2.
春が来た、そして出来立ての事務室に後輩がやって来る。
僕は所謂『自閉スペクトラム症候群』という病を3歳から患っており、拘りが異常に強く、思うようにコミュニケーションが伝達出来なかった。
その為、説明が辿々しくなるというネックを持っておりとてつもなく不安だった。
角川:ねぇ小泉君、今日も本の有無確認か?
小泉:うん…そうだな。前回は分類番号2を終えたから、次は3の…“社会科学”だな。
僕の名は“小泉”、以降はこの仮名で話を進める。
否、此処に現れる者は仮名で話を進めたいと思う。
角川:分かりました、照合表と筆記具を用意しますね。
小泉:ありがとう。
角川:問題なく本があれば良いんですけど…。
小泉:そうね、照合表に書かれてる本のタイトルに誤字脱字があったら修正しないといけないからな。まぁ僕は…パソコンを弄るのは好きだが。
この様に、春は本の有無を把握する為の照らし合わせの業務がありとにかく忙しない時期だ。そしてもう一つ先輩としての業務がある。
柴田:僕も手伝います?
小泉:ああ、有難い。
百崎:あの…照合ってどうやるんですか。
小泉:それはですね…。
───そう、後輩の指導だ。
僕は先ほど言った通り、説明するのが苦手であり風前の灯みたいに弱々しく解説する自分に対して可也葛藤していた時期でもあった。否、永の悩みであった。
なので、自ら手に取り実践し乍ら簡単に説明する。それが僕のやり方だ。
そんな僕は、先輩らしく後世に引き継ぐべく様々な事を教えようとしていた。
─────そう、万全であるという想定での最初は。




