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柴田さんに泣かされて以降、僕は柴田の性格を戦くようになり大儀ながら詳しく具体的に発切り説明しようと心に誓った。
正直、僕のコミュ障は卒業までに少し乍ら改善すると思っていた上に彼の啀む様な発言や滾った感情は自然に収まるか僕の手で何とかなるとその時は考えていた。
初夏を過ぎた頃だろうか、いつもの様に照合を開始しようとした際に柴田は図書コーナーでの作業で思ったことを僕に話し始めた。
柴田:先輩、照合してて思ったんですけど。
小泉:…何でしょう。
柴田:図書コーナーって分類番号ごとに本棚を分けて著者の名前を五十音順に並んでありますよね。
小泉:そうだな、それが基本ですから。
柴田:図書委員である僕から言わせれば、その区切り方だと照合してる時に何処から始めて何処で終わったか確認を取り合わないといけないし御客様から本の有無を問われた際に分類番号で五十音順だと場所の把握が出来ずご迷惑をおかけすると思うんですよ。だから僕からの提案は分類番号はそのまま維持して本棚の段ごとに本を区切った方が場所も分かりやすいし尚且つ御客様がお望みの本を見つけやすいと思うんですけどどうです?
小泉:…確かに、君の発想は悪くないと…思う───
柴田:でしょ?なら早速。
小泉:でも、勝手に本の配置のシステムを変えたら…。
柴田:何故ダメなんですか、具体的な理由を述べてくれないと困りますよ先輩。どこがいけないとか、どんな事情で却下するのか、ちゃんと分かりやすく教えてくださいよ先輩。他に良い案とかあるならさっさと言ってくださいよ、先輩ならきちんと身を構えて具体的で効率の良いやり方を導かないといけませんよ、さもないと後輩たちが困りますよ?それにいくら何でも先輩の考えだけで事務室を維持するのは到底難しいし、後輩の考えをシカトするのはどうかと思います。ちゃんと話を聞いた上で「もっと○○したほうが良いんじゃないか」とか「○○を変えていかないといけない」とか纏まった意見を僕に伝えるべきです、流石にこれぐらい分かりますよね先輩?
小泉:…。
柴田:どうします先輩、案に乗るの?
小泉:…顧問の方に聞いてください。
そう言われ、柴田は顧問の先生である筒井先生に同様の提案を伝えた。
矢張、新着の本が来る度にデータ更新をしなくてはいけないため本棚の段ごとに区切るのは手間がかかる点を挙げて却下された。
僕は安堵したが、威圧的に受けた時の心の疵は癒えてぬ侭だった。




