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シナリオ1 ドラゴンの洞穴 4

登場人物紹介:今回のエピソードに関わる者達。


ユキヒロ:主人公。地球から召喚された転移者にして冒険者ギルドマスター。

ディア(ディアスポラ):人造人間の少女。ギルドの従業員。

ホルスナ:牛獣人の女戦士。前ギルド時代から所属している脳筋。

エンク:麒麟獣人の剣士。金が要るのでパーティに参加。

ゴリケーン:トロールのシーフ。運悪く人里で足止めを食らって参加。

――洞穴の中――



 魔法の照明を宙に漂わせ、洞窟の中を慎重に進む一行。

 先頭は洞窟に入るやマントを脱いだ盗賊(シーフ)のゴリケーン。


 途中で壁が崩れ、頭上に落石が降ってきた。

 だがゴリケーンはそれを片手ではね除ける。岩を叩いて腕は傷ついたが、皮膚は固く出血にはいたらない。再生能力を持つ種だったので、傷自体もすぐに塞がってしまった。


「天然の罠か。だがもう大丈夫だぞ」


 後続にそう言い、彼はさらに奥へと向かう。


(解除したかのように言うけど、ちょっと違うような……)


 ユキヒロは少し違和感を覚えたが、それでもゴリーケンに着いて行った。



――大きな空間――



 ほどなく一行は広がった場所に出た。

 そこにも水流があり、巨体が複数出てくる。体長4メートル前後の、水陸両棲の竜だ。知能が低く狂暴な種であり、一行を見るや吠え声をあげてかかってきた。


「ヒャッホウ! 行くぞー!」


 両手斧を振り上げてホルスナが突撃する。エンクも、ゴリケーンも。


 ホルスナが振り回す斧が次々に竜を打つ。一度の振りで複数の敵を捉えるような軌道を常に描いており、多数の敵相手でも大振りの隙を狙われない技術を見せていた。力に頼った戦い方ではあるが、それは技が拙いという意味ではない。


(流石は古参の上級だったというだけある)


 ユキヒロは素直に感心した。


 エンクの剣技にはまた違う驚きがあった。剣を抜き、構え、斬る。それだけの基本的な物なのだが――速度が異常なのだ。剣速も、斬る時の体捌きも。剣を構えて間合いに踏み込んだ途端、竜は斬られて身をよじっている。


(お、俺に見えない!?)


 ユキヒロは戦慄さえした。


 ディアは負傷した竜を次々に撃ち抜いてトドメをさす。着弾した傷口で稲妻が弾け、竜は断末魔をあげてゆく。

 この世界の銃は魔法仕掛けの武器で、弾が当たると破壊の魔力が敵へ直に叩き込まれる。機械的な道具で補助された攻撃魔法とも言えよう。

 そしてディアの腕前は……


(乱戦の中に何発撃っても味方に誤射しないなんて)


 ユキヒロはなぜ彼女がギルド施設の守りを任されていたのかを知った。


 ある意味で一番の驚きはゴリケーンだった。竜の頭を鷲掴みにすると、相手が爪をたてて抵抗するのも構わずに抑えつける。そして……


「バックスタブ。バックスタブ」


 呟きながら敵の背中に蛮刀を突き立て息の根を止めた。

 盗賊には隠れて敵の視界外から奇襲をかける戦闘方法があるが……


(想像とだいぶ違うやり方だな?)


