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創暦のレジスタンス  作者: 僕。
序章 
4/6

第3話 序章(下)

日常編はまだあると思います。


それ以外が短い訳じゃないですけどね。


1

 基地にいたメンバー達を追っ払った。

 ギャルゲーをプレイしていた遠流は自宅に用があると行って出て行ってくれた。

 准はもともといなかったから、きっと特訓でもしているんんだろう。

 葵はというと冷房の駆動を確認するとそそくさと家に帰っていった。

 せんべいをバリバリと食いながらイスに座る。俺の正面のソファにはリンが緊張した様子で座っている、どこかもじもじしているのは座った事が無いんだろう。まったく、ソファーも知らんとはな。まぁ拾い物だが...。

「石...とはこれのことだな」

 青色の石。それ以上見所は無い。

「そうそう、もう簡単にいっちゃえば兵器だよ、それ」

 兵器!?

「なに!?」

「いや最終的には兵器なんだ」

「最終的.....?とは?」

 ますます訳が分からない、というかリンも詳しくは知らないようだった。

「だいたい僕は父さんが遺した手紙で知ったんだ、君に渡す事も」

「そ...そうか」

 これって地雷スレスレなんじゃないか!?

 と思ったがあまり気にしていないようだ。

「でね、リーダーは跡継ぎに君を選んだんだ」

「ワルキューレの?」

「そうみたい」

「だが俺は断った...そうだよな」

「うん、強制する必要は無い、だけど石の事は君に必ず譲る事になってる」

「これは、何かが出来るのか?」

「質量を持たない物質の具現化が出来るってだけしか知らない」

 ぐ、具現化だと!?それはあまりにも、その、

 ないわー

「ないわ...」

「そこは同意するよ、僕も試したけど出来なかったし」

 そもそも具現化が出来るからと、なんだというのだ。ま、まさか!武器を作り出すとか!!?

「いや、質量を持つモノは生み出せないよ」

「な、なんだ」

「いやまて、質量を持たない物質って、ことは『暗黒物質』を容易に生み出せる事が出来ると!!?」

 そして生み出しまくった俺は世界を滅ぼす。相手は死ぬ。

 ブラックホールとかダークマターとかそういうモノを生み出せる力があると!!?

「うーん、違うかもね。この石じゃブラックホールの様な無限大な重力場は生み出せないと思うけど...」

「光や、光子なら...できるかもね」

「という事は、レーザーは出来るのではないのか!!?」

 あれは質量を持っていないからいけるかもしれんぞ。たぶんだが

「出来るかもしれないね、微妙に質量を持っているモノも生み出せるかも」

「微妙に持っているモノと言えば....雷とか?」

「陰極性だから、いけるね」

「それは逆に言えば若干持っているモノなら出来るという事だな、質量を持っていない炎はどうだ」

「あれは熱は質量を持っていないけど、気体そのものには質量はあるよ」

「.......」

 なかなかやるな、コイツ

 というか普通に考えたら気体には質量がある。俺がアホだったという事だな。

「だが、逆に言えば熱を生み出す事が出来るなら、結果的に炎は『出せる』ということだな」

「そうだね」

 学校を休みたい日には身体に熱を生み出せばいいという事...!!よっしゃ!!

