シナリオ3 トカゲ王の山 2
登場人物紹介:今回のエピソードに関わる者達。
ユキヒロ:主人公。地球から召喚された転移者にして冒険者ギルドマスター。
デメキン:ボウエンギョそっくりの小さな竜。冒険中は主人公の肩にいる。
ディア(ディアスポラ):人造人間の少女。ギルドの従業員。
レイ:ユキヒロの持つ魔剣レイクドーターの分身体。十代の少女の姿をとる。
ドゴーン:ドワーフ族の屈強な戦士。
ボテクル:ドワーフ族の屈強な神官。
クレイジ:ドワーフ族の屈強な機械技師。
用語解説
ケイオス・ウォリアー:この世界に普及している、魔法仕掛けの巨大ロボ。
――国境を少し出た所にある山岳――
『あれが我らの心の故郷、ソドワ山です』
ドワーフ達の乗るケイオス・ウォリアー、重戦士型機の白銀級機Sヘビーデストロイヤーが向かいの山を指さした。その大きな山にはいくつもの洞窟が口を開けており、その過半数へと山道が繋がっている。
最も大きな洞窟は身長18メートルのケイオス・ウォリアーでも楽に入る事ができる大きさだ。それを兵士型機・Bソードアーミーの操縦席から眺めるユキヒロ。
「あの一番大きな洞窟が目的地ですか?」
『いえ、その洞窟はケイオス・ウォリアーを製造・整備・保管するための兵器用工房です。横の穴が坑道。我らが向かうはその上の穴の住居区で、支配者の元陸戦大隊親衛隊マスターリザードはその奥におります。今ではキングリザードと名乗っておるとか』
目的地の洞窟とは別だったようだ。
ドワーフの説明を聞いたユキヒロは逆に訊き返す。
「敵がケイオス・ウォリアーを何機持っているかわかりますか?」
すぐに答えが返ってきた。
『わかりません。兵器用工房では最大16体まで整備可能ですが……』
「最悪、2対16の戦いになりますね」
座席の後部空間で事もなげに言うディア。
ユキヒロは溜息をついた。
「素直に忍び込もうか」
――山道――
できるだけ岩陰に隠れながら居住区洞窟へ向かう一行。山道に魔王軍残党の気配は全くない。
(巡回や見張りもいないのか?)
神経をとがらせるユキヒロだったが、やがて理由がわかった。洞窟の入り口脇に立っていた武骨な石像……一行が近づくとそれが動き出し、巨大な拳で叩き潰そうと襲いかかってきたのだ。
ストーンゴーレムを番人として置いてあったのである。
「来ましたぞ!」
ボテクルが叫ぶと、ドゴーンが巨大な金槌を振り上げた。
「ワシが露払いいたしまする!」
ドゴーンが振り回すと、金槌の頭から鋭いドリルが生えて高速で回転する!
ドワーフの強い膂力で叩きつけられたそれは、敵の硬い石の体に容赦なく食い込み、削り、抉った!
「あの武器は!?」
思わず大声をあげるユキヒロ。するとクレイジが不敵に笑う。
「ククク……この機械技師Dr.クレイジが造ったドリルハンマー。地獄の貫通力で敵の息の根を止める武器ですぞ」
直後、金槌が大爆発!
ゴーレムは砕け、ドゴーンが煙を上げながら吹き飛んで転がった。
クレイジが不敵に笑う。
「攻撃する度に8分の1の確率で爆発を起こし、敵を粉々にします」
「使用者が巻き添え食ってますよ!?」
思わず大声をあげるユキヒロ。
ボテクルが回復魔法でドゴーンを治療していた。頑健なドワーフ故に致命傷には至らなかったようだ。
――居住区――
広く長い洞窟に無数の支道が繋がる。その支道が家や店舗になっている、かつてのドワーフの地下街。
ユキヒロ達がそこを進むと、支道の一つから魔物の部隊が現れた。オークメイジ率いるオーク兵の集団である。
「来ましたぞ!」
ドゴーンが叫ぶと、ボテクルが巨大なフレイルを振り上げた。
「ワシが露払いいたしまする!」
「大丈夫なんですか?」
ディアが訊いたが聞こえなかったのか雄叫びをあげて突撃するボテクル。
ボテクルが振り回すと、フレイルの鎖が急速に伸びてオークメイジめがけてすっ飛んで行く!
