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谷野は久しぶりに高山田中学校の校舎の中に入った。約3年と半年ぶりである。この校舎は63年前に学校ができてから一度も建て替わったことがないという、かなり古い建物である。1年に一度くらいの頻度で、耐震強度を補強する工事が行われている程度だ。学校の玄関を入ると水槽の中のメダカやオヤニラミと言った、魚がお出迎えしてくれるのは全く変わっていない。
谷野は、玄関を入ってそのまま廊下をまっすぐ歩くと、職員室の隣にある校長室も前についた。ゆっくりと深呼吸をする。少しばかりの緊張感があった。
「待ってください、私が開けますから」
その声は、先ほどグラウンドに現れ、谷野をここに案内した、けっこうな美人教師の富岡であった。谷野を制して前に立つと、その身長は明らかに谷野より高いものであった。谷野自体、170センチちょうどと言う身長で、男性としては高くないのである。しかし、富岡の身長は、優に172センチくらいありそうなほどである。
「何か?」
「いえいえ…何でも…」
富岡は、まだ谷野を少し怪訝そうな顔で見ながら、「失礼します」と言い、校長室の扉を開けた。
「校長先生、谷野さん連れてきました」
富岡は、校長の返事を待った後で、谷野に「どうぞ中へ」と言い校長室の中に促した。
「失礼します」
谷野は、富岡の合図に従ってゆっくりと校長室の中に入った。
「谷野君!久しぶりだね!」
谷野はその顔を見て少し驚いた。
「山村先生ですか?」
「そうだ、山村だよ!」
高山田中学校の現校長は、山村勝美。谷野が高山田中学校の野球部にいたころに、北九州市でしのぎを削っていた、狭遼中学校の監督である。
山村は、高山田中学と練習試合をすると、毎度のことで当時4番を打っていた谷野にバッティングについて指導をしていたほどであった。
「あの頃は、どうも…」
「いや…いいんだ!君は、すごいスラッガーになれる逸材だったんだから」
それをそばで聞いていた、富岡は「えーっ!」と言いながら目を丸くしていた。
「今日は君にお願いがあるんだ!」
山村は、目を輝かせて谷野の方に歩み寄ってきた。
「君が指導者を目指しているということは、うすうす君の恩師から聞いていたよ。そこでだ、ここの野球部の監督になってくれんか」
こないだの、問題の正解!
作者高見リョウが、中学時代対戦した現プロ野球選手は・・・
福岡ソフトバンクの今宮健太選手でした!
たまたま、遠征先で対戦しました。
今宮選手は当時ピッチャーで、私たちのチームはノーヒットノーランされました!
私も三振、三振、セカンドゴロでした・・・