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05 新たな拠点作り

星庭神成(ほしにわ のあ)は、リーディア商業連合国の南東部に位置する村「ルージェ」の近郊にたどり着いた。ここは中央から離れた静かな場所で、商業国としての喧騒とは無縁の平和な村だった。街道から少し外れた丘の上に広がる森の中に、彼は新しい拠点を作ることに決めて降り立った。


「さて……ここなら、しばらくは誰も追ってこないだろう」


神成は、周囲を見回しながらつぶやいた。木々が風に揺れ、鳥のさえずりが遠くから聞こえてくる。森林独特のにおいと、遠くからは鳥たちのさえずりが響き渡っている。静かな空間に満足しつつ、まずは住む場所を確保する必要があった。これまでの屋敷のような場所だとどうしても村や街には近くなる。だからこそ作る必要があるのだ、妖精の力を使って。


一応、国の法令に違反したりしないかを物知り妖精に確認をとって、自分で開拓する分には問題がないとのことだった。


彼の異能「妖精想造」は、一段階進化していた。今では同時に五体の妖精を生み出すことができ、それぞれに二つの能力を持たせることが可能になっていた。以前よりも格段に効率的に、そして強力な力を使えるようになっていたのだ。


「まずは、家だな」


神成は手をかざし、森の中に適当な空き地を見つけて立ち止まった。少し考えた後、彼は妖精たちを呼び出した。最初に現れたのは、木材を扱う妖精だ。小さな手の中に斧を握りしめ、目の前の木を次々と切り倒し、必要な資材を集めていく。狩りの能力も持っており、食べられる動物がいれば捕獲することも可能である。


「よし、その次は……建築用の妖精だ」


二体目の妖精は、設計図をもった建築師のような妖精だ。神成と話し合いの末、どのように作っていくかが決まっていく。二階建て、地下室ありの、一軒家と言ってもいいそんな建物の図面が作られていく。


それと並行して、木材や石材の加工の妖精に、加工を任せつつ、地面の補強や平らにする加工の妖精にも作業をお願いした。


可愛らしい妖精が、それに似つかわしくない腕力でもって、木を運び、加工し、整地をして、一時間もしないうちに、そこは作業現場の様相をていしていた。


そして少しずつ、木が組み立てられ始める。


「一応、警戒もしておこう」


ということで、周囲に人や危険な動物などがいた場合、連絡をくれる妖精も出しておく。そのうち、護衛の戦士の妖精とかも必要になるのだろうか。まぁ、ひとまずそれはいい。


妖精が協力して、木材を運び、組み立て、屋根を張り、徐々に完成に近づいていく。その間、神成はただ見ているだけだ。指示を出すだけで家ができていく。すべてが順調に進み、妖精たちが黙々と働いているのを眺めていると、不思議な感覚にとらわれた。


「……昔は、いろんなことを自分で手作業でやろうとしていたんだよな」


自分でプログラミングをして、システムを構築し、バグを修正し、細かい作業を繰り返していた日々をふと思い出した。だが今では、そのすべてを妖精に任せることで、自分は手を動かすことなく、物事が進んでいく。かつての苦労が、今ではあまりにも簡単に解決されている。もちろん、元の世界で十全に妖精の力が発揮できるかは分からないが、猫の手も借りたい職場だったのだ、戦力にしていただろう。


「作るくらいはいいかもしれないが、人から指示されて、お願いされて、というのはもう嫌だな」


神成はそうつぶやくと、再び妖精たちに指示を与えた。材料は十分になったのでその妖精は消して、次は内装を整える妖精を作った。家具を配置し、窓ガラスをはめ込み、家の中を整えていく。すべてが順調に進み、ついには立派な住居が完成した。


「これで、ひとまずは落ち着けるか……」


神成は、新しい家の前に立ち、その出来栄えを見つめた。外見は普通の家だが、そのすべてが妖精の力によって作られたものである。なかなか立派なものを作るじゃないか、自分の事のように誇らしく思った。