「身体の中は無理」

「....残念だ」

 学校は遠くて通うのは危険なんだ、まぁ行かなくてもいい事になってるし今更登校日数など気にする事ではない。

「それで、この丸っころからどう『質量の無い物質』『少し質量を持つ物質』を生み出すというんだ?」

「それは...ええと」

 自信満々に答えていたリンは自信がなくなったように頭を下に傾ける。

「脳から発生した神経パルス信号を読み取るのかな...?」

「神経パルス信号...か」

 漠然としたイメージしか持っていないな、とりあえずネットで調べてみればいいだろう。

 というかリンはなかなかの知識を持っているな。学者志望なのかもしれんな。

「神経パルス信号を読み取るには、脳にペタペタと貼付けるアレが必要なんじゃないか?」

「そうだね、そこから石に接続すると反応するかも」

「そうか...これは俺達の研究対象にしてやる」

 なかなか興味がある話じゃないか、魔法を使う様な生活が再現出来る。人類の夢のひとつなんじゃないか?やってみる価値は大きくある。

「てゆうか君、なんでそんなに上から目線なんだろ」

「はぁ?そんなつもりは無いぞ?」


2

 それから議論を続けていると、遠流達が戻ってきたので石の機能と、これから神経パルス信号に反応するかの実験をすることを説明した。興味を持っていた様なので、機材を購入してから実験する事となった。

 葵と准には機材の買い出しを頼み、俺とリンで実験の準備、遠流は神経パルス信号を読み取る為のプログラムを作成していた。

「この基地は占拠したぁ!!」

 バンと扉が蹴破られ、(蹴破るなよ)准が襲来《帰宅》してくる。さすがに準備に忙しく、付き合ってられないのでプログラムを完成させて暇そうだった遠流に応戦してもらった。

「俺ァは以外と格闘派なんだぞ准!!」

「へぇ、やってみな」

「ミリオタなんぞに負けるか!」

「勝手にオタクにすんな!ギャルゲマスター!」

「あれはギャルゲなどではなく...ッ!!」

「黙れ!!」

「.....!!」

「...!?....!!」

「ギ!!ギブ......!!!」

 准が遠流を拘束しているその様子を、やれやれと眺めているとリンが俺に微笑んでくる。

「君たちってとっても楽しそうだね。厳国だとみんな殺伐としててさ、あんまり心地よくないんだ」

「お前はこの基地のメンバーとなったんだ....。いつでもここにいていいんだぞ」

「ありがと」

 そう、リンはこの基地のメンバーに迎え入れた。これから厳国に帰る予定は無いらしいので、もうここで寝泊まりしてもいいんじゃないかと、そう思ったのだ。

 金が心配になってくるが、そこはリンも働いてしまえばいいのだ。



「準備完了っすなぁ」

 遠流が変な口調で告げる。

 石の周りには色んなテープが付いていてそこからチューブでPCへと繋がっている、そしてそのPCから俺が今かぶっているヘッドギアっぽい帽子状のモノには、いろいろと金属チップが付いていた。まさに魔改造というものだろう。

 PCのモニタ上には俺の脳波、神経パルス信号の反応が波となって表示されている。

「おお、ちゃんと読み取ってる!これ、もっとがんばってプログラムしたら脳内映像も再現出来るぜ!ktkr!」

「それは面白いね」

 新参であるリンが遠流のモニタへ顔を近寄わせている。

「てかリン氏は女の子ですか?」

「はあ?」

 ああ、端正な顔つきや言動ゆえにそう見えてしまうのだな、てか遠流のことだからそう言うと思った。

「男だよ!」

「なん....だと?」

「いやいや、君、失礼だと思うよ」

「サーセン」

「うるさいぞそこ!!実験準備は完了しているんだろ?思い浮かべるモノは炎でいいな」

 このヘッドセッドの安全性について、制作者であるリンにはすでに聞いてある。神経パルス信号を読み取るだけで、脳や体、精神への負担はない、と言っていた。

「じゃ、接続開始」

 遠流のエンターを押す音が聞こえ──────



 ──────っ!!!

『ぐ、ぁあぁぁぁああぁぁ────

「おい!!?」

「いますぐ中止しろ!!」

「大丈夫!!?宙!!」

「急いで外してやれ!」

「お!!?おい!!これはなんだ!?」

「伏せろ!!」

「きゃああぁ!!!」





 ────ぁああぁぁああぁ!!』

 頭がかき回されるように痛い、脳が痛い。

 脳に痛覚などあるのか?だが痛い。

 痛くていたくていたくていたくておかしくなってくる。痛い、痛い。

 まるでチェーンソーでギャリギャリとジャキジャキとぐりぐりとかき回されているみたいで痛苦狂う、あれ?ここどこだ痛。何も見えな痛い。見えないぞ、痛くて痛くて狂いそうで狂ってて痒くてウザくてやばい。

 やばいってなにがヤバいんだ!?



