第2話:この世界で生きる決意
〈〜こんこらむ:2〜〉スキルについて
この世界におけるスキルとは、『技』『技能』『超能力』全般を総称したもの。要は魔法以外の超常的な力の事である。戦闘用〜使えないものまで様々。「人の数だけスキルは存在する」とまで言われる程に多彩である。基本的には1人1つまで。複数のスキルを持つ者は少なく、「街に数人いれば幸運」とまで言われる程。
先天性と後天性の違いはあるものの、全員が必ずなんらかのスキルを持っている事が分かっているもののまだまだ詳細は不明。
「⋯⋯⋯⋯」
目が覚めると、知らない天井が視界に映った。
「⋯⋯⋯⋯」
感覚確認。手足は動く、視界も良好。木の匂い⋯⋯、嗅覚も大丈夫。小鳥のさえずり⋯⋯、聴覚も無事。うん。五体満足。
「⋯⋯⋯⋯」
まだ身体がだるいな。状況を整理してみるか。
倉葉真澄、22歳。確か夜の公園に居たな······。独りで、夜空を見上げながらコーヒーを飲んでいた。そしたら『声』が聞こえた。それに返事をした途端に意識を持っていかれた⋯⋯。
「うん。分からん」
記憶喪失でないのは幸いだったが、この状況は理解出来ない。それに、身体に何か違和感が⋯⋯。
「あぁ、おはようボウヤ。目が覚めたか?」
いきなり金髪の美少女に声をかけられた。⋯⋯ん?ボウヤ?
「お姉ちゃん!ここにいたんだ〜。あれ?おっはよ〜ボククン。お目覚めかな〜?」
ボククン?
「⋯⋯それって、わたしの、ことか⋯⋯?」
「ん? そうだが⋯⋯。どうかしたか?」
私は子供じゃ無いんだが⋯⋯。ん? 待てよ?
「⋯⋯すまない。鏡を、貸してくれないか?」
「⋯⋯ん?いいぞ。ほれ」
謎の美少女から鏡を受け取る。そして覗き込むと⋯⋯。
そこには、子供の姿が映っていた。
「⋯⋯そんな、バカな」
両手を見る。子供の手だ。
私は、子供の姿にまで縮んでいた。
「⋯⋯どういう事だ?」
「⋯⋯おーい? アタシたちの事、放ったらかしかな〜?」
後から入ってきたもうひとりの美少女が声をかけてきた。
「⋯⋯同じ顔?」
2人は、同じ顔をしていた。⋯⋯双子だ。髪型が反対なので見分けられるが、髪型まで揃えられたら見分けるのは難しいかもしれない。
「とりあえず、そんちょーさん呼んでくるね」
「ああ、頼む」
そう言って、明るい性格の方の少女は出ていった。
「すまないな。ユリが騒がしくて。許してくれ」
「⋯⋯いや。⋯⋯ユリは、妹なのか?」
「そうだ。私の大事な妹だ。⋯⋯っと、自己紹介が遅れたな。私はランだ、よろしく」
「あぁ、よろしく。私は⋯⋯」
「失礼するぞ」
私が名乗ろうとした瞬間、扉が開き、そこから1人の老人とさっきの少女・ユリが入ってきた。っていうか、来るの早いな。
「さて⋯⋯。人間の少年よ。言葉は分かるか?」
その質問に対して、こくりと頷く。
「⋯⋯よろしい。さて、ワシはジグという。このエルフ族の村の村長をしておる。いきなりだが、これからいくつかの質問をする。答えてくれるな?」
「⋯⋯分かる限りは答える」
村長さんには悪いが、今はそうとしか答えられない。⋯⋯なるべく答えていこう。
「まず、お前さんの名は何という?」
さて⋯⋯。名前か。本名を答えても大丈夫だろうが⋯⋯。
「マスミだ」
結局本名を名乗る事にした。とっさの偽名が思いつかなかった。
「⋯⋯ふぅむ。マスミか。変わった名前よな⋯⋯。おっと失礼」
「いや。大丈夫。気にしなくていい」
元々男の名としては変わっているのだ。問題は無い。
「では次だ。⋯⋯どうやってあの山まで行ったのだ?」
「⋯⋯は?」
山?何の事だ?
「2人から話は聞いた。お前さんは突如山に出現し、ドラゴンに連れられて森へと降りてきた、とな。覚えて無いか?」
「⋯⋯いや。記憶に無いな」
ついさっき目が覚めたばかりだ。何も知らない。知ってるはずがない。
「⋯⋯ふむ、だめか。なら次⋯⋯」
村長さんからの質問攻めは1時間程だろうか?それぐらいかかったが、答えられるものがほとんど無かった。一部私の認識と同じものがあったが、それも些細なことだ。
質問攻めにあって分かった事。
「⋯⋯どうやら、私は異世界に飛ばされたらしいな」
それだけだった。
その後、こちらからも色々と質問した。この世界の国、街、人種、流通貨幣⋯⋯などなど。意外な事に、種族の認識は、私が小説で知った内容とさほど変わらないという事だった。エルフ、シルフ、ドワーフ、ノーム⋯⋯などなど。更に魔法まで存在する事も知った。それに対する認識もほとんど変わらなかった。一体どうなっている事やら······。
ひとしきり質問し終わった頃⋯⋯。
「最後に1つ、聞いておこうか。⋯⋯これから、どうするつもりだ?」
これからの事。この世界で生きていく以上、避けては通れない道だ。今の自分は子供の姿。おそらく10歳くらいだ。そんな子供が1人で生きていける程、この世界は甘くない。かと言って、この村でお世話になり続けるのも申し訳無い。
⋯⋯となれば、やることは1つ。腹を決めろ。これは現実。やるしかないんだ。
「⋯⋯街で冒険者をやる」
「ふむ。だが、登録出来る年ではなかろう?」
「今の私は10歳。冒険者登録は最低13歳からと聞いた。なので今日から3年間、この村で私を鍛えて欲しい。最低限、冒険者としてやっていけるくらいの実力をつけなければ、私は生きていけない。⋯⋯頼む!」
精一杯の言葉を並べ、思いっきり頭を下げる。今はこれしか出来ない。ここで断られたら、この世界での人生も終わる。それだけは絶対に嫌だ!あの声の主にすらも逢えていない。こんなところで終わる訳にはいかない⋯⋯!
頭を下げておよそ1分程。
「期限は3年。本当にそれで良いのだな? マスミ?」
「あぁ。それでいい。それ以上皆に迷惑はかけられない」
「ふむ。まぁよかろう、許可する。3年間、この村の連中にみっちりしごかれるがいい」
「⋯⋯ありがとう」
村長は快く許可してくれた。私は精一杯の感謝を伝え、頭を下げた。⋯⋯良かった。本当に。
「という訳で、マスミの面倒はランとユリに任せる」
「は?」
「え?」
村長のいきなりの発言に双子の姉妹は揃って奇声をあげ、すぐに村長へと振り向いた。
「拾ってきたのはお前たちだ。なら、最低限の責任は果たして貰わんとな。頼んだぞ」
ほっほっほ。と、村長は笑いながら部屋を後にした。
「⋯⋯これからよろしく」
立ち尽くしたままの2人に、私はそっと挨拶した。
前書きのコラムにはスキルについてを載せました。本編は魔法が中心になりますが、こちらではスキルを中心に書いていこうと思っております。もちろんこちらでも魔法は出てきますし、本編でもスキルは出ます。『どちらがメインか?』の違いです。