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今日の話、野球をしている人はどうぞ参考にしてください!

 バットを振っていた人も、その声に驚いた様子で慌てて声の方向に振り向いた。そして、お互いに目を合わせる。

 野球部の先輩であるその人は、いきなり大きな声を上げた世奈の顔を見つめて、目を丸くしていた。

「先輩!なんですよね、高山田中学野球部の!」

 世奈が元気よくそう言うと、驚いたような顔をしていた先輩の顔は笑顔になった。

「昨日の野球少女か!」

「はい!私、高山田中学校、野球部、柚木世奈です!」

「ゆずきせなちゃん?」

「はい!柚木世奈です!」

 先輩は、「ほんとに元気がいい女の子だな…」と言いながら、笑顔でバットを2,3回振った。

「あの!」

「なに?」

「野球部、今、顧問はいるんですけど、指導者はいないんです!」

「あ~うちの中学校は、部員が0になるまで廃部にしなかったんだっけ…」

先輩は、感慨深そうに、何かを思い出すように答えていた。

「だから…柚木世奈を、先輩の弟子にしてください!」

「弟子?」

 先輩はまた驚いたように、目を丸くし始めた。世奈はそのあと考え込む先輩を見てやっぱりダメなのかなと考え始めていた。

 そもそも、この人がどんな仕事をしていて、どんな性格の人か全く知らないで、弟子にしてくれと頼んでいる。しかし、弟子になりたい理由は明白であるのだ。それは、この人が野球のスイングの基本をしっかり熟知しているということ。

「じゃあ…」

考え込んでいた先輩が口を開いた。

「世奈ちゃん、バット振ってみて」

 先輩はそういって、世奈に近づき握っていたバットを手渡した。世奈がそのバットを握った瞬間、ずっしりと今まで感じたことがないようなバットの重さを感じた。

「重い…」

「じゃあ、このバット振って、音が出たらいいよ、ブン!ていう音が出たら」

 世奈は一瞬先輩が何を言っているのか分からなかった。今まで持ったことのない思いバットで、しかも大人が降るような思いバットを振って、音を出せと言っているのだ。

「先輩は、私を弟子にしたくないのですか?したくないんだったらはっきりと言ってください。そっちの方が諦めがつきます」

世奈は、吐き捨てるように先輩に言った。

「世奈ちゃんは、諦めない性格だと思ったんだけどな…」

先輩はうつむいている世奈の顔を無理やり覗き込んだ。そして無理やり互いの目と目を合わせる。

「振って、いいから早く」

「はい…」

そう言って世奈は、そのバットを両手で持ち、バッターの構えに入った。いつも通り深呼吸すると、大きく足を上げ、踏み込み、一気にバットを振った。しかし、バットは波をうった軌道になり、音は全くならなかった。

世奈は、先輩の方を向いて、バットを預けようとした。しかし、先輩はそれを払いのける。

「もう一回チャンスをやる。構えたら、足を上げる時に重心をベース方向、前に倒すんだ。それから、踏み込んでふるときに手で振ろうとする意識より、足を意識する。特に世奈ちゃんは右バッターだから、右足回転。それだけだな…後は、フォロースルーもバットの振り方もよかった、やってみて」

「はい…」

 世奈はもう一度バットを両手で握り構えた。そして、大きく足を上げる、今度は先輩に言われたように、重心をベース方向に向ける、そして踏み込み、右足の回転を意識しながら一気にバットを振った。

「ブンッ!!!!」

 世奈は、その瞬間驚いた。今までに経験したことのないすごいスイングだった。バットを振っているというより、自然とバットが前に出た感覚だった。そして、こんな重いバットで音が出たということが驚きだった。


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