4 女の子はお嬢様?
「先生。聞きたいことがあるんですけど…」
教科書その他諸々を配り終わり、五分休憩の時間になったタイミングで、
真保について聞いてみることにした。
「なんだ中島!遠慮なく聞いてくれ!」
うわぁ暑苦しい。
「一年二組の真保さんっていう人、知ってますか?」
「あぁ、特待生のことか。知ってるぞ」
あっさり答えられてしまった。
「…あの、特待制度ってこの学校にあったんですか?」
俺には関係のない言葉だが、聞いたことが無かったので一応。
「実はあるんだよなぁ。表には公表されてないけどな。
なんたってウチは公立だし?」
何故かムカつく物言いをされた。
そして筋肉教師の言葉に反応した一部の人間が、
「特待制度?」
「そんなのあったの?」
「嘘だろー、それなら俺特待制度狙ったのにー」
「そんなこと言ってるからもらえなかったんじゃないの?」
と口々に言っている。
「あーそこのお前ら。特待制度については次の時間に話すから、
ちょっと待ってろ」
という教師の一言によって中断を余儀なくされていた。
「真保さんって、どんな人なんですか?」
引き続き聞いてみる。
「お前はどんな人だと思った?」
質問返し……だと!?
「俺は……変な喋り方の不思議な女子だなぁと」
そういえばさっきの桜について聞いてなかったと思い返す。
「お前がそう思うならその認識で良いだろうし、
もしかしたら違うかもしれん。
まぁ俺は話したことないから分からんけどな!」
ちょうどチャイムが鳴ってしまった。
…なんかはぐらかされた気分だ。
*
「えー、お前らに一つ言っておくことがある」
そんな前フリで次の授業は始まった。
筋肉教師が言うには、
・この学校では特待制度がある。(公立なのであまり公にはしていない)
・システムは“基本的には”普通の特待制度と一緒。
・だが、一度その資格をもらった後は、何をしても剥奪される事はない。
・そして、特待生には[無断欠席][無断遅刻][サボリ]などが黙認される。
「まぁ、要するにこの学校のお坊ちゃま、お嬢様って感じだな。
特待制度をもらってるんだから何かしらの事情はあるんだろうけどな。
あぁそうそう、このクラスにも居るんだぞ。特待生が」
全員の視線が動く気配がした。
その気配を頼りに目を動かすと、誰も座っていない席に止まった。
「そうだな。そこの席の人が特待生だ。
いつ来るかは分からないが、もし来てくれたら自己紹介など改めてしよう」
真保に聞いたら分かるかな。
と、なんとなく思っていた。
次の休憩時間に、行ってみようかな。
あの桜の木の場所に。
……どこにあるのかは分からないけどな。