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駄菓子戦争  作者: ゲジ
8/13

女子から急に話かけられたら、なんかコイツ俺のこと好きなんじゃね?って思う年頃あるよね。

 前回までのあらすじ

 翔太は遂に決断をする。

 裕哉と駄菓子戦争を戦うと。彼らは同盟を結び、「今度は裏切りなしだ!」と再び拳をぶつけ合った。



「ここが、こうなって。えーこうなるから、よって分母が同じになって…」


 担任の島田先生が黒板で分数の計算を説明している。クラスのほとんどは一生懸命それをノートに書き写し、例題を解き出した。


 ……クラスのほとんどである。


 中には睡眠を貪る者。せっせと机の下で手紙を書く、いわゆる内職をする者。そして、ここに駄菓子戦争の作戦を練る者がいた。


 授業終了のチャイムが鳴る。


「よーし、明日までに問い11、12の問題を解いてノート提出なー。」

 島田はそう言ってクラスを出て行った。


 翔太は全くと言っていいほど授業を聞いていなかった。

 まず、昨夜同盟を結ぶか考えるあまり夜更かししてしまい、午前中は眠い目をこすりながらもなんとか授業に集中した。

 しかし、給食を食べてからというもの胃に血液が集中して眠気がピークへと到達した。


「5時間目…5時間目さえ乗り切れば」


 そう言いながら臨んだ5時間目。


 気づけば授業前半は寝て過ごしていた。自分でも驚くほどすぐに寝た。まぁ、寝てしまったのはしょうがない。後半から参加すればいいかと思ったが起きた時にはもう、授業が終わる5分前だった。


 それでも翔太はノートを開いた。今日の授業のポイントだけでも押さえておこうと考えたのだ。しかし、そこで愕然とする。算数のノートと例のノート2つは全く同じ表紙だった。それ故にノートを取り違えてしまったようで翔太は算数のノートを家に忘れてきていた。


 もうそれならしょうがないと、例のノートこと駄菓子戦争ノートに『これからの作戦』と書いて今後どの様に戦いを進めるか考えることにした。


 考え始めて1分か2分が経った頃だろうか。


「相手がどんな奴か分からないんじゃ、作戦の立てようがない!」

 翔太は最もなことに気付き、ノートに『作戦』とだけ書いて5時間目は終わった。


「グッスリだったね」

 裕哉は言う。

「誰のせいだと思ってんだ。」

 授業終了後、裕哉はイの一番に駆けつけてきた。

 まぁ、駆けつけてきたと言ってたも斜め前の席なので語弊があるが、彼は授業が終わると同時に裕哉に話しかけてきたのだ。


「いやー、まさかあんなに効果があるなんて」

 裕哉はなにか含みのある言い方をする。


「効果?今日の授業そんなことやってたのか?」

 翔太は自分が思っていた以上に授業が進んだのか心配になった。


「いやいや、授業じゃなくて…まぁ授業中の話なんだけど。」

 やはり裕哉は含みを持たせた言い方をする。


「なんだよ、その言い方?教えろよ。」

 翔太は少し嫌な予感がしていた。


「うんっとね、翔太の耳元であのフエラムネを吹いた」

 裕哉は少し申し訳なさそうに言った。


「はぁ?」

 翔太は困惑する。まずなぜ俺の耳元で吹いたんだ?同盟を結んでいるのに。それもお前が裏切るか心配した上で結んだ同盟だ。

 裕哉の行動は同盟破棄にもなりかねない。


「お前、同盟結んだ相手になにしてんだよ」

 翔太は裕哉を睨んだ。

「いやいや、違う違う。僕は良かれと思って…」

「良かれと思って?」


「…いやー、なんか翔太が眠そうだから、ちょっと試しに…」

「試しに?」


 裕哉がしどろもどろ話すたびに翔太は彼を問い詰める。


「僕のフエラムネは基本相手の体に作用するものなんだけど、それは別に悪いことばかりじゃないんだよ」

 裕哉は得意の笑みを浮かべて話す。


「そのなんていうか、加減さえ掴めば相手の五感に作用してそれに応じた効果が得られるってわけ!」


 その説明で翔太はなんとなくピンときていた。

 要は、5時間目が始まる直前裕哉は翔太の耳元へフエラムネを吹いたのだ。それも眠気を誘う音色を。


 結果翔太は、すぐに眠った。


「お前のせいかよ!」

 翔太はバシッと裕哉を叩いた。


「いや、だから良かれと思ってだよ!」

「なんなんだよ、そのさっきから良かれと思ってて。」

 裕哉の行動が全く分からず少し困惑気味になる。


「いや、翔太相当眠そうだったし、これから放課後だろ。いつどこから残りの参加者に攻めらるか分からないから、体力の温存してもらおうと思って。」


 裕哉の行動は翔太を気遣ってのものだった様だ。

 それを聞いて翔太もそれ以上強く言えなくなってしまった。


(コイツ、ちょっといいところあるじゃん)

 そう内心で思った反面、いや、よく考えろ。

 さっきノートに作戦を書こうとしたとき、自分で気付いていたじゃないか。自分達だけでなく、相手も参加者を知らない。


 なら、そう簡単に戦いは起こらないはずだ。

  やはり一発裕哉を叩こう。


  そう思った矢先のことだった。


「翔太って人いるー?」


 教室の前のドアから翔太を呼ぶ声がした。


「え、?」


 急なことだったので翔太は動揺する。


 翔太ならそこにいますよ。とクラスメイトが声の主に翔太を紹介する。


 裕哉も「知り合い?」と翔太に尋ねるが翔太には全く覚えがなかった。

 …こんな可愛い女の子、翔太は知らない。


 その女の子は翔太を見つけるなり、タタタと駆けつけた。


 翔太は特別女子に免疫がないわけでも、人見知りをする性格でもない。けれども目の前の彼女はなんとも言えぬ整った顔立に艶々とした黒髪が印象的で少し萎縮してしまう。


「え、っと」

 裕哉はお邪魔かなと席を外そうとしたが、目の前の女の子は裕哉の腕を引っ張った。


 裕哉も翔太も驚きを隠せなかった。こんな可愛い子同じ小学校にいただろうか。いや、それより俺たちに何か用があるのか?


 しかし、その疑問もすぐさま解消される。


「駄菓子戦争をするわよ。」


 2人は彼女の一言で全てを悟った。

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