表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/78

1-21

 次の日の放課後、帰りのHRが終わると、世奈は駆け足で部室へと向かった。部室の目の前にあるグラウンドを見てみると、もうそこには監督になった谷野の姿があった。

「こんにちは!」

世奈が大きな声で谷野に向かって挨拶をすると、谷野は大きく手を振ってそれに応えていた。

 世奈は、それから部室のカギを開け、急いで練習用の野球着に着替える。部室を出て、グラウンドに向かおうとしたところで、一人のサッカー部の部員に声をかけられた。

「世奈ちゃん、今日なんか嬉しそうだね!」

 その声は、サッカー部で唯一の女子部員である、田上千帆であった。世奈とは、中学校に入ってから知り合い、中学校では同じクラスであった。

「野球部にね、新しい監督ができたの!」

「そうなんだ!よかったね!」

「ありがとう!」

千帆はいつでも世奈を応援してくれていた。というのも、野球部とサッカー部はいつも同じグラウンドで練習をしている仲である。千帆も野球部が一人、また一人と減り、世奈が野球を思うようにできなくなっていく姿を身近で見ていたのだ。

「あとは、部員だね!」

「うん、そうなんだよね…」

「私もできることあったら協力するから!」

「ありがとう!がんばるね」

 そう言って、世奈は谷野が待つグラウンドへ向かった。


「よろしくお願いします!!!!!!」

「よろしく!」

お互いに挨拶をしあい、「じゃあ、アップしよう!」と谷野が言い、世奈はグラウンドを走り始めた。

 野球の練習にとって、一番必要な事、それはアップで体を温めていくことである。これは怪我の予防でもあるのだ。そして、いきなり練習をしても思うように体は動いてくれない。世奈は、疲れすぎないように、ゆっくり周回200メートルのグラウンドを5周まわった。

 そのあとストレッチをし、「よし次は、キャッチボール!」と谷野が言い、世奈と谷野はキャッチボールをすることになった。

 いよいよ、ボールを使った練習が始まる。世奈は初めて行う谷野とのキャッチボールの若干の緊張気味であった。

「お願いします!」

世奈がそう言って、ボールを投げようとするとき、谷野は「ちょっと待った!」と言い、校舎が建っている方向に向かって叫び始めた。

「お前らな!練習したいんだったら、こっち来いよ!退部届出してねんだろうがよ!」

谷野がそう言った先に、グラウンドの校舎側にある、校風が書かれた大きな石碑から、川野夏妃、仁科美南、辰見花帆、高嶋笑の4人が出てきた。

「あいつら、ずっと隠れていやがった!」

4人とも体操服に着替えている。

「夏妃、美南、たつみん、ニコ…野球したいの?」

4人が、グラウンドに入り、世奈と谷野のもとへ来たとき、世奈は4人に聞いた。

「うちは、この前言ったみたいに、強い女子チームに入りたい」

夏妃は、この前と変わらず、女子チームに入ることを口にする。次に口を開いたのは、たつみんだった。

「私はね、世奈ちゃんの言う通り、やっぱり中学校で野球したいなって…男の子に勝ちたいなって…」

あまり、自分の意見を言わないタイプであるたつみんはそう言った。

「とういうわけで、私たちのアイドル、たつみんが言ってるわけだから、私たちは、野球部に残ることにしました!てへぺろ!」

ニコは舌をペロリと出して、おどけたように答えた。

「たつみん、ニコ!」

世奈は、顔を赤くしてたつみんとニコをニックネームで呼んだ。

「いままで、ごめんね、世奈…もう逃げない、目標から逃げない!」

美南は強い口調でそう言った。続けざまに話しはじめた。

「後は、夏妃だけ…さっき約束したから、今から、4人と1打席勝負して私たちのうち2人がヒット性の当たりを、ピッチャー夏妃から打ったら、夏妃もこの野球部に残る」

美南は、睨みつけるように夏妃を見た。

夏妃も、負けずに睨み返す。そしてこう言い返した。

「あんたたち、うちの上投げ打てたことある?もう何か月も練習してないのに…なめたら後悔するけんね…」

「おお!これは面白い!やれやれ!」

谷野は、なぜか楽しそうであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