表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Last

作者: 望実

十六夜の夜、理子の感情が弾けた。


「もう、どうにも止まらない。子供のように貪欲に、あの人を求めてしまう。」


そう思いながら、靴をはいた。


「こんなにも愚かな私をあの人は、受け入れてくれるだろう。」


確かな確信を、胸に抱いて、部屋を出た。


理子には、自分が何をしているのか、わからなくなっていた。


本能と感覚の中で、行動をしていたからだ。

団地の階段を降りる…ヒールとコンクリートがぶつかり、音が鳴り響いていた。


駐車場に向かう途中で、近所の人が挨拶をしているようだが、それも理子の頭には聞こえていなかった。

車に乗り込み、無意識にハンドルをきる…。


車のラジオもステレオもついていない。


しかし、理子の頭の中には、理子と最愛の浅岡との思い出のシャンソンがながれていた。

激しく

「愛」を歌った歌が、理子は、自分の気持ちとシンクロさせていた。


「あの人と生きて生きたい。」


何もかも捨てて、不倫相手の浅岡と、人生を賭けて歩きたいと願っていた。


そう強く願えば願う程、感情が高ぶり、目から、涙が止まらなかった。


こんな風に、感情をださなくなっていたので、自分でも戸惑っていた。


「あの人に、早く逢いたい。」


理子の車のスピードが、気持ちと共に加速され…


…そして…


理子が、目の前のトラックに気付いた時には、もう遅く、次の瞬間、やけに光りが眩しかった。


薄れていく意識の中で、ゆっくりと走馬灯が流れ、理子は自分に終わりが来ている事を知った。

人の声がうっすら聞こえ、救急車のサイレンも近づいているよう。


頭からは、生温かいものを感じ…大量に出血しているのがわかった。


死を悟った理子は、


「あの人を愛せてよかった。」


そう思い、静かに瞳を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