そんな事ある?
私は夢野 未来17才。
とくに事故にあったわけでもなく、病気というわけでもない。普通に23時に寝ただけの17才の高校生。
けれど目を覚ますと、そこには見たこともない世界が…見たことがある世界が広がっていた。
そこは大好きな乙女ゲームの舞台、シリナ学園。
転生?これが噂の?
なんだろ?悪役令嬢とかになってんの?それとも主人公!?
………でもおかしい。
転生したら大概
「前世の私は事故にあって、そのまましんだんだ。そして、好きだったゲームのキャラに転生した…」
っとかあるじゃない?
なら考えられる事は2つ
私は寝たまま御臨終した
私はまだ夢の中
夢の中であってほしい。
ぼっちオタク女子だった私にとって、乙女ゲームは夢そのもの。
自分もこの世界にいきたい!この主人公みたいになりたい!!
死んだら私も転生とかしないかな?とか、バカらしい事ばかり考えていた。
きっとこじらせ女子の私は、こんな夢をみてるんだろう……
けどね、
この世界でたま~に出てくる、生徒A…名前すらない!!存在感もない!!
それが私だった。
酷くない?夢なら…っていうか、現実的に次元をこえた転生とかありえないけど、そんな設定なら、こんなモブ転生ってひどすぎない?
「やはり、現実でもゲームでも、立ち位置は変わらない…」
っていうか…まって!モブA は何て言う名前なの…
どうしよう……
怖くなってきた…
これは転生じゃなく、夢でおねがいします!!
私は空に拝んだ
「ミコ、お前そんなとこで何やってんの?」
「え?」
振り返るとそこには、とくにイケメンというわけでもない(めっちゃ失礼)、黒髪の男の子がいた。
「空に手ぇあわせて、気持ちわる」
言いたい放題だな
「あっ!!!」
「は?何だよ!?急にデカイ声だしやがって」
「あなた…見たことがあるわ!確か、エドワードの…友達?じゃなくて、私と同じモブ!」
「は?」
いきなり人をモブ扱いしてしまったわ!自分だってそうなのに!!
主人公と攻略対象とか悪役令嬢とかなら、情報が多いからわかる。けれど、モブが何してるかなんて、考えた事もない。教えてもらわないと!!
「あの…じ…じつは…記憶がなくて…」
「は?記憶がない!?」
「うん、だからいろいろ教えてほしいなって思って」
「俺のことも忘れたの?」
「はい…」
うん、って言うか最初から顔しか知らないし。しかも同じ画の使い回し。そう、貴方もモブよ。
もともとあるわけないじゃない、モブキャラ設定とか、そこまで考えられてないでしょ…でも、この主人公と悪役令嬢が火花を散らしてる間に、モブも何処かで暮らしているはずなのよ!
そう!わからなければ、私が作ればいいじゃない?この黒髪の子も、たしか見たことがある。モブ友よ!モブ友!
自分の立ち位置がモブだという事はわかった。
モブ友男子はキースという名前らしい
そして私はミコ。
モブにも名前があるとは…
設定は学園。寮で暮らしている。
…お役立ちキャラ。今回この子のルートは何だろう。
そしてお決まり、ハッピー、ノーマル、バッドエンドがあるのだけれど、悲しいことに悪役令嬢は天才剣士ルートだと、どのエンドでも死しか待っていない。
天才剣士ルートだけはやめてあげてほしい。何故なら首を刺され、屋上から落ちる。
ただ、このご令嬢はやる事が極悪。だから最後に死んでも『ざまぁみろ!』ってなるわけなのですが…さすがに同じフィールドにいる人に、死んでほしくはない。
ゲームはまだ始まってない?
「ねぇキース、学園に入ってからどれくらいになるの?」
それを知れば、大体のイベントがわかる!
「俺たちは2年、で、明日から授業開始。」
「へぇ」
「私のクラスはどこかしら?」
「Bだよ。B」
「……………」
ええ!??