「──っ!!」

 そうだ、ここは精神世界。

 わかるぞ、頭を抱えながら立ち尽くす俺の姿を、どこかから眺めている俺がいる。

 ここは無数の星々が輝く、無の世界。宇宙。

『あなたは、生きている』

 どこかから声が響く。ひとは俺しか、いない。

『あなたにしか、たどりつけない』

 遠い所から大声を出したようにも、耳元で呟かれたようにも聞こえる、声。

『でも、そこは行ってはいけない場所』

『人間は、『魔法』という壁を超えてはならない』

『でも、あなたはやってしまった』

 クスっ、と笑い声が聞こえた。なんで

『だからあなたは実刑されるのよ』

 宇宙の星が、物質が落ちてゆく。

 そう、吸い込まれるワケではなく、その一点に向かって落ちてゆくのだ。

『ブラックホールって、しってる?』

 だからなんで、なんで葵の声なんだ!?そう叫ぶが、声が出ていない。

『あなたが自分の力で生み出したのよ?』

 俺は落ちてゆく。

『あなたは光速に近い速度で、落ちてゆく』

『あなたはブラックホールの重量に耐えられなくなって、つぶれてしまう』

『でも、それを止められない』

 笑うような喋り方に、恐怖を覚える。

 俺はなおも落ちてゆく。

『光速に近くなると、流れる時間は遅くなる』

 落ちてゆく、本当に?

『あなたはいつ、たどり着けるんでしょうね?』

『その銀河の、中心へ』

 銀河の中心は、ブラックホールだ。

『そのちからは、あなたに託されたもの』

『どうつかってもいい』

 その言葉を最後に、『声』は話すのをやめた。

 俺は落ちてゆく、ブラックホールに。

 ブラックホールに向けて、あらゆるものが引きずり込まれている、光すらも。

 俺が吸い込まれるのはいつだ?

 俺の中で、時間が遅くなってゆく。

 1秒が、1マイクロ秒に感じる、1マイクロ秒が1ナノ秒に感じる。1ナノ秒が、1ピコ秒に感じる、1ピコ秒は俺の中でフェムト秒になっていく。フェルトはアトへ、アトはゼプトへ、ゼプトはヨクトへ。


 もっと遅くなってゆく。

 

 0.00000000000000000000000000000000000000000000000000000....................1秒

 俺はいつになったら、死ねるんだ?

 俺の中で時間が遅くなっているだけで、俺は老けない。

 止まってるに等しいこの世界。俺の主観。

 早く、早く吸い込んでくれ!

 

 もう....いやだ!!




3

「───っ!!」

「宙!!」

「よかったぁ」

 俺の意識が目覚める。

 そこは宇宙などではなく、基地の、見慣れた風景。

 夢だったのか?