ドワーフの強い膂力で叩きつけられたそれは、後衛にいて油断していた敵の頭をまともに打ちのめした!
「あの武器は!?」
思わず大声をあげるユキヒロ。するとクレイジが不敵に笑う。
「ククク……この機械技師Dr.クレイジが造った弾丸メイス。伸縮チェーンで遠くの敵を撲殺する武器ですぞ」
直後、フレイルが大爆発!
オークどもはメイジも兵士も爆炎の中で断末魔をあげ、握りが爆発したボテクルも煙を上げながら吹き飛んで転がった。
クレイジが不敵に笑う。
「攻撃する度に8分の1の確率で爆発を起こし、敵を粉々にします」
「なんで手元からなんです!?」
思わず大声をあげるユキヒロ。
ボテクルが回復魔法で自分を治療していた。頑健なドワーフ故に致命傷には至らなかったようだ。
「その回復、無駄手間じゃないですか?」
ディアが訊いたが誰も応えなかった。
「ねえ、私の出番まだ?」
いつの間にか魔剣レイクドーターが分身体レイを造り出していたが、その質問にも誰も応えなかった。
――大市場――
ドーム状の巨大な空洞に無数の支道が繋がっている空間。ドワーフ達によればこれこそがかつて繁華街で、経済の中心だったという。
だがそこには敵の一団が待ち構えていた。オーガーやトロール等の屈強な鬼族の兵士達である。
「来ましたぞ!」
ドゴーンが叫ぶと、ユキヒロが大急ぎで叫んだ。
「もう爆発する武器はやめてください!」
「仕方ありませんな。武器はこの+1モールにします」
クレイジが実に未練がましく言うが、両手持ちの大型メイスを握って敵群へと突撃した。
敵が殺到するや、腰に仕込まれたスイッチを起動させるクレイジ。
途端に鎧から鮫歯状の刃が生え、駆動音をあげて流れるように動く。回転ノコギリと化した刃は接近戦を挑んで来た敵の皮膚を切り裂き、血飛沫と悲鳴をあげさせた!
「鎧にまでギミックを!?」
ユキヒロ驚愕!
しかし直後、鎧が大爆発!
屈強な鬼どもは爆炎の中で断末魔をあげ、クレイジも吹き飛んで来てユキヒロの足元に転がった。
クレイジが息も絶え絶えながら笑う。
「ククク……この機械技師Dr.クレイジが造ったブレードプレート……近づく敵を八つ裂きにするが毎ターン4分の1の確率で爆発し敵を粉々にする鎧ですぞ……」
「魔王軍に敗れたのは本当に敵のせいなんですか!?」
思わず大声をあげるユキヒロ。
ボテクルが回復魔法でクレイジを治療していた。頑健なドワーフ故に致命傷には至らなかったようだ。
困った事に敵援軍が現れた。暗黒神官率いる暗黒騎士の一団である。
「ワシらが露払……」
「ストーップ! 俺が! 俺が戦います! ディア子、援護を頼む!」
動こうとしたドワーフ達へ大声で制止をかけ、ユキヒロは大急ぎで敵へと突撃した。
敵の剣を先日購入したヒーターシールドで的確にブロック。
魔剣レイクドーターを振るい敵を切り伏せる。
暗黒神官の放つ魔法に己も呪文で対抗、光弾で敵を撃ち抜いた。
後衛からディアが援護射撃して敵を撃つ。着弾した箇所で稲妻が迸り、食らった暗黒騎士が倒れた。
ユキヒロはアシストを受けながら、確かな技量で手堅く敵を討ち取っていった。
その一方。
ドワーフ達は背嚢をガサガサと探っていた。
「次はこのボンバーアックスにするか。破壊力ならNo.1ぞ。爆発の確率は16分の1だが威力は今までの2倍……」
「却下ア!」
レイがドワーフ達の頭上に怒鳴った。
(ドワーフ神官ボテクル)
ここを書いた後で女ドワーフを出すのを忘れていた事に気づいた。
前々回が全員女だったからまぁいいだろう。