彼は家の中に入り、椅子に腰を下ろした。自分がこの場所で本当に安住できるのか、漠然とした不安が心をよぎる。それでも、今日は久しぶりのお風呂に浸かり、疲れを癒やしたいと思った。


湯船に浸かると、体の芯から温まる感覚が広がった。しかし、心のどこかで完全にはリラックスできない自分に気づく。


「ふぅ、落ち着き切れないものだな……」


#


星庭神成(ほしにわ のあ)は、新居ができたことで、次に試すべきこととして森での狩りを考えていた。今まで妖精の力を使って食料を賄ってきたが、現地の食文化を体験し、この世界で生きていくための手段を増やしておくのも悪くないと思ったからだ。


神成は、物知り妖精を呼び出して、狩りに適した動物について尋ねた。


「この辺りには、どんな動物がいるんだ?」


物知り妖精は、少し考え込んでから答えた。


「この地域でよく狩られるのは『ファロウ』という獣ですじゃ。体は大きいですが、肉が柔らかく、非常に美味しいとされています。特に森の奥に多く生息していますのじゃ」


神成は頷き、次に狩猟専用の妖精を二体召喚した。妖精は小さな姿ながらも、鋭い感覚と素早い動きで森の中を探索することができる。また、狩りだけではなく食べ物採取の能力も持たせており、食べられるモノがあったら拾ってきてくれるようにもなっている。


「じゃあ、行ってこい」


そう言って妖精に指示を出すと、妖精は一瞬で神成の前から消え、森の中へと飛び込んでいった。彼は、近くの木に腰を下ろし、しばらくのんびりと待つことにした。


森の中は静かで、鳥のさえずりや風が葉を揺らす音が耳に心地よい。柔らかな日差しが木々の間から差し込み、暖かさを感じさせる。彼は深呼吸をしながら、自然の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。


「……前の世界では、こんな風にのんびりと自然を感じる時間なんてなかったな」


仕事に追われ、常に何かに急かされていた日々を思い返す。だが今は、妖精に任せればすべてが進む。彼は自分の力で動く必要がなくなった。その分、余計なストレスもなくなっていた。それはそれで、いったい自分は何のために生きているのか、という疑念がないわけでもないが、まぁ、まずはゆっくりさせて欲しかった。


しばらくすると、森の奥からかすかな動きが見えた。妖精がファロウを仕留めたのだ。小柄な妖精にしては相手が大きい獲物だったが、ファロウは既に動かなくなっており、妖精が木の陰から姿を現した。


「良い結果だ」


妖精に獲物を運ばせると、途中で採取したらしいキノコや葉っぱなども持って帰ってきていた。さて、そうして今度は今の二体の妖精を消去して、料理の妖精を作って、料理をしてもらう。


「この獣を調理してくれ。現地の方法で頼む」


妖精は無言で頷き、手早くファロウの肉をさばき始めた。血抜きなどの処理もバッサリ能力で省略してしまい、そしてナイフを使って皮を剥ぎ、骨を取り除きながら肉を一口大にカットしていく。その動作は正確で無駄がなかった。


神成は、料理の準備を眺めながら、物知り妖精に聞いてみた。


「この肉、どんな味なんだ?」


「ファロウは非常にジューシーで、脂身もほどよく、焼くと柔らかくて香ばしいですのぅ。スパイスを使って調味するとさらに美味しくなりますじゃ」


妖精が調理を続ける中、キッチンに広がる香りに彼は少しだけ期待を抱いた。やがて、肉はこんがりと焼き上がり、皿に盛り付けられた。


「……これが、異世界の肉料理か」


彼は一口、ファロウの肉を口に運んだ。最初に感じたのは、外はカリッとした食感、そして中から溢れ出るジューシーな脂と柔らかな肉の旨味。スパイスの香りが鼻腔をくすぐり、味わい深い調和が舌に広がった。


