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桜―サクラ―  作者: 柊 恵海
3/5

3 特待生のサボリ少女

「まず、資料室だったな。ついてこい」


スタスタと歩き出す真保さん。

……この人一年生って言ったよな?

そう言えば上靴の線の色も一年色だし……


「あの、場所分かるんですか?一年なんですよね?」


「私は特待生だ。前に何度かこの高校に来たことがあるので、大方の部屋の場所は理解している」


特待生?

そんな制度あったか?この高校に。


「先に話してしまったな。まぁ良い。

実はあるのだよ。この高校に、特待制度がね。

その特権で私は授業をサボっても良いことになっている」


かと言ってそんな堂々とサボって良いもんじゃねぇだろ……

今さらっとサボってるって言ったし。

いくら任意でも、偉そうな態度は出来ないよな。多分。


「何の特待生かは……お楽しみとしよう」


別に楽しめないんだが。


「ところで中島、いつまでもそこで何をしている?

突っ立ってないで早く来い。置いていくぞ」


気付くと俺はまだ木の影から一歩も動いていなかった。


「あ、すみません」


「敬語は使うな。特待生である故に私の立場は中島より上だが、

拒否権も常に私にあるのだ。使うな」


「あ、はい……あぁいや、分かった」


『故に』なんて使う人初めて見た。

ていうか俺って初対面から呼び捨てなんだな。

別に良いけど。


「…そうだ、中島。この私がお前を呼び捨てにしているんだから、

意味は分かるよな?

お前も呼び捨てでいい。というか、そうしろ」


「…あ、あぁ」


何故だか心を読まれた気分だ。



 *



どこをどう進んでいるのかも分からないまま、俺達は資料室に着いた。


「あ、ありがとう。真保」


「こちらこそ、だ」


こちらこそ?

俺何かしたっけ?


そう思うと、彼女はまた俺の心を読んだかのようなタイミングで、


「高校生の迷子なんて中々出会うものじゃあないからな。

面白かったよ。ありがとう」


と言った。



『1-4』と書かれた紙が置いてある教科書を持つ。

……これ、全部持つと意外と重いぞ。

この量を一人で運ばせるとは……あの筋肉教師め。


「ずいぶん手こずっているな。お前は方向音痴で運動不足のヘタレ男なんだな。

面白い。」


確かに自分の方向音痴さにはほとほと呆れるくらいだが……!

中学校は帰宅部だったしこれといった運動もしてないし、

運動不足も認めないことはないが……!

その何かと鼻につく言い方を何とか出来ないのか?

本人に言ったら「だって事実だろう?」とか言われそうだが。


「どうせ中島は帰り道も分からないだろうからな。

私が案内ついでに半分持ってやろう」


「え、いいよ案内だけで。なんか申し訳ないし」


「遠慮するな。特待生をなめるんじゃあないぞ?」


真保は軽々と半分ぴったりの量を俺から奪い取った。


「ふっ。これくらいの量ならあと四倍は行けるぞ?

女子に負けるとは情けない」


何の特待生かは知らんが……恐らく運動系だろう。

それで[女子]とか使うなよ。

そっちこそ今時の高校生男子をなめるな特待生。


「さて、行くぞ中島」


そう言って、彼女は実に軽快な足取りで資料室を出て行くのだった。



 *



真保には1-4の教室が見えてきたところで半分を返してもらった。

さすがに教室まで運んでもらってクラス全員の注目の的になるのはキツイ。

真保が特待生だと知らない生徒がほとんどだろうしな。


締まりかけのドアを足で開き、よろよろとしながら教室に入る。


「おお中島!生きて帰って来れたか!

資料室の場所を言い忘れたのに気付いた時はすごく焦ったんだ!」


と筋肉教師。


「なら気付いたときに追いかけてくださいよ……」


「中島なら出来る!と思ったんだ!」


嘘つけ。

単に面倒だっただけだろう。


「実を言うと面倒だっただけなんだがな!」


ほら。

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