「Bクラスッ!?」
「ああ、俺はA」
「キース君……お願いなんだが、クラス変わって頂けないだろうか…」
「いや、どうしたってムリだろ。」
………それはそうなんですけれども!!…私が私がA クラスで登場するなら、フラン殿下ルート、カールルート、シリウスルート
フランは王太子
カールは公爵子息
シリウスは伯爵子息
私がBクラスならウィルルート、ウルフルート……
天才剣士ウィルルート
獣人ウルフルート
ただ、ウルフは全キャラ攻略後に選択出来るルート
ってことは、残念!天才剣士ルートだ
1番可哀想なルートに突入だよ。
「キース、手伝って欲しいことがあるの。」
「何だよ」
「エリザベス様の生存率を上げるのに、協力してほしいの!!」
「エリザベス様って、あの侯爵のとこの?」
「そう!」
「病気か何かなのか?」
う~ん、説明するのはむづかしいな…自分でも夢なのか、転生というありえないものなのかわからないし、解ったところで説明できない
「ミコ?」
「お願い!別に特別なことをしてほしい訳ではないの!!ただ暫くの間だけ、私と一緒にいてほしいの!」
「毎日って……婚約者でもない女と、ずっと一緒になんていられるわけないだろ。変な噂がたったらどうする。」
「大丈夫よ!」
なぜなら私たちはモブだから!!そこまで誰も気にしないわっ!
「何を根拠に」
剣士ルートに彼は出てこなかったはず。たぶん。だから、私達がゲームと違う動きをすれば、回避できる可能性はあがる!!…はず……たぶん…だけどね!
さて、この物語の内容はこうだ。
貴族が通う学校に、推薦枠で入ってくる庶民の主人公。
もちろん、貴族の中に平民がいるのだから、虐められる事になる。
そこに攻略対象者が登場して彼女を助ける。
という話。
どこにでもあるような乙女ゲームだよ。そう、そんな何処にでもある話のゲームでなぜ私がこのゲームを選んだのか!!!
とりあえず、みんなイケメン。私の好みの顔面!!
この中で推しの顔面所持者は、今回の剣士ではなく、王子でもなく、ウルフルート…オオカミ男よ!!めちゃくちゃカッコいいの!!今回、ウルフが攻略対象でなくて良かった!!
なぜなら、ヤキモチやいてしまう自信があります!!
ウルフルートだけは、悪役様は死なないのよね。ねじ曲げてルート変更できないかな……
剣士と主人公が出会うのは街中で、絡まれてる所を彼が助けるという、ベタな展開。
ウルフはイチゴを摘みにいって、変な男どもに囲まれた時に狼の姿でカッコよく登場!!
街か、山で天と地の差!!
出会いをウルフに向ければ、いい?のよね?それが出来るのは、どのルートにもちょいちょい出てくる私たちなのでわ?
そうよ!
明後日の授業で、いきなりヒロインの教科書をボロッボロに引きちぎって、それを水の入ったバケツにいれるお嬢様。それでヒロインは街に教科書を買いに行く…変な男に声をかけられ、困っている時に剣士登場!
しかし、イチゴを摘みに行くという、とんでもない行動にでればウルフルート!!
ゲームだとこの選択肢は全キャラ攻略後にでてくるんだけど、知ってる私はヒロインを導くことができる!!知識ってすばらしい!!
ってことで、ウルフルートを目指しましょう!!
「キース!!明日の授業が終わってから、時間は空いてるかしら?」
「別に何も予定はないけど?」
やっぱり!!そりゃそうよ!私たちはモブなんだから、そんな予定があるはずがない!
「よかった!!実は一緒に来てほしい所があるの!!」
「何処へ?」
「イチゴを摘みによ!!」
「はぁ?何でそんなもん…買えばいいだろ。」
「だめよ!だめ!街に行ったら意味がなくなるじゃない」
剣士がヒロインがそこで出会わなきゃ、ルートは消えるのよ!!
「キース!私達モブがエリザベス嬢を救うわよ!!」
「だからさっきからモブってなんだよ!!」
ふふふ、明後日が運命の日よ!!