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006 いい加減にフラグを立てたら俺が大炎上しそうな件

「ナツキ様、これは私からのお礼になります。」

ハーレム屋敷がどうとか、そんなことを考えていた俺に何かを手渡ししてくるマリアさん。

白金貨のような色の、金属の板。

刻まれている紋様は…何かどこかで見たことがあるような…。


「これは?」

「この国の第三王女である私が後ろ盾に付くという証のプレートです。」

この紋様は王家の紋だったか。プレートの裏には、マリアさんをモチーフにした人物画?が描かれていた。

「なるほど。つまりこのプレートをかざしながら美少年の奴隷を買いまくって、マリアさんの株を下げていけばいいんですね?」

「…今この場でナツキ様を押し倒し、皆の前で既成事実を作っても宜しければいいですよ?」

マリアさんは俺の両肩をガッツリと掴む。


アカン!マリアさんの目が据わってる。

ヤバイヤバイ!この人ガチだ。


「す、すんませんでした。マジすいませんでした。」

「分かれば宜しい。」

マリアさんに変な冗談を二度と言うまいと誓った俺だった。

でもちょっと楽しかったし、また冗談を言ってもいいよね?


「あ、ナツキ様、もう1つ、父上から預かっていたものがありました。これは魔人を倒した褒賞金として受け取って欲しいとのことです。」

メイドさん達が2人掛かりで運んできた大きな袋。

中を確認すると…金貨がザックザク。

「やっぱりこれでマリアさんのために美少年の奴隷を買いまくれということですね。」

「ナーツーキーさーまー!」

「いえ嘘です。すいません。」


というかこんなん、持ち歩けない…わけでもないが、それは後回しにしよう。


「ところで、ナツキ様は勇者なのでしょうか?魔人を倒せるとしたら、この世界に於いて勇者ぐらいしか有り得ないはずなのですが…」

「いえいえ、俺は勇者じゃないよ。あの魔人ガンドロは、勇者じゃなくても倒せるぐらい弱い魔人だったんじゃないかな?」

適当にそれっぽいことをでっち上げる俺。


というか俺、ステータス上では無職なので、嘘は言っていない。


「マリアさん、俺達はイスニアに行き、拠点をこちらに移す準備をしてきます。」

「え?あ、はい。」

よし、上手く話を逸らせた…かな?

