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13.

 御手洗いの出入口の戸を叩く音が甲高く響く。

そしておもむろに開いた───筒井先生だった。

僕は、窓の床板にうずくまってたましいを抜けた様子で流涕りゅうていしていた。

手に持っていた学園メモには3色ボールペンで、


“皆さんには勝手ながら

自害することにしました。

最後の依頼です。

どうか私の作品を

世に広めてください。”


と、遺書を書いていた。

推敲すいこうの跡は無く、それは衝動的な謝罪と願望の文章だった。

僕は筒井先生を一瞥(いちべつ)した後、学園メモをふところに入れてゆっくりと床板から降りて廊下に出た。


筒井:…何があったのか、教えてくれるか?

小泉:…、話さないといけないんですね。

筒井:君がトイレに行ったきり出てこなかったから、話せるか?

小泉:怖いですが、少しなら。


僕は躊躇ちゅうちょを見せ乍らも有りの侭の事を話した。

けれどそれですっきりはしなかった、最後の最後で後輩に一生残る裂傷(れっしょう)を付く様な絶望を受けてしまったからだ。

僕は所詮(しょせん)柴田の傀儡(くぐつ)に過ぎなかった、その事実をそむいて抗ったのが悪いんだ。

 僕は初め、柴田には癖のある天稟(てんぴん)が身に付いてるのかと思っていた。でも違った。

履き違えたスパルタ式を取り入れて、毛嫌いしている怠けた流儀りゅうぎを変えたかっただけだった。

柴田がとらだったことを何でもっと早く気付けなかったんだろう、本当に僕って莫迦ばかだな。

叱咤しったを巧妙に使えたなら偏った思考も修正出来たのに、僕は怒るのが上手じゃないと言い聞かせ激励げきれい瞞着まんちゃくした所為しょいだろうか。

なら狂人に成り切ってまで渾身こんしん叱責しっせきすれば良かったのか…。

柴田の流儀が僕を壊し、事務室と図書コーナーの雰囲気を踏みにじんでる事を自覚させたなら…!!

畜生、篦棒べらぼうの極みめ!玄孫やしゃご玄孫やしゃごまで呪われ延々と苦しめよ!

そう願い、僕は卒業して就職していった。

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