神の眼
「あー、暇!……ひまだぁ」
とカウンターに腕を投げ出し前を見る。
ここはしがないスフィアボール屋だ。
その名も『青玉』。
寂れた商店街の一角にあり、隣はシャッターが降りていて何年も経つような、シャッター街と呼ばれる元商店街。
いや、今も店はポツポツとやっているので、元は言い過ぎか。
この暑いさなかクーラーを効かせ、店番をしている。
この世に『ダンジョン』というものが生まれて数十年。ダンジョンにはモンスターと言う未知の生物がおり、そのダンジョンで戦う者を『冒険者』と言う。
ダンジョンは放置すると氾濫し、モンスターが溢れ出すのでそれを止めるために冒険者が必要になる。
もちろん、ダンジョンはそれだけでなく、新エネルギーとして使われている魔石やスフィアボール、財宝などが眠っており、それを求め冒険者になる者もいる。
その冒険者が必要とするスキル、技能や職業などを手に入れるためのカプセル型のボールが『スフィアボール』で、スキル・ジョブボールとも言う。
その中でも『鑑定』で中身の分かっている物は高額で売り買いされる。
それを扱っているのがスフィアボール屋だ。
ウチに置いてあるスフィアボールで一番高額なのが『銀のスフィアボール』で『炎』(ファイアボールなどの魔法を覚える)、他のスフィアボール屋の様にレアな『収納』があったり、何か特別な物はない。
この店をやっていた爺ちゃんが俺に継いでくれと頼むから継いでみたが、こんな田舎のスフィアボール屋に客が来るわけがない。
若い奴らがたまに持ってくる青いスフィアボールを二束三文で買い取るくらいだ。
国からの補助がないととっくに潰れている。
『スフィアボール』にはランクがある。
青→赤→銀→金→虹の順にレア度が高くなる。それは見た目でわかる分け方である。
虹のスフィアボールなんて、見つけた冒険者は億単位の金か、自分で使うか選択するくらいだ。
それ以外では『鑑定』と言うレアなスキルを使い、『スフィアボール』に何のスキルが入っているのかを調べる。
『鑑定』には『魔力』と言う不思議な力が必要で、そんなに連発して『鑑定』を使えない。
だから『鑑定』は高いお金を払い、『鑑定士』にお願いするのが普通になる。
ただ、例外があり1番最低の青いスフィアボールからは、たまに赤や銀、金などのスキルやジョブが出ることがあると言う。
青から出るのは、普通だと『達筆』や『無臭』と言った使えないスキルだ。
わざわざ『鑑定』を使って調べる人間はいない。
しかもスキルを持てるのは限りがある。
一人一人違うが、貴重なスキル枠に青いスフィアボールを使って一発逆転を狙うような人間はいない。
俺も6個のスキル枠があるが、まだ一つも埋まっていない。
ジョブ枠すら埋まってない、俗に言う『ノーマル』という人間だな。
スフィアボール屋には必須の『鑑定』だって、高額だし数に限りがある。
で、爺ちゃんから譲り受けたこんな寂れた商店街にあるスフィアボール屋に、そんなレアなスフィアボールは無い。
青いスフィアボールなら沢山、そこに積み上がっているのだがな。
爺ちゃんが何を考えて俺にこの店を任せたのかわからないが、今のところ買いにくる客はおらず、『暇』である。
「……しゃーない。掃除でもするか」
『暇は人をダメにする』と言うが、本当にその通りだと思うので、掃除を始める。
パタパタとはたきをかけ埃を落とし、掃除機を取り出そうとすると、奥の棚に箱を見つける。
取り出してみると俺の名前の入った古い箱があった。
「なんだこれ?」
とりあえずカウンターに置くと、掃除の続きをする為、掃除機出して店内を掃除する。
「おし!スッキリしたな!」
小さな店だが、やはり綺麗にしておくのは店長としての勤めだからな!
いつものカウンターの中に入り椅子に腰掛ける。
「あ、そういえばあったな」
カウンターの上に置いてあった俺の名前が書いてある箱を開けてみる。
青いスフィアボールと手紙が入っていた。
『宗治郎、この箱を見つけたと言うことはキチンと店を見てくれているということじゃな。本当にありがとう。このスフィアボールは宗治郎に絶対必要な物になるので使うといいだろう。 お爺ちゃんより』
俺の名前は近衛宗治郎、爺ちゃんがつけてくれた名前らしい。
「爺ちゃん……流石に青玉は」
青玉(青いスフィアボール)は『鑑定士』でも、鑑定を嫌がるほどにカスしかでないと言う。なので青いスフィアボールは例え『金』の可能性があっても、『鑑定』される事はまず無い。
本当にこれが必要になるのか?
「ふぅ……爺ちゃんの事だ。考えても仕方ないし、スキル枠が一つ埋まるだけだ!」
このままスフィアボールを使わずにいるよりも爺ちゃんを信じて使ってみる。
『パカッ』とスフィアボールを開ける。
すると黒い煙が出て来て体の中に吸い込まれていく。
「は?う、うそだろ?う、ガアァァァァ!!」
俺は苦しくて椅子から転げ落ちると、カウンター内の床に倒れ込み胸を抑えて蹲る。
「う、……く……」
目が覚めると、なんとかカウンターに手を伸ばして起き上がる。
外は暗くなっていて、時計を見ると22時をさしており、昼前から今までカウンター内で倒れたままだったようだ。
「はぁ……こんなに苦しむなんて……なんのスフィアボールだったんだ?」
『ダンジョン』が出来てから、生まれてくる子供には『ステータス』と言うモノが見えるようになった。
『ステータス』には、ジョブ、スキル、など自分の能力がステータスボードとして可視化される。
最初からジョブを持って生まれてくる子もいるそうだ。
まぁ、そんな奴は珍しいがな。
「ステータス、ん?えぇ!……嘘だろ?」
カウンターでステータスボードを見た俺はカウンターの椅子に座ってもう一度確かめるようにステータスボードを確認する。
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近衛宗治郎
Lv6 ジョブ()
スキル
神眼 () ()
() () ()
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「は……ハハッ、爺ちゃん、これはビックリしたぞ」




