10.
文化祭は辛うじて迎え入れ、無事に終わせる事が出来た。
そしてこの頃になると、2年生の男子事務員が狷介で野放図なヤツ許りだと気付き同僚達は悟るようになった。その同時に同僚達からボロが目立つ様になった。
文化祭の下準備の際はあまりに馬耳東風で不協和だった為にいつも以上に苛立ちを露わになり言葉が不意にも強くなっていった。
時に女子の同僚が不適切な言葉を使い顧問の先生に説教される事態になる事もあり、兎に角現場は一触即発で落ち着いていられる様な環境ではなかった。
話は変わるが、柴田の煖炉で涼取れと言わん許りな思考───即ち不可能な事を直ぐ様実行させようとする性格は相変わらずだった。
昼休みの図書コーナー、僕は本棚の前で佇んでいた。
と、藪棒に柴田が声を掛けてきた。
柴田:小泉先輩、御客がいない間って暇ですよね?
小泉:!?…んぅ…そ、そうだな。
柴田:なら整理整頓した方が良いですよね?来客した時にスムーズにさ。
僕は怠惰な性格だったので少し許り聞き流そうと思っていた。
併し、柴田がそうと気付いた途端徐々に憤怒を滾り軈て僕に対し舌疾で啀み始めた。
柴田:いい?図書委員は本の貸し出し、そして図書コーナーをより良く利用させる為の委員。その為には、いい?常に状態を維持しなくてはならない、何時来られても快適にご利用出来るように、いい?しなくてはいけない。
正直、僕は口を挟みたがった。何と纏りの悪い説教だ、何処の悪罵を吐く械人形かよと。
柴田:───例えばよ、いい?仮に本の列が滅茶苦茶だとする。
そう言って本棚の前に立ち、背表紙を掴んだと思えば別の列に本の角を潰し兼ねない勢いで叨に押し入れ、復背表紙2、3冊掴んだと思えば別の所に岩乗な背板に疵が付きそうな荒々しい具合で押し入れ、本と本の間を力一杯叩き込む様に拡げそこに本を捩り込んだ。彼に本への情があるか疑いたくなる。
柴田:んでさ、この状態でさ御客様が来るとする。そしたら探したい本が見つからないのは目に見えてんだよ。んでさ、当然こうなったらさカウンターに居る図書委員に聞くよね?さぁどうする?─────すみません、○○の○○を探してるんですけど…何処にありますか。
僕は正直に言った。
小泉:申し訳ございません、僕もご不明でありまして…。
柴田:は?それで良いのか、図書委員としてそれで良いのか?ダメだろか!!だからこそ整理整頓をすんだよっ!!!
そう言って柴田は今度は乱雑に置いた本を手早く揃えた、野蛮に。
柴田:こうすればね、御客様が来たとしてね、本が見つからない時にね、私たちに問い掛けてきても直っぐに本を手元に届けられる。分かるか、図書委員ぐらいなら本が置いてある所、覚えといたり把握しといた方がいいっすよ?あっんなヴァrrrラバルァに本が配置されたヴォrrrrrrロボルォな図書コーナーなんでみっともなくって誰も来ませんよ?もし信頼を失ったら君はどうすんですか。責任とれますか、取り戻せますか、無理だよな、取れませんよな、じゃあどうするか、分かるよな、信頼出来るようにすればいいじゃないですか、僕の言ってること間違ってますか?な?
僕は一方的に謗られた為に酷く心を拉げられ貧弱になってしまい、反論する気力も失った。
そして噤んだ侭、只只唯唯諾諾するしかなかった。
本音で言えば、柴田は完全に履き違えている。
図書館に行けば分かる通り、抑本の置場所や有無は全てPCに任せている。
然し、図書コーナーには肝心のPCが無い。
図書コーナーは開放的な場所な為、盗難や第三者からの改竄を防ぐ為に敢えてPCを設置していない。
更に言えば、カウンター近くにコンセントなんで無いから仮に置くとなっても不可能だ。
柴田の衒った態度は不毛な方向へと辿っているのは明白で、柴田の飛ばす指示や提案も咄嗟に出ただけの者で正に畑に蛤だった。
だが、言葉足らずの僕に熱を冷ます術も無くただ怒髪冠を衝く姿を見守り収まるのを待つしかなかった。