「……うん、案外いけるな」


彼はもう一口、そしてまた一口と食べ進めていく。異世界の料理を味わいながら、少しずつこの世界での生活に馴染んでいく感覚があった。


ただ、自分でもやってみたかったなとも思った。もともと彼はそういう性分なのだ、見ているだけでは満足できない、なんでも自分でやってみたがる、そういう性格だった。


「今度は少し、料理をしてみるか」


そうつぶやきながら、彼は肉を食べ続けた。


#


星庭神成は、新しく建てた家の前に立ち、満足そうに息を吐き出した。森の中に作り上げた拠点は、木材と石でしっかりとした作りになっている。妖精たちの力を借りてわずか数日で完成したが、これで生活の基盤は整った。だが、これからの生活をより安定させるためには、さらに手を加える必要がある。


「次は……畑だな」


神成は、妖精たちを呼び出し、森の一角に畑を作ることにした。まずは土を耕し、植物が育ちやすい状態に整える。妖精に道具を作らせ、それを使って妖精たちは作業をこなし、広い区画を素早く耕していった。


「うん、順調だな。次は作物の種か……」


神成は、作物の種を手に入れるために、物知り妖精を呼び出して相談した。


「ここでは、どんな作物が適している?」


物知り妖精は少し考えてから答えた。


「この地域では、イモ類やトウモロコシがよく育ちますのぅ。気候も温暖で土壌も栄養が豊富ですから、これらの作物が向いておりますじゃ。さらには薬草なども栽培可能かと」


「よし、それでいこう」


神成は妖精たちに指示を出し、それぞれの種を生成できる妖精をまず作って、種を確保した。なんだかズルい気もするが、気にしない。そうして手に入れた種を妖精に撒かせた。妖精たちは細かな手作業で種を一粒一粒丁寧に埋め、間もなく畑の作業は完了した。さらに、水を引く必要があると感じた神成は、近くの川から水を引くための妖精を召喚した。


「水が必要だ。川からここまで水を引いてくれ」


妖精はすぐに指示を理解し、能力を使って水路をつくり、川から水を引き、畑に灌漑用の溝を作り上げた。水がしっかりと流れ始め、畑はさらに整備された。


「いい感じだな。あとは……狩りも少しやっておくか」


神成は次に狩猟用の妖精を召喚し、森の中で食料を確保を命じた。それと並行して、薪用の木の確保もさせた。


「ずいぶん、形になってきたか……」


「いろいろ整ったようですな、ご主人様。これでこの拠点は十分に自給自足が可能です。いよいよ本格的な生活が始まりますぞ」


「そうか……まぁ、これでしばらくはのんびりできるだろう」


神成は満足そうにうなずき、椅子に腰掛けた。妖精たちが日々の作業をこなしてくれるおかげで、彼はほとんど何もする必要がない。狩り、農作業、家の維持、周囲の警戒、すべてが妖精たちによって自動的に進行している。


だが、その安定した生活に、どこか違和感を感じていた。


「これが俺の望んだ生活か……?」


ふと、彼は自分に問いかける。確かに楽だ、快適だ、だが、自分の望みとは乖離があるような気がしている。そう、システムエンジニアのときだって、管理職より現場な人間であった。自分でできることを増やしたいのかもしれない。


「なぁ、俺はいったい自分が何ができるようになれば幸せか分からないんだ」


「ふむふむ、誰しも、そのようにさ迷っているのですじゃ。気分転換に元の世界では全くやれなさそうなことを学んでみてはいかがでしょう?」


「というと?」


「剣術や魔術ですじゃ。それぞれに長けた妖精を作り、指導を受けるというのは、これまでにない景色が見えましょうぞ」


「俺にも魔術が使えるのか?」


「さようですじゃ。勇者も上級の魔術を使ったとされていますし、できる可能性が高いですのぅ。簡単なところからはじめてみてはいかがでしょう」


「そうだな」


彼はそう言うと、目を閉じた。風が木々を揺らし、静かな森の音が耳に響く。静寂に包まれた新しい拠点で、彼は一時的な安定を手に入れた。しかし、見ているだけ、というのは、なんとももどかしさを感じていたのである。