 だとしたら悪夢だな。

「はぁ...はぁ..はぁ...ぐぅ...ぁぁ」

 呼吸がうまくできない。

「ふぅ...かはぁあっ!!」

 俺の周囲に葵たちがいて、心配の眼差しと、声をかけてくる、聞こえない。

 あーいま答えてやるから待ってくれ。息が苦しいんだ。

「......な、なぜ俺は意識を...失った....んだ?」

 その様子を遠流が説明してくれた。

 神経パルス信号の接続には成功したらしい、だがその時に俺は意識を失った。そのとき、驚くべきことが起こったという。

 激しい電流が青色の石から放たれ、その間、石に紋章のような模様が浮かび上がっていた。ということである。

 そしてその模様は、俺の腕にも浮かび上がり、放電が収まるのと共に消えたと、遠流はそう言った。

 おもわず、自分の腕を確認してしまう。模様は勿論無い、俺は刺青などしない。

「それは、本当なのか?」

 この場のメンバーは、誰も異論を述べなかった。

「訳がわからない、一体何が起こっているんだ」

「でも、最初意識を失うのは決まっていることなんだよ」

 そう言ってきたのはリンだった。

「父さんは、使用者との契約に似た現象だって残してた」

「契約?」

「うんそう、多分君はもうその石の使用者になった」

「もともと、俺が後継者うんたら言っていただろう」

 なんだか意識がハッキリしない、朦朧としてるんじゃなく、どこかボーとしている。

「.....今日はもういい、実験は今度やろう、もう、意識を失う事は無いんだろう?」

 リンははっきりとした様子でうなずく。この場のメンバーも異論は無かった。





 今日の実験は中止となった。泊まってもいいとリンに告げたがお気に入りの場所があるとかで泊まらないそうだ。

 だが考えれば確かに、目の前の変態と同じ空間にいさせるのは可哀想だ。

 准と葵はそれぞれ何処かへ出かけていった、葵はメールで家に帰ったと言ってきた、今日は基地にはもう来ないだろう。

「何をしているんだ?遠流」

「いや、人工衛星のハッキング」

「何っ!?」

 少し真面目な様子の遠流。その表情はマジでイケメンだ。あまり邪魔するのは良くないかもしれない。

 カタカタと音がする。

 それっきり俺は話すのをやめて石を弄んでいたり、本を読んでいた。

「どこの人工衛星なんだ?」

 一瞬キーボードを打つ音がでかくなったのでビクッとしたが遠流はボソリとつぶやいた。

「厳国の...廃棄前の衛星」

「なにに使うつもりだ?」

「大気圏外から地球を眺めるって、最高」

「そういうことか、明日の天気も頼む」

「おk」

 それからまた沈黙。

 少し風に当たって来ようか。


 この基地は、中層の建物の根元にある、今はだれも利用していない空きビルだ。この寂れたビルも空きビルというよりは廃ビルに近い。

 ビルの屋上に来てみると、空の色が藍色に染まっていた。時計を見ると7時頃だった。

「ふぅ」

 最近は非現実的な話が多い、とくにリン。あいつは相変わらずよくわからない。何の為に近づいてきたのか、初対面で革命を継ぐとか、あいつについてはよくわからない点だらけだ。メンバーに迎え入れたが、警戒は解いていない。疑いすぎなのかもしれない。

「見ーつけた」

 無邪気な少女の声。

「...葵か、もう今日は来ないんではないのか」

「びっくりしたっしょ?」

 くすっと笑う葵を横目に、空を見上げた。藍色の空はやがて太陽の光を失い、宇宙と同じ暗黒に変わる。

「少し考え事をしているんだ」

「考え事ね」

「宙、最近色んな事あったからね、そんな顔してる」

 俺と並んで、ステンレス製の手すりに手を乗せ、空を二人で見上げる。

「天体観測とはな、宇宙の歴史を観測するのと同じ事なのだぞ」

「遠過ぎて、星の光が届くのが遅れているんだよね」            ─────悪夢に出てきたあの声

「宇宙の始まりを、それで観測しているんだ」

「宇宙にとっては、あたしたちの存在すらも、一瞬なんだよね」

「それは、観測者がだれか、の問題かもな」

 神が観測者だとしたら、神にとって地球を観測するのはあっという間の事かもしれない。もっと上の存在ならば、神の存在すらも一瞬の事かもしれない。

 葵と夜空を見上げてこんな話をするのは、好きだ。

 しばらく眺めて、

「そろそろ親が心配するだろう、一緒に帰ろう」

「二人とも宙がくると喜ぶからね」

「ああ」

 よく考えれば、俺が欲しいのは革命とか、そんなことじゃない。何事も無い日常を求めているんだ。

 葵や遠流達を革命に巻き込みたくなんか無いし、なにより、俺は非日常的なことなんて起こせないだろう。

 そうだ、葵は、葵だけは革命とか、そういうことに巻き込みたくなかった。

 

お待たせ致しました


序章はこれにて終わりです。

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