「ちなみに俺、ルート、カノン、ラキエルの4人で1つの部屋になるよう、お願いできるかな?」

「ナツキ様、私、アンナ、アリスの4人で1つの部屋ですね?」

「マーリーアーさーんー!」

「ふふ、冗談です。先程のお返しです。」


マリアさんと軽い冗談のやり取りをしつつ、俺、ルート、カノン、ラキエルの4人は、イスニアの街に向かった。

…のはずだったが、メイドさんが馬車を出してくれた。

そういえばこっちの世界で、馬車とか、こういう乗り物に乗るのは初めてだ。

楽チンだこれ。

こうして俺達はマリアさんの父親である王様が統治するアゼニア国を出発した。


イスニアの街。

ここですべきことは、クエストの報告と拠点を移すことの報告、そして宿屋の解約か。


まずは宿屋の解約。

今日から泊まらないことを伝えたら、過払い金を返してもらったが、長い間世話になったことだし、返してもらった分を全てチップとして店主に渡した。

20日分ぐらいだろうか。俺達の予約で1部屋ずっと埋まっていたのが空き部屋になってしまうわけだし、このぐらいはね。


次に冒険者ギルドにてクエストの報告。

ギルドの受付嬢であるミラさんに、あの洞窟のカニの部屋の向こうには、祭壇しかなかったことを報告し、報酬を受け取った。

マリアさんや魔人の話は、洞窟探査とは別件だからそこは言わないことにした。

シルバーソードも最初から無かったことにした。


「ミラさん、俺達、色々あってアゼニアで家を手に入れてしまったわけで、これからはアゼニアが拠点になるんだ。」

「そうですか…寂しくなりますね。」

「ギルドに登録した時にもらったこの認識票は返却ですか?」

「それはアゼニアの冒険者ギルドでも使えますので、返却は大丈夫ですよ。」

「おー、そうでしたか。」


話題が途切れ、ちょっと気まずい…か。

「ミラさん、と、とにかく、今まで大変お世話になりました。」

感謝していることだけはミラさんに伝えねば。

「はい、ナツキさんも、今までお疲れ様でした。」

寂しそうな、悲しそうな、複雑な表情を見せるミラさん。


ミラさんに挨拶を済ませて冒険者ギルドを出た俺達。

ま、どうせ隣の街だし、またこの街のギルドにお世話になることもあるだろう。


こうして俺達はイスニアの街を離れ、再度、アゼニアに向かった。


アゼニアに着いたら、何やら騒々しいことになっていた。

何があったかそこら辺の人に聞いてみたら、どうやらマリアさんが魔人を倒したことで、勲章の授与式があったとか。

お姫様が魔人を倒すという構図…ゴシップ好きがたくさんいるようだった。


夜。

やっと家に着くと、そのお姫様であるマリアさんが出迎えてくれた。

「ナツキ様、私『英雄姫』の称号をいただきました。」

「街で噂を聞いたよ。で、その英雄姫って何?」

「本当は英雄ではない私がピンチの時に、本物の英雄様が助けてくれる称号みたいです。」

「ヘー、ソウナンダー。ソレデハコレデ。」

立ち去ろうとする俺の腕にしがみ付くマリアさん。

「ナツキ様、私がピンチの時は助けてくれますよね?」

「マリアさん、本物の英雄様がどこかから出てきてくれると思いますので大丈夫ですよ。」

「ナツキ様が、私のことを助けてくださいますよね?」


アカン。

これ、アカン。

王様が色々な意味で、ガチで外堀を埋めに来てるっぽいな。

そしてその意図を汲み取って最大限に利用するマリアさん。


「マリアさん、目の前でピンチになれば助けることもできますが、俺は四六時中マリアさんの側にいるわけでもないし、まずは俺がいない状況で何とかすることを考えて欲しい。」