 ユキヒロが考えている間に、ゴリケーンは次の竜を鷲掴みにしていた。


 明らかに冒険者側が圧しているが、竜も激しく抵抗する。下級の亜種とはいえ竜族の魔物は厄介なモンスターだ。毒のブレスも吐くし、牙や爪は鉄板を切り裂き、尾は石ぐらいなら軽く砕く。今戦っている相手も、初級冒険者のパーティなら1体で全滅させる力は有るのだ。

 ホルスナの肌が引き裂かれ、ゴリケーンが毒液を浴びた。


「やはりドラゴン相手だと無傷ではすみませんね。新主人、回復魔法が使えるならお願いします」

「あ、ああ」


 銃を撃ち続けるディアに頼まれ、ユキヒロは一言二言(ひとことふたこと)の短い詠唱を行う。それで発動する呪文は――


「……【レンジヒール】!」


 ユキヒロから透き通った緑色の光が放たれ、粒子となって四方に飛ぶ。それは味方へと降り注ぎ、その負傷を見る間に癒した。


「おお、範囲回復! やるじゃん!」


 賞賛しながら笑顔を向けると、ホルスナは再び竜へ斧を叩き込む。他の二人も回復魔法を受けながら攻撃を続けた。


「流石ですね新主人。では引き続き頼みます」


 そう言ってディアは次の標的に狙いをつける。


(ん? 俺、ヒーラー?)


 自分の担当を意外に思いながらも、ユキヒロは回復魔法を放つ事に徹した。


 やがて最後の竜も倒れ、敵は全滅した。



 多くの竜には金品宝石の輝きを好む性質がある。

 洞窟の片隅でパーティは財宝の小山を発見した。そこへゴリケーンが手を伸ばす。一番上の金の冠を持ち上げた途端、結ばれたワイヤーにより何かが外れる音がした。


 ゴリケーンの腕に矢が刺さった。


 彼は平気な顔で矢を抜く。血は出ていたが、すぐに止まって傷が塞がった。


「毒矢の罠が仕掛けられていたぞ。もう安全だがな」


 毒も強靭な生命力によって効果は無かったのだ。


(解除したかのように言うけど、ちょっと違うような……)


 ユキヒロは少し違和感を覚えたが、ゴリケンーンは気にせず宝飾品を袋に詰め込み始めた。他のメンバーは竜の屍から売り物になる部位を【素材】として解体している。

 納得いかない事はおいておいて、ユキヒロも解体を手伝い始めた。

 そんな作業中、物陰から飛び出した物がユキヒロの肩に乗った。


「これは!?」


 驚くユキヒロ。

 まるで細長い魚だ。が、小さくびっしり生えた牙は鋭く、目玉は双眼鏡のように飛び出ている。


「竜の一種ですね」


 ディアはそう言うが、いまいち納得し難い。


「足は無いしヒレがあるんだけど」

「そういう種もいますよ」


 あくまでディアはそう言うが、やはりユキヒロには空飛ぶ魚にしか見えなかった。

 その小竜はユキヒロの肩から動こうとしない。


「マスターの肩で落ち着いようだが……」

「新主人だけ竜を攻撃しませんでしたから、安全地帯だと刷り込まれたのかもしれません」


 エンクの疑問にディアが推測する。


「向かってこないならどうでもよかろう」

「だな!」


 興味なさそうなゴリケーン、それに同意するホルスナ。

 ディアは頷いた。しかしその言い分は……


「ではギルドで飼う事にしましょう」

「え?」


 驚くユキヒロ。他の3人も怪訝な顔をする。

 しかしディアは機嫌良く指で小竜の顎をつついていた。


(自分が飼いたいだけなんじゃ……)


 そう思ったが、ユキヒロは口に出さずにおいた。



 その後。

 何度か同じような空洞に出て、様々な下級の竜と一行は戦った。

 そして……



――洞穴の奥底――



 空洞を繋ぐトンネル自体がだんだん広くなる。

 先へ険しい目を向けながらゴリケーンが呟いた。


「そろそろ大物が近いな」

極めてオーソドックスな探索回。そこらのRPGでだいたい再現可能。

主人公が回復担当しているが、元ネタは昔のDOラクエの攻略例に載っていたパーティ例「勇者・戦士・武闘家・魔術師」。勇者は回復魔法使えるんだから薬草も併用すれば後は火力でゴリ押せるだろ、という前提だった。

個人的には「勇者・遊び人・盗賊・魔法使い」→転職→「勇者・賢者・賢者・魔法使い」がお勧めだと思うが。

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