#


星庭神成は、リーディア商業連合国南東部の村「ルージェ」の市場に初めて足を踏み入れた。どんな服、食事、物を使って生活しているのか確かめることが一つ、もう一つは、どれくらい心の距離を取らなければならない場所かの確認のためでもある。


市場は賑わっており、小人族や獣人族も多くいて、村人たちは活気に満ちた声で商売をしている。露天商や果物売り、肉屋の香ばしい匂いが漂う中、神成はヘトヘトになって歩いていた。


「剣術の練習ははじめたけど、体力はそう簡単につかないものだな……」


村に来るだけで肉体的に疲れてしまっていたのだ。ふと、妖精たちが作った食べ物だけでは少し飽きが来ていた神成は、現地の食材や村の特産品にも興味を抱き、いくつか買って食べてみる。新しい発見、そう思うと来てよかったなとも思う。店をいくつか見て回り、野菜や果物が並んだ露店に立ち寄り、少し買い物をする。


そんな中、彼が妖精を使って荷物を運ばせていたことが注目を集めた。子供たちがその様子に気づき、興味津々で近づいてくる。


「お兄さん、そのちっちゃいの、なに?妖精さん?」


神成は無表情のまま、子供たちに軽くうなずいた。子供たちの反応にマチを思い出し、微笑ましく思った。


「まあ、そんなところだ」


「「おぉ!」」


すると、周囲の大人たちも興味を持ち始め、話しかけてきた。


「おや、妖精を使うなんて珍しいねぇ。あんた、どこから来たんだい?」


「魔王軍から領地を追われまして……」


「そうかい。ところで、その妖精さんたち、貸してもらえたりするのかい? うちの畑仕事が大変でねぇ」


「俺の言うことしか聞かないので……」


神成は無愛想に返答しながら、なるべく会話を長引かせないようにしていた。だが、しだいに周囲の視線が増え始め、彼は少しうんざりし、イライラも募っていく。敵意がないのは分かっていても、自分の時間を奪われるということに、嫌悪感がぬぐえない。


その時、不意に市場の隅で声が上がった。


「泥棒だ! 誰か、あいつを捕まえろ!」


人々がざわつき始め、ある男が駆け出していくのが見えた。市場の騒ぎが広がる中、誰もが泥棒を追いかけているが、その中で妖精を操っている神成が目立つこととなった。


「おい、妖精使い、あんたが関係してるんじゃないのか?」


神成は突然声をかけられ、眉をひそめた。振り返ると、村の守護者たちが彼を睨みつけていた。彼らは鎧を身にまとい、剣を手にしており、明らかに村の治安を守る役割を担っている者たちだった。


「関係ないね」


神成は淡々と答えたが、守護者たちはその態度に疑念を抱き、さらに追及を始めた。


「そうか、あんたの妖精があの泥棒と何かつるんでるんじゃないのか? 村の皆の注目を集めてるスキをついたんだろ!」


守護者の一人が一歩前に出て、彼の顔を覗き込むようにして問い詰める。周囲の人々もそのやり取りに注目し、しだいに緊迫した空気が広がっていく。


「関係ない」


神成は目を細め、肩をすくめて答えた。面倒事には巻き込まれたくないという気持ちが態度にも現れていた。その態度とうらはらに、彼の胃はキリキリとしている。だが、その冷めた反応がかえって守護者たちをいら立たせた。