「そ、そうですよね…。」

俺ありき、で考えてもらっても困るしな。


そうだ。1つ、メイドさん達に話さなければならないことがあるな。

「マリアさん、ここの使用人、全員呼んでもらっていいかな?」


「さて、みんなに集まってもらったのは、俺の仲間についてだ。3人とも、ローブを脱いで。」

ルート、カノン、ラキエルがローブを脱ぎ、みんなの前に姿を晒す。

「ワケあって、ローブにフードで全身を隠すようにしている。そこでみんなには…あっ!」

よく考えたら、もう隠す必要が無いような気がしてきた。

第三王女であるマリアさんの後ろ盾があり、そして3人の個々の能力はかなり高い。

例え面倒なことが起きたとしても、大丈夫そうだな。


「いや何でもない。みんなに俺の仲間を紹介しよう。みんなから見て、左からラキエル、ルート、カノンだ。よろしくな。」

3人とメイドたちがお互いに礼をする。


自室。

屋根の付いたベッドって、漫画やアニメの世界の中だけにあるものだとばかり思っていたが、俺の部屋に実在していた。

4つも。


「ところで勝手に話を進めてしまったが、ルート、カノン、ラキエルは、俺と同室で良かったか?もし嫌なら、個別に部屋を用意させるけど。」

「「「いえ、大丈夫です。」」」

3人とも同時に答えた後、何かを待つ。

「あ、そうか…じゃぁルートはこっちのベッドを、カノンはあっちで、ラキエルはそこのベッドを。」

「ご主人様…よろしいでしょうか。」

「ん?どうした、ルート?」

「ご主人様は、窓や扉から一番離れているこのベッドをご使用いただけますでしょうか。」


ふむ…万が一の襲撃者に備えてのことだろうな。

「つまりルートのベッドに俺も入っていいということだな?」

「え?あ、はい…いえ!そ、そういう意味ではなく!!」

ルートが頬を赤らめて焦ってる焦ってる。

「冗談はさておき、俺を護衛する配置にしたいんだろ?俺はこのベッド、ルートはそっち、カノンはあっち、ラキエルはそっちのベッドということでいいか?」

3人は首を縦に振る。


「そして私はナツキ様のベッドで一緒に寝るということですね?」

「マリアさん、ナチュラルに会話に入ってきて、怖いことを言わないでください。」

マリアさんも部屋に一緒に入って来たけど、気付かぬフリしてスルーするつもりだった。

が、スルーさせてくれない。マリアさん、何て恐ろしい子。


「はいはい、とりあえずマリアさんは部屋を出てくださいねー。」

俺はマリアさんを部屋の外まで押し出した。

何となく予想していたが、部屋の外にはアンナさんとアリスさんが待機していた。

「マリアをこちらに。」

向かい側の部屋に入って行くアンナさんとアリスさん、そして2人に引きずられていくマリアさん。

「あ、ナツキ様、何か御用の場合は、それぞれのベッドの横の台に置いてある呼び鈴を鳴らしてください。ちょっ、アンナ、アリス、説教はまた今度聞きますので…!」

そして扉が閉められる。

何か怖いな。


「さて、気を取り直して…ベッドは決まった。後は…」

部屋の真ん中の大きな袋。

魔人を倒した褒賞金として、マリアさん経由で王様からいただいた大量の金貨。

イスニアの街で、巾着よりも大きい袋をいくつも買っておいて良かった。

さっそく金貨を袋に移し変え、リュックのアイテムボックスに入れていく。

ついでに、リュックの通常モードの方に入ってたギフトコインも、整理してアイテムボックスに入れる。

全部入れ終わった後、自分のステータスウインドウを開いてみる。


■その他

・経験値0

・白金貨12

・金貨405433(ギフト+152、魔王討伐報酬+400000)

・銀貨17363(ギフト+59、ギルド報酬+12)

・銅貨2335

・奴隷3


は?金貨の所持数が2桁も増えた。

これだけあったら、家がもういくつか買えるんじゃね?相場は知らないけど。


ふと、金貨の枚数を調べる時に視界に入ったステータス『その他』の前のパッシブスキルを見てみた。


■パッシブスキル

・神の黄昏1

・勇者の黄昏1

・魔王の黄昏1

・魔人の黄昏1

・他言語翻訳1


最初からずっと変わらない内容だが…。

神と魔王を仲間にし、魔人を倒した。

あとは勇者に会えば、コンプリートな気分になれるわけだな。

それにしてもこの黄昏シリーズのスキルは、いったいどんな能力なのだろうか。

ま、見てても分からないし、分からないのは考えてても仕方が無い。


とにかくこれで勇者フラグみたいなのが立ったはずだ。

近い内に勇者が出てきて「お前が魔王を匿っている真の悪者だな!成敗してくれる!」とか。

って俺やられるじゃん。やっぱりフラグは無しの方向で。


さて、もう夜も良い時間だ。

あとやり残したことは…。


俺は早速、呼び鈴を鳴らす。

呼び鈴と言っても、インターホンとかではなく、左右に振って鈴の音を鳴らすやつだ。

「ナツキ様!お呼びでしょうか!?」

マリアさんがメイド服を着て部屋に入ってきた。

「マリア!いつの間に着替えて…!まだ説教は終わっていない!!」

アンナさんとアリスさんがマリアを引きずって、また向かいの部屋に…。

慌ただしい人達だ。


再度、呼び鈴を鳴らす。

「ナツキ様、失礼いたします。」

ドアをノックしながら、入ってくるメイドさん。

「風呂はありますか?」

そう、こちらの世界に来てから、風呂に入ったことが無いのだった。

いつもはお湯でタオルを浸して、そのタオルで身体を拭いていたのだが、この家なら期待してもいいよな?


「ええ。ございます。もう入る準備もできておりますが…ご利用なさいますか?」

「あぁお願いします。」


マジか。あった。夢じゃないよな。風呂は都市伝説ではなかったんだよな。

「ナツキ様、こちらへどうぞ。」

俺はメイドさんに付いていき、そしてお風呂場の脱衣所に到着。


「おお!本当に風呂だ。銭湯のように、棚に籠が置かれている脱衣所。さすがに瓶詰めの牛乳やコーヒーは無いか。」

普段は独り言を言わない俺だが、興奮してつい心の声がダダ漏れになってしまった。

「嬉しそうですね。ご主人様。」

「あぁ、そりゃそうだ。こっちの世界では初めて…の…え?」


振り向いたらそこに奴がいたーーー!

