表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/78

1-15

 “今日こそマー君を打ってやる”そんなことを考えながら、世奈は今日もバットを握り、右の打席に立つ。想像の中の田中投手は、今日もノーワインドアップで投球モーションに入った。ストレートか、それともスプリットか、いや、インコースのツーシームか、いろいろな予測が頭をよぎる。“もうどうでもいい…来たボールをはじき返す!”田中投手の右手から放たれたボールは真っ直ぐの軌道だ。“もらった”そう思った瞬間、今度は手元で鋭く内側に食い込んできた。“えー…ツーシーム…”中途半端なスイングになってしまい空振り三振。

「もーう…現実のマー君はストレート勝負だもんね!」

そんなことを叫んでもしょうがないのだ。この田中投手を想像しているのは、世奈自身だから。

「誰を想像して素振りしてるんだ?」

その時、世奈が昨日よく聞いていた声がグラウンドの外から聞こえた。世奈がその声がした方向に振り向くと、谷野の姿があった。

「先輩!」

今日、一日中曇っていた世奈の表情もこの時ばかりは笑顔になった。

「マー君、田中将大投手を相手にして、シミュレーションをしていました」

「うん!いいピッチャーを想像して素振りをするのはいいことだと思うよ」

世奈は、谷野に褒められるとますます嬉しくなり、その場でバットを2、3回振った。

「先輩のおかげで大分スイングよくなりましたよ!先輩教え方上手いですね!」

「まあ、俺を指導してくれた、昔のここの監督が、きちがいだったけど教え方はうまかったからね」

世奈は、その話を聞いて少し笑ってしまった。

「きちがい?」

「うん、いきなり後方からダンベルが飛んでくるんだ。今だったら、体罰だよ」

世奈は、それを聞いて、今度は大きな声で笑った。

「世奈!誰この人?」

その時、またもやグラウンドの外から、世奈がよく聞き覚えのある声が聞こえた。世奈がその声の方向に振り返ると、そこの立っていたのは、仁科美南、辰見花帆、高嶋笑の3人だった。おそらく、また課題か何かができていなくて、すごく厳しい社会科の先生、池山高次に残されていたのだろう。

「美波、たつみん、ニコ…」

「世奈…誰この人…」

美南がつぶやくように、世奈に尋ねた。どうやら谷野に対してかなりの警戒心を感じているようだ。

 しかし、谷野はそんなことおかまえなしに3人に近づいて行く。美波とたつみん、ニコの3人は若干後ずさりしていた。

「こんにちは!」

「こんにちはっていうか…18時過ぎてるのでこんばんは…」

ニコが的確なことを指摘する。

「こんばんはか!こらしっけ!」

谷野は、一呼吸おいて、こう答える。

「君たちの先輩、谷野隼介です!特技は野球!趣味野球!よろしくね!」

「世奈、気を付けた方がいいよ、なんか馴れ馴れしい」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