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シナリオ2 運命の林 5

登場人物紹介:今回のエピソードに関わる者達。


ユキヒロ:主人公。地球から召喚された転移者にして冒険者ギルドマスター。

デメキン:ボウエンギョそっくりの小さな竜。冒険中は主人公の肩にいる。


用語解説

ケイオス・ウォリアー:この世界に普及している、魔法仕掛けの巨大ロボ。

 空洞の入り口から通信機ごしの声が響いた。


『人間ども! 元魔王軍のゴブリンチーフをナメんなよ!』


 その声でユキヒロは理解した。


(今は野良でも元魔王軍だったか。このガラクタはそこからの物……)


 ゴブリンも知能があり道具を使える。大きな組織に入れば、整備や量産機の操縦に従事する個体も出てくる。

 この集落にはそういった物が何体かいたのだろう。


 ガラクタの陰から伺い、ユキヒロは見た。ゴブリンチーフの乗るケイオス・ウォリアーは最も普及している量産型、巨人戦士のBソードアーミー……ユキヒロも使っているタイプだ。

 しかしガラクタを寄せ集めて組み立てたらしく、装甲版はツギハギだらけ。片手は手首が無いし足の動きはぎこちなく、動く度にどこかできしむような異音が鳴る。


 僅かな期待をこめ、ユキヒロは物陰から攻撃呪文を放った。光弾が敵機の装甲表面に炸裂する。

 その衝撃で敵機はよろめいた……が、すぐに体勢を直す。


『そこか! バカめ、痛んでいても流石にその程度でやられはしねえ!』


 敵機が弩を撃った。巨大な矢がガラクタ山に刺さり、部品が飛び散る。

 吹き飛ばされて転がるユキヒロ。しかしすぐに立ち上がり、洞窟の奥へと駆けだす。

 動く人影を見つけた敵機は迷わずユキヒロを追いかけた。別の場所に隠れている【戦乙女の聖槍】達には気づかずに。



――洞窟最深部――



 よたつく敵機に追いつかれる事なく、ユキヒロは一番奥へ辿り着いた。

 行き止まりに。


(やはりそういう事か!)


 ここに追い込もうとしていた時点で、敵か袋小路だろうと予想はしていた。

 扉はある。しかも3つ。だがどれもケイオス・ウォリアーが通るための、高さ20メートルはあろうという物だ。扉の脇にはコブリンが生身で使うサイズの鍵穴がある。巨大扉の施錠を操作するための物だが、当然、鍵を持っているのはゴブリンチーフだろう。


 幸い、ユヒキロは開錠の魔法が使える。だから鍵を開ける事はできるだろう。問題は巨大な扉を押し開けるのにかかる時間だ。

 追いつかれていないとはいえ、背後から迫る敵機を引き離せてはいないのだ。


(でも考えている暇は無い!)


 ユキヒロはどの扉を開けるか、視線をはしらせた。


 その時、肩にいるデメキンが目を光らせた。そこからサーチライトのように伸びる光が中央扉の脇を照らす。岩壁のようにカモフラージュされていた隠し扉がくっきりと浮かび上がった!


(そうか、デメキンには隠された物を看破する力があった!)


 ユキヒロは扉に駆け寄る。


『行かすかァ!』


 背後で敵機が矢を放った。

 振り向いたユキヒロは回避が間に合わない事を理解した。

 矢は為す術なくユキヒロを潰してバラバラに……


……する筈だった。

 だが矢が床を穿ったのはユキヒロから離れた後方。

 回避が間に合わない筈のユキヒロは仰向けに倒れていた。その手には折れた剣。

 そこまでの経緯をゴブリンチーフは操縦席で見た。

 身を捻りながらユキヒロが剣で巨大な矢を叩き、矢の軌道を僅かに逸らしたのを。それによってできない筈の回避を間に合わせた事を。


(エンクさんとの修行の成果が、出た……!)


 光速剣を防いだ時の感触を思い出しながらユキヒロは身を起こす。

 だが納得いく物ばかりではない。


『んなバカな! ケイオス・ウォリアーの射撃武器を人間が防げる筈ねえだろ!?』


 驚愕がゴブリンチーフの行動を遅らせた。

 その隙に隠し扉に飛びつき、ユキヒロはその向こうへ転がり込んだ。



――隠し扉の中――



 そこも巨大な空洞で、今度こそ行き止まり。隠し扉と巨大扉の二つでさっきの空洞と繋がっている。

 ユキヒロは急いでその二つに施錠の魔法をかけた。開錠か消去の魔法を同等以上の魔力でぶつけない限り、本来の鍵を以てしてもこの扉は開かない。

 持続時間の長い魔法なので、一日ほどはロックされたままだ。


 改めて空洞を見渡すユヒキロ。ここにも沢山のガラクタが転がっていた。

 ただ今までと違って、一機のケイオス・ウォリアーが壁にもたれて座っている。竜の頭のような兜を被り、左右に大きな盾が置いてあった。

 王城での訓練中、ユキヒロはこの世界で普及している主な量産型はカタログで見せてもらった。だが眼前の機体は……


(見た事無い機体だ。量産型じゃないな。なら白銀級機(シルバークラス)?)


 考えていると、巨大扉がガンガンと叩かれ始めた。鍵で開かなくなったので力づくで壊すつもりらしい。

 やはりゆっくりしていられないと見て、ユキヒロは見慣れぬ機体へ乗り込んだ。

 座席で火を入れてみると――


(片腕しか動かない。話は上手くいかないな)


 巨大扉が徐々にたわむ。


(盾があるというだけで、乗っておく理由は十分か)


 扉が破れるまでにはかなりの時間がかかった。

 しかし最後には歪んだ扉が開き、敵機と何匹ものゴブリンが入ってくる。残った物が勢揃いしたのだ。

 ゴブリンチーフは見た。

 修理中の機体が盾を体に被せ、身を守っているのを。


『そんな所に! テメェ!』


 怒りに任せたゴブリンチーフ機の攻撃。剣で何度も動けない機体を叩く。

 しかし盾は頑丈で、ユキヒロは意外なほど衝撃を感じなかった。

 だが攻撃もできない――ユキヒロは通信を送る。


「魔王軍は終わった。もう諦めろ」


 だがゴブリンチーフは攻撃を加えながら叫んだ。


『諦めたからここに引っ越したんじゃねぇか! 魔王軍から持ち出せる物せいいっぱい持ってよォ! 武具はだいたい売ったが、部品がこれだけあれば一機か二機は組み立てられる。そうすりゃまたどこかに売り込める』

「どこか? どこに?」

『テメェは知らないか。魔王軍の残党にゃ、それなりの組織を立て直している奴も一人ならずいるって事を。世界の危機とまでいかない時代にだって、火種も争乱も沢山あるんだぜェ!』


 ゴブリンチーフががなるのを聞き、ユキヒロは不安に思う。


(そんな残党、この国には来ないよな? 本格的な侵攻はされなかったんだし……)


 その時、新たな侵入者達が現れた。

ROボット大戦の切り払い判定にサイズ差は影響しないので人間サイズがMサイズ(身長20メートル前後)の実弾射撃を切り払っても完全に合法。

踏み込みが足りなかっただけ。

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