奴、ではないけどね。


「ご主人様、どうかなさいましたか?」

ルートがそこにいた。

ルートだけでなく、カノンとラキエルも。


あー、そうか。そうなるよな。

基本的に、俺達4人は行動を共にしている。

3人にとっては、どうやら俺の護衛をするという意味合いが強いらしい。

俺が強く拒否すれば単独行動も可能ではあるだろうけど…。


ま、今更恥ずかしがっていても仕方が無い。

こいつらと一緒に風呂に入るか。


「ご主人様。この籠は何に使うものなのですか?」

「あ、これか。これは着ている物を入れておく籠だ。1人につき1つの籠を使う感じだ。」

俺は上着を脱ぎ、自分の上着を籠に入れる。

俺に倣い、3人も服を脱ぎ、籠に入れていく。


「ところでご主人様。どうして私達の裸を見てくれないのでしょうか。」

あー、とうとうこういう質問が来てしまったか。

「宿屋で身体を拭いている時もそうでしたが、目を背けますよね。やはり私達の汚れた裸は見るに耐えない…ということですよね?」

姿を直接見てはいないが、ルートがショボンとしている様子が想像できる。


「それについては後で説明する。とりあえず俺についてきて。」

風呂場に入ると、そこには大きな、それはそれは泳げそうなぐらい大きな湯船があった。

左右には洗い場がある。

俺は3人を洗い場に座らせ、説明を始める。


「みんなは風呂に入るのは初めてか?」

3人、首を縦に振る。

「身体を洗って、湯船に漬かる。それだけだ。」

3人は俺の話に関心を示し、感心する様子を見せた。

こちらの世界では、風呂はお金持ちの特権なのだろうか。

本当に初めてのお風呂、といった様子の3人。


「俺の真似をしてみて。まずはタオルをここに溜まっているお湯に軽く漬けて、石鹸でちょっとゴシゴシして、軽く泡立てる。」

3人は俺の動作を注視し、真似をする。

「そしていつも宿屋で身体を拭いていたように、この泡立てたタオルで自分の身体を拭く。泡は汚れを浮かし、そして最後にお湯で流す。」


「ご主人様、髪や頭を洗いたい場合はどうすれば良いでしょうか。」

ルートがもっともな質問をしてくる。

「髪専用の洗剤があればそれを使うところだが、ここには無いから、石鹸を使う感じだ。髪をお湯で流し、石鹸を手でゴシゴシして、泡が立ったら髪に当てる感じかな。頭の皮膚まで浸透するようにやると良いかも。」


「洗い終わってお湯で泡と汚れを流したら、最後に、あの湯船に漬かる。」

で、湯船に漬かると、俺は3人に囲まれていた。

俺の右にラキエル、左にカノン、そして真正面にルート。

俺の後ろは湯船の端。

それはもう、完全な包囲網だった。


「さて、みんなに聞いて欲しい話がある。」

「…先程の話、ですね。」

「ああ、まず、俺はみんなの身体を汚いと思ったことなど1度たりとも無いし、みんなの裸をなるべく見ないようにしているのは、元の世界の常識に俺が縛られているからだ。」

俺はさらに続ける。

「俺のいた世界では、女性の裸をジロジロと見ることははしたないこととされているし、下手したら犯罪者扱いされることもある。ましてや大事な女性に対しての話でもあるし。」

「でも、ご主人様に全てを差し出す覚悟があります。ご主人様が望めば裸をお見せしますし、何でもいたします。」

「それだ。奴隷制度。前の世界には無い制度で、この世界では奴隷をモノ扱いするのが常識なのは分かっている。だが、俺は例え奴隷がハーフエルフだろうが魔王だろうが神だろうが、モノ扱いせず、女の子扱いをする。これが俺の奴隷に対する考えだ。」