「どうだか。妖精使いなんて妙な奴が来たらこの騒ぎだ、無関係だなんて信用できるか」


守護者たちは、妖精使いの彼に強い警戒心を抱き、さらなる疑念を抱いていた。彼らは村の安全を守るため、神成を危険視し始めていたのだ。


「俺はただ買い物をしていただけだ。泥棒なんて俺には関係ない」


神成はため息をつき、苛立ちを含ませて答えた。その無関心な態度に、守護者たちはさらに疑念を強め、周囲の人々もざわつき始めた。


そして、守護者たちは神成を取り囲み、何かしらの対応を迫ろうとした。だが、その時、再び叫び声が響いた。


「捕まえたぞ! 泥棒はこっちだ!」


守護者たちが振り返ると、別の場所で本当の泥棒が取り押さえられていた。泥棒は神成とはまったく無関係で、事件が彼のせいではなかったことはすぐに明らかになった。


守護者たちは仕方なく神成から手を引いたが、彼への警戒を解くことはなかった。


「今回は見逃すが、次はないと思え。お前の力が村に害を及ぼすようなら、容赦はしない」


守護者たちは冷たい目で彼を睨みつけた。ずっと高圧的で、疑いをかけたことに謝罪の一言もない。


神成の視界は暗転し、守護者たちの目は赤く光る悪魔のように見えた。


彼にとっては、もはやそれらは悪魔だった。今、悪魔だと確定した。


彼は何かあるたびにずっと逃げて対処してきた。ずっと理不尽だと感じてもいた。何も環境を壊さず、自分が我慢すればいいと、一歩身を引いてやり過ごしていた。拒みはしても荒事にはしなかった。だが、今回の仕打ちは決定的な亀裂を生んでしまった。もう、勇者ではなく、魔王とすら呼ばれてもかまわない。


「勝手に疑って、謝罪もなしだとは何様だ、てめぇら!」


彼の怒りが爆発した瞬間、彼は静かに手を上げ、指先を振りかざすと、二体の妖精を召喚した。魔術の天才「マスリー」、武術の達人「ハイオン」、それぞれが彼を取り囲んでいた守護者たちに対して圧倒的な力を見せつける。


マスリーは雷撃、水撃、氷結、火炎とあまたの魔術を放ち一瞬にして守護者たちを葬っていく。ハイオンも華麗な速い剣の連撃は、身構える時間すら与えずに、守護者たちを次々と地に伏せていった。あっという間に、一帯は修羅場と化した。


「もう一度言うが、俺は泥棒なんかじゃないし、そうじゃなかったよなぁ」


神成は冷たく言い放ち、マスリーとハイオンに手を振って退かせた。周囲の人々は、その圧倒的な力に恐れおののき、誰一人として声を上げることができなかった。


守護者たちは無残な姿で倒れ、かろうじて動けた一人は尻もちをつき、神成の力に恐れを感じ、座りながら後ずさった。その男に向かって神成は怒鳴る。


「どうなんだ! 間違ったのはどっちだ、俺が何か間違ったか、なぁ!?」


「後生だ、助けてくれ……」


「次がないのはお前らの方だ」


神成はそうつぶやき、買い物の袋を取り直すと、その場を後にした。彼の胸にはどうしてこうなったんだという思いで渦巻きつつも、あの扱いは許せないという気持ちが混濁していた。


そもそも、この世界に何のしがらみもない。あって欲しいとも思っていない。自暴自棄にでもなっているのだろうか?


村の門をくぐり外に出る。周囲がどうなっているか、もはや聞こえても見えてもいなかった。早く帰ろう。


盗賊から命を狙われたのは、うかつであったし、お互い様、という気もする。だが、王国の連中に命を狙われた、というのはなんとも理不尽に感じていた。勝手に召喚しておいて、願いを聞けと強要、そうでなければ、元の世界に帰しもせず放り出し、無責任にもほどがある以上に、さらには暗殺まで企てたのだから。それは、あまりに理不尽だと感じていた。それでもまだ、直接、何か言われたわけでも、刃が差し向けられたわけでも、まだ、なかった。


だが、今回は違う。


俺がいったい何を間違えたというのだ。村の住人になにか悪さでもしたか。恨まれることでもしたか。そんなことはないはずだ。


理不尽には、さらなる理不尽でもって返す。同じことを繰り返すことができないように。敵対するなら、相対するまでだ。ケンカを売ってきたのは向こうだろ。それで、村人全てが敵にまわるなら。その先に、世界の人たちが全て敵になるというのなら――


俺は、魔王にだってなってやる。


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