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テロリストのリーダー、アリソン・ポリゴナル・ストライカーヴィッチは校長と黒ウサギを引き連れ学園の地下へ来ていた。立入禁止と書かれたドアの前に立つと、そのドアの鍵に向けてグロックを発砲した。
地下の廊下でグロックの銃声がこだましドアに火花が散る。
ドアノブをひねる。開かなかった。軍用として開発されたグロック19Xの9ミリ・ルガー弾も1発でドアの鍵は壊せないようだ。
アリソンは再び発砲した。ドアノブをひねる。
開かなかった。
「鍵は校長室よ」
校長が冷静に口を開いた。
アリソンのグロック19Xが火を吹きマガジン内の残弾を全て叩き込んだ。開かなかった。
グロックをホルスターに戻すと近くにあった消火器でドアノブを息が切れるまで叩いた。ドアノブが床に落ちた。
アリソンがドアノブがあった所の穴に手を入れたが、その後どうすれば良いのか分からず結局、校長室から鍵を持って来て開けた。
すると今度は巨大な電子金庫の重厚なドアが現れた。
「ちっ!いまいましい」
分かっていたが爆薬にも耐えられる頑丈なドアを前にアリソンは舌打ちをした。
つかつかと校長へ近付くと、その首に下げていた物をひっつかむ。
この電子金庫の鍵だ。
校長はこの鍵を常時ボールチェーンでネックレスのように首から下げていた。アリソンはその鍵を乱暴に引っ張った。
千切れなかった。
普通に首から外すと、その鍵を電子金庫の鍵穴に差し込んだ。
その画面には暗証番号を要求する文章が表示された。
「校長、暗証番号を入力するんだ」
アリソンはドアノブと格闘した時に乱れた息を整え、静かに告げた。グロックのグリップに弾が詰まったマガジンを再び叩き込んだ。
「知らないわ」
校長はグロックを前に首を横に振った。
「何をバカな。なら普段はどうやって開けているんだ?」
アリソンはここに来て悪あがきをする気かと頭に血が上りそうになったが、ここは落ち着いて対応した。
「暗証番号を知っているのは教頭先生だけなの。
私の持っている鍵と教頭の2人がそろわないと、その金庫は開けられないようにしているの。
こんな時のためにね」
その教頭は今、不在だった。ここで三流のテロリストならグロックを校長に突き付けていただろう。だがしかし。
「おい。黒ウサギ。お前の出番だ」
黒ウサギと呼ばれた男は2台目のノート・パソコンを取り出すと電子金庫とケーブルで繋いだ。しばらくキーボードをいじると画面には警告音と同時にバツ印が大写しになった。
アリソンは内心焦ったが黒ウサギはニヤリと笑う。
「さっすが国一番のマンモス校の電子金庫だ!そう簡単にはクリアできないか!面白い!
久々に腕が鳴るぜ!」
黒ウサギは両手でかかえる程の機械を出すと金庫のドアに設置し、スイッチを押した。
機械のドリルが高速回転し金庫のドアを削り始めた。
「物理的に壊すのか」
アリソンの声はドリルの音にかき消された。