第十話:すべてを貴女に捧げる
互いの吐息も快感も、何もかも解けて混ざっていくような深いキスを繰り返す。
荒くなる息を交わしながら、二人はそのまま寝台へともつれ込んだ。
フェリクスの鍛え上げられた身体の上に跨ったベアトリスは、軽く舌なめずりをして自分の長い髪を耳にかけ、忙しなく上下を繰り返すフェリクスの胸に指を這わせる。そして、彼のシャツのボタンを一つずつ外していった。
ゆっくり動く指の微かな刺激に、フェリクスの身体はしなり、大きく息を呑む。
――次の瞬間、彼はベアトリスの両腕を掴み、ふわりと上下が入れ替わった。
「ごめんね、ベア。――ちょっと我慢ができない」
いつものような軽い口調だったが、ベアトリスを見下ろす黄金の瞳には濃い欲望が灯り、ひどく深い色が揺れていた。
今度はフェリクスから、相手を呑み込むような深い口付けが落とされる。
「ベア……ベア……」
口付けの合間の浅い息が、愛おしげに、確かめるように彼女の名前を繰り返す。
「……ええ……ここに、いるわ」
ベアトリスは自分の存在と所有権を示すように、フェリクスの首にするりと両腕を伸ばして絡めた。その指先が、彼の喉元で冷たく光るブルーのチョーカーをそっとなぞる。
少し驚いたようにフェリクスは目を見張ると、甘く、うっとりとした表情を浮かべた。
「ベアは……僕を煽るのが、本当に上手だ」
フェリクスの白く長い指が、ベアトリスの夜着の下へと滑り込む。
臍から腰、そして胸の双丘へ。しっとりとした肌の手触りを確かめるように、熱を帯びた手がなで上げていく。
「……んっ……ぁ……」
肌が触れ合うたび、フェリクスの抱えきれないほどの熱い感情と欲求がリンクを通じて流れ込んできて、ベアトリスは堪えきれず、甘い声を漏らした。
「可愛い声……食べちゃいたくなるよ」
「――っ!」
浅い息を繰り返すフェリクスは欲望の色を隠さず、ベアトリスの白い首筋に歯を立てた。
甘い痛みがベアトリスの身体を痺れさす。
「……んっ、……いいわ。……あなたの全部を、私が受け止めて、……あげる」
赤く色づいた唇から、甘く蕩けるようなコマンドが紡ぎ出される。
フェリクスを見上げる薄い水色の瞳も潤み、ベアトリスの熱い心を伝えていた。
ぞくりとした快感がフェリクスの背筋を這い上がる。
「ああ、僕だけの御主人様。――僕の全てを貴女に捧げるよ」
恍惚として熱に浮かされるように呟くとフェリクスは自分とベアトリスの服を全て取り去り、互いの身体を重ねた。
触れるところ全てに唇を落し、赤い疵の花を咲かせていく。
「……あ……んっ……!」
最も敏感な部分に口付けられ、ベアトリスの口から甘い吐息が漏れる。
「もっと聞かせて。……貴女の甘い声は僕だけのものだ」
独占欲の炎が昏く揺らめく瞳がベアトリスを絡め取る。
両手の指を絡めて、隙間なく互いの体を重ねて、一つになる。
「ベアトリス、愛してる。……君しか、要らない」
「ああ、フェリクス、私も愛してるっ!」
感覚も感情もすべてがリンクし、互いの境界が溶け合い、曖昧になってわからなくなっていく。
二人だけの世界がここにあった。




