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シナリオ1 ドラゴンの洞穴 2

登場人物紹介:今回のエピソードに関わる者達。


ユキヒロ:主人公。地球から召喚された転移者にして冒険者ギルドマスター。

ディア(ディアスポラ):人造人間の少女。ギルドの従業員。

ホルスナ:牛獣人の女戦士。脳筋。

 ホルスナは食堂へ入っていく。そして登録してある二人の冒険者へ呼びかけた。


「おい、話は聞こえているんだろ。行こうぜ!」


 その片方、大柄な男を見上げて呟くユキヒロ。


「というか魔物に見えるんだが、この人」

「ああ。トロールだ」


 答えたのは骨付き肉を食っている、その男自身。

 座っていてなおユキヒロより頭が上にあり、屈強な全身は石か岩のよう。大きな口内には獣のような牙が並んでいた。


「いや、その、なんで魔物がここに?」

「別にオレは魔王軍ではないからな」

「へぇ。悪の組織に入ってなければ魔物でも人里で暮らせるんだな」


 トロールの言い分にユキヒロは安心するが……


「いいえ。普通そんな事はありません」

「ないな」


 ディアははっきり否定し、トロール自身も同意する。


「じゃあなんでこの街に?」

「祖父が危篤になったんで、魔王軍に入隊していた弟を呼びに、この街を攻めていた部隊を訪れたのだ。それが終戦と重なってしまって、部隊は統制なく散りぢりになるわ、そこに人間の部隊は追い打ちかけてくるわ……弟ともはぐれるしこの街の軍に捕まるしで散々な目にあった」


 ユキヒロへのトロールからの答えを聞き、ディアは首を傾げる。


「よく処刑されませんでしたね?」

「尋問班に嘘を見抜く魔法の使い手がいたから、逆に魔王軍とは無関係を証明できた。そうでなければ斬首だっただろう。まぁ釈放はされたが無一文で、仕方なくここにいるが」


 トロールは面白くなさそうに肉を食い千切った。

 身の上話をきいたホルスナが陽気に笑う。


「よし! なら依頼をこなして報酬を貰おうぜ」

「その依頼、現物払いでアイテム1個なんだろう? どうしろと」


 トロールは金が欲しいのだ。

 ユキヒロは少し考えて提案した。


「魔剣をギルドが買い取るよ。鑑定してでた適正な金額で。そこから現金で支払えばどうかな?」


 ギルドの運営費を国から受け取っているので、それを利用しようという考えだ。

 依頼者と冒険者、双方の利益をできるだけ守るのもギルドの役目であり、だからこそ利用されるという一面もある。

 トロールが初めて体の向きを変え、ユキヒロを正面から見た。


「それは助かる。この盗賊(シーフ)のゴリケーンも参戦しよう」

「よろ……盗賊(シーフ)!?」


 戦士と思い込んでいたので驚くユキヒロ。

 登録書類を見ればわかる事ではある。

 トロールが盗賊(シーフ)に就いてはいけないという決まりは無いのだ。

 まぁ種族の強みである膂力や体格が活きる職では無いが。


 ホルスナはもう一人へも声をかけた。


「後はアンタだぞ」


 背を向けて酒を飲んでいた男が、徳利をテーブルに置いて振り向く。


「俺も金にならんならと敬遠していたが、ギルドが出すならやらせてもらおう」


 男は20代半ばほど、長い黒髪に細く鋭い目の、スマートで端正な顔立ちだった。その頭には枝分かれした鹿角があるので、彼も獣人なのだろうが……


(こっちはケイト帝国の人か)


 ユキヒロがイムブック国を挟むもう一つの大国からだと判断したのは、そのケイト帝国が中華風の意匠を好む事を既に知っていたからだ。

 男の服装は漫画等で見た、昔の中国の衣装にそっくりだった。


「助かります、よろしく」

麒麟獣人(ワーキリン)の剣士、名はエンク。よろしく」


 頭を下げるユキヒロに、男も軽く一礼する。

 二人の男の了解をとった所で、ホルスナがユキヒロに訊いた。


「で、あんたは?」 

「新任のギルドマスター、ユキヒロ。魔法戦士です」


 かくかくしかじかと、ユキヒロは自分がギルドマスターになった経緯を話した。

 旧高位メンバーがことごとく行方不明、全滅が推測されている事に、ホルスナは衝撃を受けたようだった。だがぎりぎりと拳を握ると、大きな声でユキヒロに言う。


「こうなったらいなくなった皆のぶんまで、アタシもギルドの再建に協力だ! 新マスター、しっかり頼むぜ!」


 彼女は現メンバーを見渡した。


「戦士2人に盗賊に魔法戦士に銃士(ガンナー)か。魔物の巣にカチコミかけるのに必要な役は揃ってそうだな!」

銃士(ガンナー)?」


 首を傾げるユキヒロ。その横でディアが自分を指さす。


「私です。初めて会った日にライフル銃を持っていたでしょう。まさか拷問吏か乾物屋だとでも思っていたんですか」


「よーし、出かける前にひとっ風呂浴びて飲んで食って寝てまた食って行くかあ! ディア、久しぶりに一緒にはいるぞ」


 威勢よく叫び、ホルスナはディアをひょいと抱えて宿の方へどすどすと去って行く。

 それを見送るゴリケーンが呟いた。


「結局いつ行くのだ」

「明日だろう。多分な」


 そう言うとエンクはまた一人で酒を飲み始めた。


(大丈夫かな、これ……)


 いろんな不安がユキヒロにはあるが、まぁ賽は投げられたというヤツだ。



(盗賊ゴリケーン)

挿絵(By みてみん)

なお拷問吏も乾物屋も昔プレイしたTRPGに職業としてデータが載っていた。

プレイヤーが選択する事を想定していたかどうかは知らんが。

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