そして最後に一言を追加する。

「奴隷の主として相応しくないかもしれないが、こんな主でもお前らはついてきてくれるか?」


返事の代わりに行動する3人。

俺の右腕にしがみ付くラキエル。

俺の左腕にしがみ付くカノン。

真正面のルートは、俺の頭に腕を回し、そのまま抱き付いてくる。

さらにルートは頭を撫で撫でしてきた。


ラキエルとカノンの胸の感触を腕に感じ、ルートのお腹の感触を顔で感じる俺。

誰かが入ってくるかもしれないお風呂の中だったからこそ完全に自制できているが、他の場所だったらいろいろと危なかっただろうな。

例え魔法使いレベルや賢者レベルがマスタークラスな俺でもね。もちろん俺の言うそんなレベルやクラスは存在しないけど。


ん?誰かが入ってくるかもしれないお風呂?

あ、そういえばここのお風呂は、脱衣所の大きさから見ても、俺達専用というわけではなさそうだったな。


ふと脱衣所に繋がる出口を見ると…。

あらあら、と言いたげな顔で口元を手で押さえてこちらを見る人影が確認できた。

マリアさん、アンナさん、アリスさん、そしてメイドが10人ぐらいか。


「3人とも、脱衣所の方を見てごらん?」


それは一瞬だった。

俺はカノンとラキエルによって少し前に押し出され、空いた俺の後ろのスペースにルートが入り込む。

いつの間にか俺とルートの位置が入れ替わっていた。

何も無かったかのように振る舞うルート、カノン、ラキエルだった。


脱衣所の方からぞろぞろと人が入ってくる。


「よし、3人とも、みんなが身体を洗っている間に脱衣所に逃げ…あ、無理だこれ。」

身体洗うグループと、こちらの真正面で足だけ湯に漬かる、いわゆる足湯グループ?に別れたようだ。

俺包囲網じゃね?

俺はたまらず身体の向きを180度回転させる。


目の前には3人の女の子…ルート、カノン、ラキエルがいた。

再度、身体の向きを180度回転…ってそれ無限ループだ。アカン。


「ルート、俺と位置を交換してくれ。」

「ご主人様、手遅れのようです。」

「え?」

俺の胸元に腕を回し、密着してくる者が約1名。


「ナツキ様、先程はおたのしみでしたね?」

声からしてマリアさんか。

何か危険な台詞に聞こえるが、俺の気のせいだろうか。

「ど、ドウシマシタマリアサン?」

「私もナツキ様の奴隷になれば、この娘達みたいに大事にしてもらえますか?」


俺はマリアさんの方を向き、頭に軽くチョップを食らわす。

「あぅ、痛いですナツキ様。」

「年頃の娘さんが、一国の王女様が、冗談でも、奴隷になるとか、言うものでは、ありません。」

言葉をいちいち区切ったのは、追撃のチョップを食らわすためだった。


「よし3人とも、上がるぞ」

さすがにこれ以上入るとのぼせそうな気がするからね。

「あ、ナツキ様のナツキ様が!あぅ!」

マリアさんが変なことを言ったため、とりあえずチョップをかます。

まぁ、冷静に考えても、40過ぎた俺が小娘の裸を見たり、裸を見られたりしても別に…。

いや、転生したから俺の身体は若返っているのか。

こういうのは気にした方がいいのかな。

いやむしろこういうことには堂々としていた方が良いのかも?


脱衣所に向かう途中、誰かが言った。

「いつから旦那様とお呼びすれば…。」


脱衣所。

全身を拭くのにどうするのか疑問だったが、どうやら杞憂だった。

「自分の籠の上に置かれたタオルで全身を拭くんだ。」

各自、そうして全身を拭いていき…服を着る。


自室。

各自、自分のベッドに座り、まったりしている。(俺以外)


「ナツキ様、先程は申し訳ありませんでした。」

いつの間にか部屋に入り、腕にしがみついて離してくれないマリアさん。

「申し訳ないと思うなら、離して欲しいのですが…」

アンナさん、アリスさんが力尽くで引き離そうとするも全然離れない。

神官ってこんな力あったっけ?

