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シナリオ2 運命の林 2

登場人物紹介:今回のエピソードに関わる者達。


ユキヒロ:主人公。地球から召喚された転移者にして冒険者ギルドマスター。

ディア(ディアスポラ):人造人間の少女。ギルドの従業員。

ヒルド:神官戦士。元気で威勢のいい少女。駆け出し冒険者パーティ【戦乙女の聖槍】リーダー。

ロータ:魔術師。内気な少女。【戦乙女の聖槍】所属。

ソグン:盗賊。物静かな少女。【戦乙女の聖槍】所属。


用語解説

ケイオス・ウォリアー:この世界に普及している、魔法仕掛けの巨大ロボ。

 ギルドの道具屋でユキヒロが提案した通りの道具を買い集める【戦乙女の聖槍】。彼女達を眺めながら、ユキヒロには一つひっかかる事があった。

 彼女達が道具を入れているのは【マジックバッグ】という魔法のアイテムだったのだ。


 この世界にも空間魔法を利用して容量を増やした収納用道具が存在する。だが誰もが持っているような安物でもない。

 本来の数倍の容量・重量は数分の一にする肩かけ紐つき収納箱【マジックボックス】なら中級以上の冒険者パーティが持っている事も珍しくない。だが【戦乙女の聖槍】が持っている袋はその上位品であり、何を入れても重さはほぼ無く、容量もちょっとした物置に匹敵するのが最低ライン。聞いた話では家が入る物さえあるという。

 駆け出し冒険者達がそんな高級品を持っているとは?


「君達の中に実家の太い子がいたりするのかい?」


 ユキヒロがそう訊いても、ヒルドはきょとんとするだけだった。


「いないけど?」


 それを見てユヒキロは黙った。


(演技で騙せるタイプだとは思えないしな……)



――現地手前・林の見える街道――



 数時間後、一同は現場が視認できる所まで着いていた。2機のケイオス・ウォリアーに乗り込んで。

 片方はユキヒロとディアが乗るギルド用機。またユキヒロに懐いたボウエンギョそっくりの小竜もついてきた。ディアが調べた所、ビノキュラドラゴンという種らしい。彼女はこれに【デメキン】という名をつけていた。

 ユキヒロの肩に乗ったデメキンを、座席の後部空間から指で楽しそうにつつくディア。好きにさせておきながら、ユキヒロは横目で隣を歩く【戦乙女の聖槍】所有の機体を見る。


「最初からケイオス・ウォリアーをパーティで所有しているなんて……」


 見慣れない騎士型の機体を見ながら、驚き呟くユキヒロ。


「量産型の戦士型機よりも上等な装甲と武器ですね。白銀級機(シルバークラス)かもしれません」


 ディアがそう言うのを聞いて、ユキヒロの驚きはさらに増す。


 ケイオス・ウォリアーは魔術・錬金術・鍛冶技術で造られた「製品」である。

 何種類もが世間に出回っており、そうした量産品は【青銅級機(ブロンズクラス)】に分類されている。

 だが隊長・指揮官用に特注で造られた一品物の高性能機もあり、それらは【白銀級機(シルバークラス)】に分類されていた。


(彼女達、何者なんだろ)


 ユキヒロが考えていると、通信機からヒルドの声が届く。


『さあ乗り込むわよ! 前進!』

「先に依頼者の村で情報を聞いてからね」

『へ?』


 慌ててユキヒロが口を挟むとヒルドが明らかに戸惑った。

 そんな彼女にユキヒロが説明する。


「林の中のどこで見かけたとか、何匹ぐらいいたとか、これからの行動を決めるためだよ」

『綿密な下調べ……流石はギルドのマスター』


 魔術師のロータの心底感心した声。

 ユキヒロは驚愕した。


「林の中をただうろうろするつもりだったの!?」



――依頼元の村――



 依頼者の村長宅はすぐに見つかった。

 機体を降りた一行は応接間に通される。現場の説明を求めると、発見者の猟師がすぐに連れて来られた。


「半裸だから組織化されてないどこかのゴブリン部族が引っ越してきたのかもしれない。倒した野犬をどこかへ持ち帰る途中だったから、既に巣もあるんだろうな。俺も危ない所だった」


 猟師はゴブリンに見つかり、命からがら逃げ帰ったという。

 村長もちゃぶ台の向こうで頭を下げた。


「頼む! 村に被害が出ないうちに!」

「任せて! 命をかけてやり遂げるわ!」


 ドンと胸を叩くヒルド。

 即答した彼女を見るとこれまでの事を思い出し、ユキヒロは少し不安になった。


(意気込みはあるけど、なぁ……)



――翌日――



 村長宅に泊めてもらって、翌早朝。林の中へディアを除いたメンバーが機体に乗らずに入る。

 向かうは昨日猟師から聞いた目撃地点。

 途中、ヒルドが話しかけて来た。


「私なりに一晩考えたんだけど……昨日はもう遅かったから一泊したのよね。でも照明道具はあるんだから問題なくない?」


 なぜ一泊したのかについては昨日のうちに彼女達へ説明はしてある。だがヒルドは納得しなかったようだ。

 ユキヒロは説明する。


「松明にしろランタンにしろ、照らせる範囲は人間の視界より狭いからね。基本、闇の中で戦うのは仕方の無い時だけなんだよ」


 すると後ろで聞いていた魔術師のロータが目を見張って感心する。


「リスクを最小限にする事に気を配るなんて……流石は上級者」


 それに何と言って突っ込むか考えているうちに、ディアが次の疑問をぶつけてきた。


「ケイオス・ウォリアーに乗っていると足音で気づかれるから徒歩で向かうわけだけど。ゴブリンが逃げちゃうんならそれはそれで良くない?」

「逃げて他所に行ってくれるならね。でも俺達がうろついている間、ただ隠れるだけかもしれないからさ」


 すると後ろで聞いていた魔術師のロータが目を見張って感心する。


「そんな可能性を考えるなんて……流石は腕利き」


 それに何と言って突っ込むか考えているうちに、今まで黙っていたソグンが急に顔をあげた。


「敵!」


 直後、前方の茂みから飛び出すいくつもの影!



(魔術師ロータ)

挿絵(By みてみん)

巨大ロボのある世界だけど、いつもそれに乗っていればいいわけではない……という話。

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