12.
※この場面のみ心境を想像した言わばフィクションです。
多少読みづらい部分もありますが、速読しても物語に差し支えはありません。
──────────…ボツン───ヒューン…ユーン……ンー…─────窓を見ると、纔かだが空は泣いていた。吁丁度良い、僕は今、号泣したい気分なのです。
でも矢張猶猶雨粒を落として欲しいのです。
僕の情けない啼泣をその雨音で搔き消したい、分かりますか神様。
窓の床板で渾身を窄める、僕は気紛れな雉虎…蒲公英の臥榻に枕する幼気な狐みたく静かに踞ってみる。
笑いそうな位一人は安堵出来るんだな、須く先祖に教えなくてはな、アハハ。
弓手には帳面、馬手には紅玉色の洋墨が注入された硬筆、さぁ狼狽の自由詩を存分に綴ろう。
僕の揺らぐ漆黒の寝床に流す自鳴琴はボーズ・オブ・カナダ、将又倦怠のエイフェックス・ツインか。
否!今宵は滑稽に為べくアイ・アム・ロボット・アンド・プラウドに確定したんだと狭山湖の猹が告知していたの!
即ち空いた樽は音が高いという事、これは流石に遖だな。麦酒や葡萄酒でも満タンにしてやろう。
ところで、蠅取蜘蛛が問い掛けています。“薄汚い帳面にどんな韻を踏むんだ?”それは失敬、推敲を実行しないと!
───拝啓 浅春の候、皆様におかれましては益益ご清福にお過ごしの事とお喜び申し上げます。
偖、この度私共は勝手乍ら現世を離れ極楽で住居する事を決意しました。
案外、太宰治の様な生き方をしても仏様に赦しを受けたら犍陀多に会わず済むんですね。
けれどその引き換えにフィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホさんと面会出来ないのは薄幸な代償だ。
と言えど、単に死後評価の秘訣を問い掛けたがった其れのみだ。
僕の手掛けた、エレクトロニクスのノスタルジアを奮うデジタルアート。それはマイクロソフトペイント特有のジャギーやエイリアシングが遍地に付着した、初心に耽りヴェイパーウェイヴを耳栓代わりにして深部の底で眠る住民の思考を図解させたテイストのアウトサイダーイラストである。
僕は動物を慈しみ喜劇を夢見る不完全なる生命体だ、ルイス・ウェインがサイケデリックの奈落に堕ちる様に僕もまたその犠牲者になるだろうし、それこそが運命と考えるのが妥当だろうか。
理性が辛うじて保たれている今の内に肉体と精神を分離して穢れた心を真水で浄化しておきたい。
然し仮に実行した場合、元に戻るのに永に近し年月を掛ける必要があり、一那由多…一不可思議ほどの時を貴方達を待たせなくてはならない。
その待ち時間を利用して依頼したいことがある。
“僕の遺した作品をどうするか?”
何でもいい、僕の記念館を建てて飾るなり美術館に寄付するのも良し。寄付されたら隣人は何方だろうか。
モンドリアンか?否、僕の絵はあまりに具現しており想像が安易では話になってくれないだろう。
では、キース・ヘリングだろうか?否、僕の絵に深いメッセージなど無い。ただただ面白味が有るだけの無地のキャンバスだ。
バスキアも、僕以上に遊び心があって雲泥の差に過ぎない。
ピカソ?僕を嘲笑する様に名誉を取った人に隣を譲ってくれる筈がない、それに彼が僕の絵を見たらこう言うだろう“これは童が描いた何かの贋作か?”と。(パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・チプリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソはそんなこと言わない)
兎に角、僕の屍を越える人は居なかろうし此れは只の我儘だ。
偉人の肩を並べられないなら如何するか。─────全て岩漿にし給え、一点も残らず。
出る所も無ければ、最初から存在してない事にした方が死後半殺しにされずに済むんだ。
ローマ字日記みたいに、マニアックな扱いはもう生前に充分に堪能し捲ったから。
燎原の火の如く世に知られる見込みが無いのなら、いっそ451°Fで完全燃焼してくれ。(又は粉塵爆発)
末筆になりましたが、僕の作品を拡散するか匚に封印するかは黙読している汝に委ねます。
時節柄、どうぞご自愛ください。 敬具─────
,βιθ'.γ'.ζ'. Ιοσιναρι.Κοιζουμι.
閑静な雪隠の壁が小刻みに震れている、それは陳腐な手帳に殴り書いたラメントが若きウェルテルの感情の如く大いに悲哀満ちていた証拠だ。
見よ、咽ぶ僕の眼より青玉や金剛石が目映い程に溢れに溢れ、掌に狐の嫁入りが出来てる!
心は疾うに陥穽へ倒に堕ちたが心配無用だ、縺れタ交感神経を切ってぁるからな。
そのお蔭なの彁、土瀝青みたィな曇天がバイせクシャル・ラいティんグを彷彿させる繧繝に変ヮる予定でス暃。
グレー助ールの風景画…ゐや痛覚が有るノで9割ほど現実だ、鈍色の曇りの↑に桃源郷は存在すルのヵブラッ籤ゃっクで博打するのを想像スれば…興奮して失禁しそウだ!ん゛あ゛あ゛っ゛♡
賭けに丨くか?否!丨む他無い!僕の膀胱をチップ代わリに全てヲ捧げ留。
おい、コーラは何処だ!僕の野生を抑ヱるコーラは…♡嫌悪を殺すコーラを、こーラをぉ♡
───小雨は少し許り降っている。




