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神崎 岬は鎧兜を元の場所に戻した。その防御力は先刻証明されたが重くて仕方なかった。制服が汗まみれになった。
腕を鼻に近づけてみる。においが気になるお年頃だ。
だが岬は友人のミサ・サミュエルを救出しに行かなければならない。テロリストから奪ったグロック26 Gen.2.5とプレートキャリアを身に付けた。
鎧兜と比べてプレートキャリアは羽のように軽かった。試しに数回ジャンプしてみる。ああ、軽い。まるで鳥になったようだ。
プレートキャリアは防御力を最小限に留めていたが重さを感じさせなかった。身軽になった岬はジャンプする高さを徐々に上げていき遂には天井に着きそうになる。
これがプレートキャリアの力か。
岬はその推進力で校長室から廊下へと跳躍した。
廊下ではまたもやテロリスト3人組が待ち構えていた。だが、その手にあるグロックは、さっき岬が倒した3人組のグロックとは違っていた。
校長室で戦ったテロリスト達の持っていたグロック26はSMLのサイズで表すとSサイズだったが、この3人のグロックはMサイズだ。
3人のうちのクリスとマックのグロックはグロック19 Gen.2。グロック17からサイズダウンしたグロックだ。そしてGen.2は古くて廃番になっている。節約のために中古で買ったグロックだ。
そして2人をひきいるのはアカリ・キャンベル・ヘビィウェイト。趣味は筋トレ。
「アンタ達、出番だよ!アタシらのパワーを見せる時だ」
アカリは張り切っていたがクリスとマックは乗り気ではなかった。と言うのもアカリはプライベートな時間もクリスとマックに筋トレをさせていたのだ。
そしてアカリの持つグロックはグロック38。45口径のグロックだ。
他のテロリストが9ミリのグロックを使う中で45口径。弾が無くなっても分けてもらえない。その上、ただの45口径ではない。商業的に失敗した.45GAPだ。性能が悪くて売れなかった訳ではないが今やレア物になった.45GAP弾は充分な数をそろえられなかった。
だがアカリ・キャンベル・ヘビィウェイトは、この筋肉があれば大丈夫だと自信満々に力こぶを作っていた。
クリスとマックは防弾チョッキと防弾ヘルメットを装備していたがアカリは自慢の筋肉を見せつけるためにタンクトップしか着ていなかった。
男にも負けない筋肉を身に付けたアカリは無造作に一歩踏み出した。
「あの小娘がネズミかい。普段運動してない奴の動きだ。楽勝だよ」
アカリはせせら笑い、グロック38から鉛弾を撃ち出した。45口径の反動を筋肉で押さえ付けた。
だがしかしプレートキャリアの力を得た岬はその推進力でグロックの45口径をかわしていた。さらに加速し廊下の天井を走っていた。
これが軽量化されたプレートキャリアの力なのだ。
「この勝負、私の勝ちだな。
私は友人を助けるためなら戦い続ける」
廊下の床に着地しスピンしつつ岬はグロック26 Gen.2.5の軽さを活かし素早く銃口を振り、3人に9ミリ弾を叩きつけた。
「チクショウ…小娘め…」
岬は背中でアカリ・キャンベル・ヘビィウェイトの呪詛を受けつつスピードは下げなかった。