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61 拡大する不安

コルトこと星庭神成(ほしにわ のあ)は自室で今回は、もう少し要素を増やしたRPGを作ろうとしていた。


前回は、タイトル、会話、戦闘、の三画面の最小構成であった。


といって、次増やすと一気にドーンと要素が増えて大変なんだよな。見下ろし視点で町やダンジョンを歩けるようにすると、やっぱりそこには宝箱だったり、お店などが欲しくなる。


宝箱があるということは、非戦闘中にメニュー画面から装備の変更をしたり、アイテムを使ったりできるようにしないといけない。


それだけで増える画面は、ダンジョン画面、メニュー画面、アイテム一覧、キャラクター選択と装備変更画面、アイテム売買画面、など一気に増える。もう少しぜいたくを言うならオプション画面などもあるだろうし、スキル一覧や回復スキルなどは使用できるようにしたりと、もう一挙に増える。


うむ、一個ずつ作っていくか。


ひとまず、町やダンジョンが歩けるだけでも雰囲気がまた変わってくるから、まずはここにフォーカスを当てよう。


多くのゲームエンジンでは、たぶんタイルマップ、草原、川、海、砂漠、雪原、建物の柱、壁などのチップを配置する仕組みがあるはずだから、その辺から調べるか。


いろいろ調べて、仮の緑、茶、青一色のタイルを並べるところまで何とかこぎつけた。


これって、タイルチップに、あたり判定とかつけれるんだっけ?


ということも少しずつ調べていく。


ゲームエンジンは便利である分、この辺の対応はゲームエンジン事でまったくやり方が違うので大変だよなぁ。


といって、ゲームエンジンを使わずに作ると、こんどはマップエディタとか自作しないといけないのが大変なんだよねぇ。


さて、ひと段落着いたので、少しリビングにいってみるか。


と、リビングに向かうと、執事が話しかけてきた。


自室にいるときは邪魔しないよう、しっかり距離をとってくれているのが何とも好ましい。


そう、自分の時間というのは大切で、何にも邪魔されることなく、それに没頭出来きることが何より大切なのだ。よい、執事である。


「実はコルト様に、一応、お伝えだけしておきたいことがございまして」


「うむ、苦しゅうない」


「はい、キルクス王国が一夜にして滅びました」


「はいぃー!?」


どういうこと。え、魔王軍が動いたとかそう言うことか、え、でもあそこって魔王軍から距離めっちゃ離れてるよな、どうしたん?


「自体が呑み込めないのだが、まず一つ確認しておく、俺が何かしなければならないようなことになっているか?」


「いえいえ、滅相もありません。大きなことがありましたので、念のためにお伝えしたしだいでございます」


「それじゃあ簡単に説明してくれ」


「はい、メルポポの人間側の区画、交流区にてキルクス王国の工作があり混乱、さらに、土砂崩れを引き起こされました。前者は住民達が抑え込み、後者は蒼月采蓮 (あおつき あやね) 様により対処、損害は軽微でございます」


「そこでなんでキルクスがいきなり滅ぶんだ」


「はい、感情を抑えきれなくなった蒼月様がキルクスを黒い炎で滅ぼされました。なお、彼女が行った、ということを明確に知るものは我ら妖精のみ。道場の師匠であるブライ殿はうすうす気づいているようです」


「え、蒼月さん滅ぼしちゃったの、国を!?」


「彼女は精神的に問題を抱えておりますから。されど、こちらで対応いたしますのでコルト様にはごゆるりとしていただければと」


「あの、蒼月さんって魔獣化した勇者の子だよね、もしかして、俺がなんか対処間違えたとかそう言うこと?」


「いえいえ、滅相もございません。蒼月様生来の問題でございます」


「ん、そういえば、なんで蒼月さんってあんなに強いんだ?」


「それはですね」


#


春も終わりごろ、リーディア商業連合国のメルポポへの大使ドニッチェは、国からの要請を待たずに先んじてメルポポへと向かった。状況をあらかじめ確認しておく必要があった。


彼が聞いているのは、メルポポでのキルクス王国による工作と土砂崩れ、後者は何者かにより結界で防がれたこと、そしてキルクス王国が黒い炎で滅んだことである。


さて、何が問題かというと、もしこの件でメルポポの妖精達が、自分達を含む人間に対して不信感を抱いたとしたら非常にまずいことになる。なにせ、魔獣討伐を妖精達に任せたことでやっと国内は安定してきたのである。さらに、そんな強力な存在が敵にまわるとなると、状況しだいでは南に魔王軍、北に妖精という非常に恐ろしいことになるのだ。


