11.
─────柴田は“坊っちゃん”の皮を被った“赤シャツ先生”だ、忸怩を知れ忸怩を。
これぐらい語彙力があれば、僕は恐らく戦く事無く制御してたかもしれない。
正直、毎週木曜日にインターンシップで来る1年生の方が総合的に使える。
僕の話を最後まで聞いてくれるし、口調も柔軟な敷布の如く優しい。
そして偶々なのか、多くの人は手際が良く習得も早かった。
単刀直入に言えば、彼らを迎え入れて2年生どもを追放したい程だった。
まぁ百崎さんは例外だ、今後も続けてほしい。
愚痴はここまでにして、気付けば卒業も近い時期になった。
こうなると2年生に全ての技術や手法を引き継がなくてはならない。
僕は“最後”の業務を無駄にしてはならないと強く胸に抱いて、今日のルーティンを耳に傾けた。
どうやら、僕一人で後輩2人を連れて図書コーナーで最終的な作業を行うらしい。
内心、補助無しでの指導と聞いて呉牛喘月になったが、直ぐ様に凛として教えれば平気だと言い聞かせた。
それに、これが最後の業務だから流石に引き継ぎの為に耳を貸してくれるだろうと思っていた。
僕は照合表と筆記を持ち合わせ、2人を連れて図書コーナーへ向かった。
移動の最中に死物狂いで肝脳を絞って役割を考えていた。
一斉に清掃をするか、分担して図書ラベルの貼り替えをしようか、どう伝えるか前頭前野が火照りそうな程思案した。
そうこうしている間に、図書コーナーに着いてしまった。
僕は荷物を洋卓に置き、勇を鼓して柴田の所に行き───口を開き明瞭と言った。
小泉:あ、あの…今回は僕の─────
柴田:ああ、そうね。君、ラベルの貼り替えお願いしようかな。僕は本を綺麗にしないといけないから。
小泉:…分かりました。
言えなかった、青天の霹靂に逆らうことも出来ず矢張憚ってしまった、反論する度胸等此処には無かった。
僕は廊下側を向いて独りで照合表を見比べてラベルを貼り替えていた。
古い表記のラベルの上に新しく簡易的に書いたラベルを貼る、そして保護シールを被うように貼る。終えたら次の本に移り同じ作業をした。
終わったら次の本へ。
復終わったら次の本へ。
復復終わったら次の本へ…。
次の本へ…。
次の本へ…。
…。
僕は思った。逞しい先輩である筈の僕が何故後輩の指示でこんな過小な業務をしてるのだろうと。
そして何故柴田は浅瀬に仇波な野郎の曲に木鐸が如く集団を纏めているのかと。
模索すればする程、僕が惨めに思えてきた。
僕は何の為に指導を飛ばしていたのか、何の為に技術を教えていたのか、自身の無意味さが顕になりぼくが梼昧だった事を我に帰りそうになった。
脳内で自分自身を嬲っていく内に切羽詰まって、徐に席を立った。
小泉:済まない、御手洗い行ってくる。
そう言って僕は纔かに蹌く様子で御手洗いに向かった。
そして、奥にある窓の床板に凭れて暈やりした。
暈やりして、涙腺を緩め、其の侭流涕した。