「ところで『旦那様』って何の話?」

マリアさんの方を見ると同時に、マリアさんは目を背ける。

「アンナさん、アリスさん、今の内に。」

力の抜けたマリアさんを一瞬で連れ去る2人。


「さて、今後の方針をみんなに話しておく。」

マリアさんなんて最初から居なかった。

そういう体で話始める俺。

「今後の方針だが、イスニアでの生活と大体変わらないな。クエストを…」

初めてのお風呂の後だからだろうか。

3人ともうつらうつらしている。


眠たそうな3人を寝かせ、俺も床に着いた。

余りの眠気に夕食を取り忘れる3人だった。


翌朝。

『ルート、カノン、ラキエルの3人をどこで食べさせるか問題』が勃発し、一瞬にして収束した。

奴隷に対するこちらの世界での常識があるのだが…。

俺のゴリ押しで、3人とも俺と一緒に食事を取ることになった。

「ナツキ様。本当なら、奴隷に主との違いを分からせるために、食事は別に…」

「マリアさん、その話は終わったはずです。むしろマリアさん、アンナさん、アリスさんの3人も一緒に食事というのは…」

「それこそその話も終わったはずですが、やはり私の所有する奴隷たちに示しが付か…」

「………」

「………」


いつの間にか食事も終わり、そしてこっそり屋敷を抜け出す俺達3人。

それもそのはず。マリアさんがついてくると言い出したからだ。

途中で気付かれるも、アンナさんとアリスさんが押さえつけている間に。

「よし、まずは冒険者ギルドへ行こう。」

と4人で出掛けようとしたら、またメイドさんが馬車を出してくれる。

気を使わなくて良いのにと思い、メイドさんに聞いてみたら、何てことはなかった。

俺達の安全への配慮と、俺達が徒歩で行動するとメイドさんがマリアさんに怒られてしまう、という理由だった。


冒険者ギルドでの挨拶に、武具屋での物色。めぼしいものが無くて何も買っていないけど。


さて最後に、昨晩もしかしたら立ったかもしれない勇者フラグなんてものが、最初から無かったことについての確認だ。

神と魔王を見付けたのは奴隷商のところだった。

頻繁に行くところでもない奴隷売買の場所にたまたま行って、勇者がいたらそりゃフラグは本当に立ってたと言えるだろう。

だがそんな偶然あるわけがない。

…なんてことを思ってること自体がフラグなのかこれ?

不安になってきた。


行き先を告げたところ、カノンとラキエルは何か気になることがあるからと馬車で留守番をするらしい。

というわけでルートと2人で奴隷を見る。

イスニアの街のところとは違い、部位欠損した奴隷を扱っていなかった。

つまりこの時点で、神と魔王を見付けた時の状況とは異なるわけだ。


奴隷全員のステータスウインドウを開いてみる。

そして怪しいステータスのウインドウを残し、怪しくないステータスのウインドウを閉じていく。

案の定、残ったウインドウが2つあった。

…え、2つ!?


と、とりあえず1人ずつステータスを暴いてみようか。


■ジャンヌ(女)

・人族

・奴隷(!)

・レベル30

・HP220/250

・MP145/150


ビックリマークのところを開くと…。


■ジャンヌ(女)

・人族

・奴隷(!)-勇者

・レベル30

・HP220/250

・MP145/150


あちゃー、勇者いたよ。

つまり今回のサブタイトルは…。


勇者を自分好みの奴隷に躾けようとしたら、ルートさんブチ切れにつき俺大炎上な件。

(現実逃避)


も、もう1人のステータスも見てみよう。


■セイカ(女)

・人族(!)

・奴隷(!)

・レベル5(!)

・HP30/40(!)

・MP45/50(!)


ん?ビックリマーク多くね?

早速ビックリマークを開いてみる。


■セイカ(女)

・人族(!)-異世界人

・奴隷(!)-星使い

・レベル5(!)-レベル63

・HP30/40(!)-440/450

・MP45/50(!)-540/550


あ、これ、何してもルートさんブチ切れで俺大炎上な件。

(現実逃避)


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