■□書籍化記念SS――暗殺組織ギルドチャット(2xx1/05/05)
これは【01 オープンベータ版『プラネット イントルーダー・ジ エンシェント』再始動編】の第4話の掲示板01(総合)と第8話の掲示板02(総合)の時の裏チャットです。この時は暗殺組織ギルドも過疎っていました。
ソフィア:5月5日はブラディス事件1周年!
ジョン :衝撃的ですね、時の流れは残酷です。
ところで総合掲示板ですが、w←多過ぎですよ
ソフィア:草キャラかわいい♪
ジョン :可愛さがわかりません
ソフィア:wwwwwww低PSタンクが何言ってんのwwwwwww
ジョン :場外乱闘ですか?
ソフィア:かかってくるの?
ジョン :嫌です。ギルド長の座は未来永劫あなたのものです
ソフィア:どいつもこいつもトップになるのを嫌がりやがって
ジョン :中身が出てませんか
ソフィア:みんな難しく考えすぎなの☆
ジョン :うまい言い回しです
ソフィア:まあな
ジョン :私の総合の絡みどうですか?
ソフィア:キレ芸は好きなの
ジョン :(´꒳` )
名無し :2人とも今日は休みか
ソフィア:ラストかも知れないから有給を取った
ジョン :同じく
不眠ネコ:ゴールデンウィークに有給……
ソフィア:ロボットが休まないかぎり、
責任取る役職の人間に休みはない
ジョン :同じく
名無し :それでやることがウィークリーの『隠密掲示板』とは
暇か
ソフィア:世界が終わる日もいつも通りでオッケーなの☆
ジョン :同じく
不眠ネコ:ジョンは素が口べた過ぎ……w
ソフィア:うちのソフィアのイエスマン・ジョン
ジョン :イエス
不眠ネコ:ジョンwww
名無し :ところでギルド長、いくら総合で妙なキャラづけしても
NPCの好感度は下げられんぞ
ソフィア:下がれよ、あの変態
うちのソフィアに近付くなよ
不眠ネコ:ギルド長のロールプレイ可愛いからねぇ……
ソフィア:ソフィアみたいな娘が三次元にも二次元にもいないから
私がやってるんだ
変態を喜ばせるためじゃない
名無し :うむ、敬虔な信者にもらった陶器皿をやろう
機嫌を直すのだ
ソフィア:スタックしない家具で所持品を圧迫させようとしないで
不眠ネコ:ギルド長、ジョン
掲示板とチャット両方に書き込んでると誤爆しそうにならない?
ソフィア:ヨユーなの
ジョン :そんなヘマはしません
ソフィア:ん
名無し :新規?
不眠ネコ:まさか……えっ、でも名前ツカサって
ジョン :この世界延命しました!?
ソフィア:ガーリックスか
ちょっと見てくる
不眠ネコ:そんな台風の日に川の様子を見てくるような遺言を……w
ソフィア:覇王にキルされる前提で話すななの
ジョン :私はギルド長の腕を信じております
ソフィア:さすが敬語忠臣キャラなの
みんな見習うの!
名無し :我が忠誠はスピネル陛下へのみ
不眠ネコ:若頭の舎弟こそ人生……
ソフィア:いや、所属組織の長を敬って
□■□
ソフィア:ガーリックス、赤黒ゲージだったの
ミント達が通報したのかも?
名無し :ロット詐欺したんだったか
明星杖をパスするって約束でPT入っておいて
わざとロットしてログアウト
しかも煽り付きだったと聞いた
不眠ネコ:プレイヤー間の口約束でも揉めたら
ログ洗って動いてくれるんだもんね……
良い運営だよ、ここの運営は
ジョン :覇王は模範的なPKKでしたか
ソフィア:おかげでPKKギルドの存在意義がないの
不眠ネコ:覇王にお株を奪われていますよねぇ(´・ω・`)
暗殺依頼は運営の精査で時差がありますし……
ソフィア:名無しはそろそろギルド幹部にならないか?
暗殺断罪ゲージ便利だぞ
名無し :昇格試験のPVP決闘クエストが性に合わぬ。
性別適性無視のライトプレイであるから、
ゲーム内で責任負う立場はお断りでもある。
それに幹部になると公式イベントでも制限を課せられて
ちっとも楽しめぬ!
ソフィア:そうか。
じゃあしっかり責任取ってやるからちゃんとついてこいよ
名無し :さすが我らがギルド長よ
ソフィア:おだてても定期勧誘はやめないの♪
名無し :だが幹部になるのに必須条件の弓術士なら消したぞ
ソフィア:は!?
不眠ネコ:!?
ジョン :えっ!?
名無し :フハハハ! 秘儀導士に転職してやったわ
無論、暗殺組織ギルド用として職業登録はしていない!!
ソフィア:名無しいぃぃぃ!!
不眠ネコ:さてはあのフワモコうさぎを手に入れるつもり……!
ケセランウサギをテイムするなら触らせてぇ……!!
ソフィア:癒やされるつもりか!?
この私を差し置いて癒やされるつもりだな!!
名無し :ハハハハ
――不意に、ソフィアは視界に入ってきた《総合掲示板》の画像でガツンと衝撃を受けた。
丸くてずんぐりとしたフォルム。モコモコしたねずみ色の体毛。頭とその周辺の輪郭、くちばしは黒色で顔の辺りは真っ白の毛色の愛らしい動物。
気付けば神鳥獣使いギルドの前にソフィアはいたし、ファストトラベルして転職していたのだ。
時間が消し飛ぶなんて恐ろしい。バグかもしれない。
神鳥獣の《ランダム》で出て来たのはあの愛らしいコウテイペンギンの雛ではなかったが、色合いが似た丸っこい桜文鳥で、負けず劣らず可愛らしい。
ソフィアは桜文鳥の身体を指の腹で撫でた。ふかふかしている。最高である。オアシスはここにあったのだ。
「ふっへへへ」
「おい」
背後に、眉間をピクピクと痙攣させてソフィアを見下ろす砂人男性が立っていた。静かに怒り心頭の様子である。
ここはネクロアイギス王国の街角。ソフィアは表用の少女ロールプレイで、上目遣いで彼を見上げて小首を傾げた。
「どうしたの? お顔こわいよ? ソフィアに何か用なの?」
「私の動揺を、どうやら掲示板の誤爆芸を見なかったようですね……」
「チャットのを間違って掲示板に書いちゃったんだ? ジョンの脳はシングルタスク向きなの」
「ギルド長のっ! 権限が! 私にきたんですが!? 弓術士消しました!?」
ソフィアは桜文鳥を見てから、ステータスを開く。弓術士が職業欄から消えて、神鳥獣使いになっていた。そして『ネクロラトリーガーディアン』の通常ギルド員に地位が変わり、一部の称号が灰色になっている。
ジョンが低音の声音ですごむ。
「……幹部昇進の職業条件を変更出来る、下剋上クエストを受けてギルド長に戻ってくださいね」
「ジョンがギルド長でもソフィアは構わないの♪」
「……」
「ジョン? 泣かないの、嘘だよ☆」
その後、ジョンにせっつかれたソフィアは、職業制限解除の難関クエストをこなし、暗殺組織ギルド『ネクロラトリーガーディアン』のギルド長に返り咲いたのだった。