様と言えば聞こえはいいが、捧げものの山羊にされた生贄外法だ。当時そこまで追い詰められていたというのか……」


 生贄外法。

 世界を救うため自身を捧げた人々といえば聞こえは良いがどちらかというと邪神儀式に値するもの。

 つまりは人柱だ。


「この方法は……ちょっと……」

「そもそも詳細がまるでわからん。これがどこまで効果があるのか、むしろ今でも効いているのか、具体的には何を用意しどう実行すれば良いのか……」

「……王としては、やるならばやる。しかし私個人としては、避けたい方法だな」


 リユウ指揮官長を含むここにいるニンゲンたちやジャグナーはこういう判断をくだす側にいる。

 私は現場派だからどうしても拒否感のほうが強いが。

 彼等は拒否感を飲み込んだ上でそう言える。


 王もさすがに民に犠牲を強いることに拒否感は示しているがやること自体も否定していない。


「具体性かぁ……」


 ……そうか! さっきの本パラパラと見て覚え今脳内で改めて読んでいたが……

 ここに書いてある記述はこの外法関係か!

 外法そのものには触れていなかったしかなり大きい本だから脳内で読み漁って理解している段階だった。


「さっきの本なんですが……ここだ、このページです」


 机の上に改めて本を置く。

 先ほどとは違うページで文字が詰まっている場所だ。

 ただし小さな挿絵でメモ取りのように見たこともないつるぎが描かれている……


 内容はこうだ。

 勇者一行が魔王討伐に乗り出し幾時。

 隠れ潜んでいた筆者は魔王がいた方向を見ていた。


 すると輝きと共に凄まじい力が7つ飛んでいった。

 うちひとつは筆者の方に飛びそれを慌ててスケッチ。

 なぜか強く心が惹かれたらしい。


 そして後に魔王が討たれ勇者たちの命は帰らずそして勇者の剣が紛失したと知りすべて理解したのだとか。

 飛んでいった剣は絶対的な魔王の力そのもの。

 勇者たちは勇者の剣では勝てず何らかの姑息な手段で魔王の力を散らし相打ちしたのではないかと。


 そして後日推測により見出したおぞましき外法について委細が書かれていた。

 さっきみてしっかり読む途中だったがなるほどこのことか。



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