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「あの、いきなりなんなんですか?」

「あ…びっくりさせちゃった?ごめん、いやユニフォーム着てるから…」

「あ…ユニフォーム」

 世奈はそのやり取りをしている最中に、ますます野球部についてどう答えたらいいのか分からなくなった。それはなぜかと言うと、世奈はこの男の人に見覚えがあったからだ。たまにこの小さな町で見かけている人である。ということは、この男の人は、世奈の先輩かもしれない。そういう思いが世奈の心の中を駆け巡った。

「あの…どうしてそんなこと聞くんですか?」

「あっ…あの、高山田中の野球部だったんだ、7年前まで」

 “やっぱりそうか”世奈はその男の返答を聞いた瞬間そう心の中で叫んだ。自分が育った野球部が、現状では廃部と言うことを知ったらこの人はどう思うだろうかと考えた。

「んー、何といいますか、私一人…」

「一人?」

世奈が現在の野球部の状況を答えると、男の人はきょとんとした顔になった。

「一人ってことは、やっぱり現状廃部?」

「いえ!私の中では続いてます」

 自信満々で答える世奈のことを面白く思ったのか、男の顔が一瞬にやけた。

「あの…何がおかしいのですか?」

「あ、いや違うんだ、えらい気が強い女の子だなって思った」

「そうですか、そりゃどうも」

 世奈はそのこと自体は自分の一つの性格として自覚していたので、特に何も感じることはなかった。

「がんばってね」

「えっ?」

「あ、いや…がんばってね、野球部!」

 世奈は、男の人からの突然の励ましに一瞬戸惑ったが、すぐに笑顔で応対した。

「はい!がんばります!」

 そして、二人はそのまま別れた。

 世奈は、最初は怖く思えたこともあったが、とてもいい人に出会えたと思った。家にたどり着く前の坂を全速力で駆けていった。世奈がそんなふうに思えたのは、現状廃部であるということにも関わらず応援してくれたこと。そして、何といっても最初に聴いた言い争いの内容からして、とても野球のことを知っていそうだったからだ。


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