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シナリオ2 運命の林 6

登場人物紹介:今回のエピソードに関わる者達。


ユキヒロ:主人公。地球から召喚された転移者にして冒険者ギルドマスター。

デメキン:ボウエンギョそっくりの小さな竜。冒険中は主人公の肩にいる。

ディア(ディアスポラ):人造人間の少女。ギルドの従業員。

ヒルド:神官戦士。元気で威勢のいい少女。駆け出し冒険者パーティ【戦乙女の聖槍】リーダー。

ロータ:魔術師。内気な少女。【戦乙女の聖槍】所属。

ソグン:盗賊。物静かな少女。【戦乙女の聖槍】所属。


用語解説

ケイオス・ウォリアー:この世界に普及している、魔法仕掛けの巨大ロボ。

 新たに現れたのは2機のケイオス・ウォリアーだった。

 その片方、両手槍の騎士型機から通信がとぶ。


『マスター! 助けに来たわ!』

『新主人とデメキン、無事ですか?』


 こちらは見慣れた兵士機からディアの声。

 味方の救助が間に合ったのだ。


『なんだコイツラ? 邪魔すんじゃねェ!』


 ゴブリンチーフがいきり立って襲い掛かる。

 それをヒルド機が受け持つ横を、ディア機がユキヒロの乗る機体のすぐ側へ抜けて来た。膝をついてハッチを開け、操縦席にいるディアが呼び掛ける。


「さ、こっちに乗ってください」

「出番は無さそうだけどな……」


 ユキヒロは空洞の戦況を見て言った。


 ゴブリンチーフはモンスターランク4がつけられており、ランク2の新米冒険者一人には荷が重い魔物だ。だがガタのきたオンボロと白銀級機(シルバークラス)の差は、それを完全に逆転させていた。

 またハッチを開けたディアへ残るゴブリン達が迫ろうとしたのだが、そこへソグンが斬り込み、彼女をロータが支援して妨げていた。

 少し考え、ユキヒロは生身でゴブリン達の方へ斬りかかる。


 ゴブリンチーフ機が槍で貫かれたのは、そのすぐ後の事だった。



――後日――



 ユキヒロは事務室で今回の依頼の結果を書類に記していた。


(ゴブリンの全滅を確認後、巨大扉の一つが崖の外へ出る物だと判明。そこから村へ帰還した)


 ゴブリン達はケイオス・ウォリアーの部品を運び込める場所としてあの大きな空洞を選んだのであって、ユキヒロ達が見つけた木の砦は裏口だったのだ。


(依頼は無事成功。村人達は大変感謝していた。【戦乙女の聖槍】三人を冒険者ランク3に認定する)


 その時の三人の、晴れ晴れとした誇らしい笑顔を、ユキヒロは当分忘れられないだろう。

 思った以上に手強い敵だったが、それも彼女達には良い経験になった筈だ。


(エルフとドワーフの子供達はそれぞれ最寄りの部族。互いの中間点にある林を遊び場にしていたらしい。生かされていたのは、両部族の情報を吐かせるため)


 長時間暴力に晒された子供達の心の傷は深く、ケアについては心配である。だが親元に帰した以上、ユキヒロにできる事はもう無い。

 部族の情報をゴブリン達が知りたがっていたのは、襲撃計画でもあったのだろうか。だがゴブリン達を全滅させた以上、もう気に病む事も無いはずだ。


(ゴブリン達がため込んでいたガラクタや機体はギルドで買い取る事になった。ガラクタは街の商人へ売り、それを【戦乙女の聖槍】へ支払う)


 ガラクタと言っても兵器の部品なので、商工業のギルドへ売る事ができた。

【戦乙女の聖槍】にとっては予想外の収入になっただろう。冒険者と各種流通の橋渡しも冒険者ギルドの大事な役目である。

 そこでユキヒロは羽ペンを置いた。「ふう」と溜息をつき、物思いにふける。


(ソードアーミーと白銀級機(シルバークラス)の支払いはいつになるやら。流石に巨大兵器2機の代金は今のギルドには無い。国からの支給を待つしかないな。申し出は明日にでも早馬で……)


 回収したケイオス・ウォリアー2機を、新米冒険者パーティでは維持できない。またギルドとしてもいずれは手持ちの機体を増やしたくもあった。

 しかしこのタイミングでは買取の代金が用意できない。ギルドが冒険者に借金をするのは避けるべきなので、なんとか早急に工面しなければいけないのだが……


 その時、部屋の扉がノックされた。「どうぞ」と言うとディアが入ってくる。


「新主人。融資の話が来ました」


 驚きで思わず椅子から立ち上がるユキヒロ。


「どこから?」

「ヴァルホル公爵家です。この国では結構な名門武家ですよ」


 ディアは事も無げに言うが、あまりのタイミングの良さにユキヒロは目を白黒させるばかりだ。

 ともかく公爵家の人間が来ているというので、ユキヒロはそれに会う事になった。



――応接間――



「そういう事だったのか……」


 椅子の上で呻くユキヒロ。

 テーブルを挟んだ対面で、奇麗なドレスで着飾ったヒルドが満面の笑顔を見せた。


「ええ、そうよ。融資額はケイオス・ウォリアー2機ぶんね」


 公爵家の娘なら、装備も良い物を用意できる筈である。

 白銀級機(シルバークラス)を個人で所有するのも無い話ではない。


「なんで冒険者やってるの?」


 困惑しながら訊くユキヒロの前で、ヒルドはぐっと拳を握る。


「もちろん修行のためよ。父様が『最初の仕事はベテランに手伝ってもらう事、そうでなければ許可しない』なんて言った時は内心反発してたけど。マスターを見たら納得しかなかったわ」


 そして自らユキヒロの手をとり、握る。


「これからは三人でやっていくけど。敬愛するギルドマスター殿、ちょくちょくよろしくね!」


 天真爛漫な笑みを前にして、ユキヒロも微笑んだ。

 ややひきつった顔ではあったが。



(公爵令嬢ヒルド=ヴァルホル)

挿絵(By みてみん)

乗機:Sホーリーナイト

 指揮官用の騎士型機体。

 槍と重装甲での近接戦が得意だが、魔力増幅度も高めで魔法での遠距離攻撃にも対応可能。


ファイティングアビリティ 130

ウェポンズアビリティ 120

スピードアビリティ 100

パワーアビリティ 120

アーマードアビリティ 130

以前「実家が太いのか」と訊かれて否定していたヒルド。

彼女は「私の父様は引き締まっているから」否定した。

つまり嘘をついたわけではなく、単に言い回しを知らなかっただけなのである。


まぁ蓋を開ければありがちな展開だが、外す必要も無いだろう。

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