早馬をとばし、そして妖精の村長との会談の許可が下り、彼は内部区へと進む。


交流区を見た限り土砂崩れの被害は少なかったようだが、それは、妖精達が防いだからかもしれない。被害が少ないからと言って、許される、という話ではないのだ。


緊張しながら、一歩一歩、目的の会議室へと向かった。


そこにはいつものように村長が待っていた。


「これはこれは、急遽会談を取り付けていただきましてありがとうございます」


「かまいませんぞぉ。リーディアとは友好を結んでおりますからの」


「メルポポでのキルクス王国の工作、誠に遺憾でございます。そちらの件と、キルクス消滅についてお話しさせていただきたく」


「うむ、工作については、こちらも人間に任せすぎておるのかもしれぬが、対等な関係でなければならぬと思うておる」


「わかります。まず、メルポポと我らの友好、締結した条文については変わらない、と考えてよいのでしょうか?」


「うむ、我らは貴殿らとともに発展していきたいと考えておる」


「では、そちらはどれほどの情報をつかんでおいでですか?」


「全ては話せん、ちと、込み入っておってな。キルクスについては工作部隊がイリノ町に拠点を作っておったようじゃが、すでに出払っておる。土砂崩れの防備は我々が行った。道場の式典でも見せた結界の応用である。キルクス消滅に関しては我々の制御下にはない存在によるものじゃ」


ドニッチェは背筋が凍った、制御下にない、それは、たとえ妖精達と友好関係を結んでいても、火の粉が飛んでくる可能性がある、ということなのだから。


「制御下にないといいますと?」


「人間もそうであろう、リーディアとキルクス、別れておるであろう?」


「なるほど、他の妖精達がいらっしゃると」


「うむ、ただ、本来はあのようなことはないのだ。彼らはメルポポが混乱し破壊されそうになったことで、神経質になっておる。人間達が妖精と敵対するのではないかとな」


「めっそうもない」


「貴殿らはそうであろうが、彼らからは誰が敵なのか味方なのか、自分たちを守るにはすべて滅ぼすしかないのか、非常に危うい状態になっておる」


「どうにか、手立てはないのですか?」


「妖精もそうじゃが、人の心はよめん。だから疑心暗鬼になる。メルポポを、その住民を含めて安全にしておく他、できる対処はない」


「となりますれば、交流区、第二交流区にこちらから警備の兵をお送りしてもよろしいですか?」


「そうしてくれると我らも助かる」


「もう一つお尋ねします。メルポポの妖精様方は、制御下にない存在とおっしゃった彼らと相対する力はあるのでしょうか」


「残念じゃが、我らに、国を一夜に滅ぼせる力はないし、よって守る力もない」


それはまた、恐ろしいことだった。いったい、どんな存在の逆鱗に触れたというのだろう。そして、その存在は、人間達に対して懐疑の目を向けている。ことは慎重に、そして迅速に対応せねばなるまい。


「ありがとうございます。今後とも我々も変わらぬ友好を誓いましょう」


「よろしくたのむ」


ドニッチェはさっそくイリノ町に戻り、国の各重鎮へとこととしだいを伝える使いを出した。


春、心地よい風とは裏腹に、危機感で頭がいっぱいであった。


#


リーディア商業連合国以外の各国も、黒い炎でキルクス王国が滅んだということで騒然となった。メルポポの妖精との関連は推測であってほしいと考える者たちも多く、魔王軍がいきなり南の戦線を飛び越えたとんでもない攻撃をしてきたのではないか、などと恐怖する者たちもいる。


確かに、魔王軍の様子はおかしい。壁を建て進軍をやめているのだ。それは、遠隔地への攻撃手段があるため、と考えることもできた。しかし、それにしては奇妙だ。奇麗にキルクス王国内だけが滅ぼされている、というのである。つまり、無差別な遠距離砲撃ではないということだ。魔王軍がわざわざそんな細かい芸当をする理由が分からなかった。


ただし、こうも言える。魔王軍には、国一つを狙って滅ぼすことができるのだと。


それでも腑に落ちないのは一夜にして滅んだということである。魔王軍の侵攻もそこまで速いものではない。そう、脅威の度合いで考えれば、むしろ魔王軍をはるかに超える恐ろしい存在なのである。よって、魔王軍とは違う何かではないか、と考えられた。


そうすると、妖精の里メルポポにどうしても目が行ってしまう。キルクス王国は妖精に対して悪魔だなんだと喧伝し、そして破壊工作まで仕掛けたのである。そして、まだ前後関係ははっきりしないが、その工作の前後にキルクス王国は滅びたのである。順番が、メルポポへの破壊工作、そしてキルクス王国の消滅、だとすると妖精側の報復ととらえるのが妥当になってしまう。


そうした結果、各国はメルポポの里の調査を周辺国以外も必要に迫られ、キルクス王国跡のリーディア主導の調査にも協力という形で参加したい、という流れになっていったのである。


#


落ち着いてきたメルポポの交流区も、変化を見せ始めていた。もちろん、建設や開拓は進み、前進しているが、後退しているところもある。


店をたたみ撤退した商人や、別の町へと移住を考え直して去っていく人たちがではじめたのである。


土砂崩れなどの騒動で加熱していた熱が冷め、落ち着いてきたことで冷静になった人々の中で、メルポポは危険な場所なのではないか、と考える人が出てきたのである。


昼に交流区を歩いていた蒼月采蓮(あおつき あやね)は、そんな変化やそうした話声を聞いて悲しくなった。そしてさらに思った、もっともっと、メルポポは安全でなくてはならないのだと。

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