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【完結】「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢、放蕩王子の管理を行っていたら、なぜか溺愛されています。~どうやら私の無自覚なコマンドは、彼にとって劇薬だったようです~  作者: ましろゆきな
番外編:氷点下夫婦と、首輪と手錠のロイヤルウェディング

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第十四話(番外編①):氷点下夫婦の、極めて非合理的な夜

 ローゼンバーグ公爵邸、真新しい主寝室。

 国中が注目した「武力」と「情報」の最高峰による戦略的結婚式は、一切の隙もなく完璧な形で幕を閉じた。


 豪奢な天蓋ベッドの端に腰掛けるシャルロットは、最高級のシルクのネグリジェを身に纏いながら、微かに震える指先を必死に隠していた。


(……落ち着きなさい、シャルロット。これは互いの利益のための、極めて合理的な契約結婚。今日の初夜も、強固な跡継ぎを残すための重要なタスクの一つに過ぎないわ)


 いつも通り扇子を開こうとして、今は手元にないことに気づき、小さく息を吐く。

 そこへ、寝室の扉が開いた。


「待たせたな、シャルロット」


 湯浴みを終え、ゆったりとしたガウン姿で現れたアレクセイ。

 普段の隙のない軍服姿とは違う、少し乱れた銀糸の髪と、高位Dom特有の圧倒的なオスとしての色気が、夜の静寂と共に寝室を満たしていく。


「い、いえ。閣下も、本日は長丁場でお疲れ様でしたわ。……さあ、それでは早速、公爵家の跡継ぎを作るための『極めて効率的な作業』を始めましょうか」


 シャルロットは気丈に微笑み、あくまで「ビジネスパートナー」としての顔を保とうとした。

 しかし、ベッドに近づいてきたアレクセイは、彼女の隣に腰を下ろすと、ふっと低く、そしてひどく甘い声で笑ったのだ。


「……効率的、か。君は本当に、可愛い嘘をつく」

「えっ……? か、可愛い、だなんて、非論理的な――きゃっ!?」


 次の瞬間、アレクセイの太く逞しい腕がシャルロットの腰を抱き寄せ、彼女の身体はふわりとシーツの上へと押し倒されていた。

 上から覆い被さってくる、巨大な要塞のような身体。

 逃げ場を完全に塞がれ、シャルロットの鼓動が一気に跳ね上がる。


「あ、アレクセイ、様……?」

「今日はもう、騎士団長も情報長官も関係ない。……俺は今、ただ君という女性を抱きたくてたまらない、ひどく余裕のない一人の男だ」


 アレクセイの大きな手が、シャルロットの頬を滑り、彼女の豊かな髪をすくい上げる。

 普段の冷徹な彼からは想像もつかないほど、その瞳には熱く、独占欲に満ちた炎が揺らめいていた。


 Domとしての強烈な庇護欲と、一人の男としての情欲。それが、Normalであるシャルロットを絶対に壊さないよう、ギリギリの理性で抑え込まれているのが伝わってくる。


「……君が『ビジネス』や『合理性』の仮面を被って自分の照れを隠すというなら、俺は喜んでそれに付き合おう。だが、今夜だけはその仮面を……俺の腕の中で、全部溶かしてしまえ」

「っ……ぁ、」


 アレクセイの唇が、シャルロットの首筋に落ちた。

 ビクンと身を震わせる彼女の肌に、丁寧に、そして熱を帯びた口付けが何度も、何度も繰り返される。


「閣下……だめ、そんな……頭が、おかしくなってしまいますわ」

「俺はとっくに、君のせいで狂わされている。……シャルロット、愛している。俺の妻、俺の最愛」


 耳元で囁かれる甘すぎる告白に、シャルロットの中で張り詰めていた「理性の糸」が、ついに音を立てて千切れた。


「……ずるいですわ。アレクセイ様」


 シャルロットは潤んだ瞳で彼を見上げると、自分からその逞しい首に腕を絡め、彼を引き寄せた。


「わたくしだって……ずっと、貴方に抱きしめてほしかったのに」


 素直で可愛らしい本音に、アレクセイは目を細め、限界を迎えたように深く、奪い尽くすようなキスを落とした。

 戦略も計算も、もはやそこには存在しない。

 ただ互いの熱に絆され、二人の完璧な共犯者は、甘く甘く溶け合うような非合理的な夜の底へと堕ちていった。

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