ダンスレッスン
女王を説得した大臣はクラフアイスとフレイアの仲を進展させる為策を打ち、ダガーに実行を頼んだ。
もちろんクラフアイスとフレイアはその事を知らず、蒸気機関自動車と、自動機織り機の魔道具の研究を続けていた。
蒸気機関自動車は試作機まで完成し、魔道カーという名称までついていた。
「クラフ、魔道カーの試運転が終わった。街を一周してきたが、街のみんなの反応は上々だ」
「クラフ、フレイア。話がある」
ダガーが突然切り出した。
「クラフとフレイアの2人で、魔道カーに乗って舞踏会に行ってくれないか?」
「え?どういう事?」
「宣伝、か」
「そうだ、クラフアイスと、平民が協力して作った魔道カーに乗って舞踏会に行く。なかなかいい宣伝になるだろ?そして、マリーとクラフの許嫁を解消する宣伝でもあるぜ」
「だが、マリーの暗部から、フレイアが暗殺される危険がある」
「今マリーは当主が倒れてブラックローズ家の領地に戻っている。それに暗部は居なくなったわけではないが、減っている」
ダガーが口角を釣り上げた。
ダガーが暗部を始末している?
「ダガー、知らないうちに、仕事をさせていたようだ」
「それが仕事だからな。それよりも2人にはダンスレッスンをしてもらう。2人とも学園で習っているとは思うが、相性もあるだろ」
クラフと手を取ってダンス。
うれしいけど、緊張しちゃう。
こうして、毎日クラフとダンスレッスンを受ける事になった。
「わたくしが専属でお二人のダンスを見ますわ」
タワーの一室で40代ほどの女性の先生が2人のダンスを見る。
「それでは、早速2人で踊ってみてくださいませ」
「い、いきなりですか!」
「そうですわ。まずは踊っている所を見ませんと」
「フレイア、踊ろう」
「そ、そうね」
クラフが私の腰に手を回して手を合わせる。
距離が、近い。
「それでは、始めますわよ!」
こうして私とクラフはダンスを踊った。
「素晴らしいですわ」
ダンスを終えると私とクラフは絶賛された。
「お二人とも長年連れ添った夫婦のように相性ピッタリですわ。それにどちらも体を鍛えられてらっしゃるのか、体の軸がブレませんわね。お二人ともウブなのかお顔が真っ赤ですが、それ以外は完璧ですわ。今日のレッスンは終わりですわ。談笑しますわよ」
初日だし、仲良くするのは大事だよね。
「分かりました」
「クラフ様はフレイア嬢のどんな所を好きになったのですか?ぜひお聞きしたいですわね」
え?聞く!そんな直球で聞いちゃう!
私にも聞いてくるよね?
絶対聞いてくるよ。
「裏表のない所と、笑顔が良かったのと、優しい所と、見た目も良くて、その、気づいたら見ていて、なぜなのか分からない。分からないけど、好きだ」
「まあ、いいですわね。分からないのに好きというのは、本当に好きな感じがしますわ。わたくしそういう答えが好きです。フレイア嬢はクラフアイス様のどんな所がお好きですの?」
「わ、私は、見た目も素敵ですし、性格もいいと思いますが、その、錬金術で集中している時の横顔が、好きです」
「まあ、分かりますわ。真剣な横顔は素敵ですわよね」
「先生の話は無いんですか?」
「わたくしですか?わたくしはドキドキするというより、今の旦那が居るのが普通で、空気のような感じですわね。つまらない回答になってしまいますわ」
「いえ、素敵です」
一緒に居ても気にならない空気のような存在は憧れる。
仲が悪ければ居るだけで相手が気になってしまうのだ。
◇
私は、毎日火炎球に炎の魔力を注いで、毎日1回だけクラフとダンスを踊って先生とお話をする生活を続けた。
そして魔道カーの調整も終わり、全部で8台の魔道カーが作られ、研究員も舞踏会の会場近くまで付いてくることになった。
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