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005 ハーレム王になった俺はリア充爆発魔法により炎上必至な件

「ギャグ漫画じゃなかったら死んでるところだ」

言ってみたかった台詞を言ったが、俺は青い炎に包まれたままだった。


熱くはないし、自分のステータスウインドウを見ててもHPが減ったりしなかった。

「ご主人様!」

ルートがいち早く俺のところに駆けつけた。

「熱くないし、ダメージも受けてないから大丈夫、らしい。」


マリアさん、アンナさん、アリスさんはあたふたしている。

一方、カノンとラキエルは落ち着いて俺の様子を見ている。

ルートは、俺が慌てていないのを見て、すぐに落ち着く。


しばらくすると青い炎が消えた。

刀身にまとってた青い炎も消えた。


俺は早速この宝剣とやらのステータスウインドウを開いてみる。


■シルバーソード

・攻撃力1


■魔法スキル

・真実を暴く光2


「マリアさん、このシルバーソードをお渡しします。」

「ナツキ様、ありがとうございます。でもどうしてこの剣の名を?」

「それは秘密ということで。ところであの人はマリアさんのお客様かな?」


俺の指差す方。カニの部屋に向かう方向。帰る方向にその男は立っていた。

「探しましたよ。姫様。」

「ガンドロ、なぜあなたがここに?」

「姫様をお迎えに上がりました。」

ガンドロと名乗る男はマリアさんにお辞儀をする。


俺はマリアさんの前に立ち、ガンドロとの間に入る。

「ナツキ様、どうされましたか?」

マリアさんに耳打ちする。

「あの男が例の魔族…だよな?」

「ナツキ様、どうしてそれを?」

「カニの部屋を通ってここまで来たから。」

「な、なるほど。」


突然、マリアさんの手にある宝剣…シルバーソードが光り輝いた。

それは目を開けられないぐらい眩しく、強く。


やっと視力が戻ってきたところで、状況が飲み込めてきた。

ガンドロと名乗る男は、人間のように手足はあるものの、青色の肌、とんがった耳、そして背中の羽。

これが魔物なのか…。


っとその前に…。

俺はカノンとラキエルの側に寄る。

「2人とも、翼は大丈夫か?」

2人ともうなずく。

魔王にも神にも翼はあり、今はそれを隠してもらっている。

今の光で翼が出てきてしまうのではないかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。


「ほう、なるほど。やはり姫様にはバレていたようですね。」

「よく言う。それが分かってて口封じに来た癖に。」

ガンドロとマリアさんのやり取りなのだが…マリアさんが俺に対する口調とは全然違う。


姫様。

確かにガンドロはマリアさんのことをそう呼んだ。


ここからは俺の妄想だが…国を乗っ取ろうとする魔族と、それに気付いた姫様。

そんな構図が頭に浮かぶ。

ま、仮にもしそうだったとしても、話はそんなに単純ではないと思うが。


「冥土の土産に自己紹介をしてやろう。俺は魔人ガンドロ。第一王女、第二王女は殺した。後はお前を殺し…おっと。」

ガンドロに斬り掛かるアンナさん。

「話は最後まで聞けって。お前を殺した後はこれだ。」

そう言って、ガンドロは容姿を変形させ…マリアさんに変身する。

すぐさまマリアさんの持つシルバーソードが光り輝き、ガンドロを元の姿に戻す。

「その剣は邪魔だな。何はともあれ、第三王女になりきるなり、面倒だから王を殺して王に変身してもいいかもな。それでお前の国は俺のものだ。」


その言葉にマリアさん、アンナさん、アリスさんはガンドロに攻撃を仕掛けるも、ガンドロは一瞬でを3人は吹っ飛ばしてしまう。

マリアさんの持つシルバーソードも折れてしまった。


「マリアさん、大丈夫ですか?」

俺はマリアさんの元に掛け付ける。

「相手は魔人。人間で言うところの勇者に相当します。私達では勝てないでしょう。だから私達が囮となり、その隙に逃げて、私の国の王にこのことを…。」

「ははは。俺が逃すワケないだろう!」

ガンドロが攻撃してくるが、盾でガードしたら、ガンドロが壁まで吹っ飛んだ。


盾でガンドロの攻撃を防いだ時に軽く押してやっただけなのだが…。


「き、貴様、何者だ!!」

思わず空に逃げるガンドロ。

ここは洞窟だから、飛べる高さにも限度があるが、少々面倒だな。

「ルート、倒すつもりで、本気で弓矢で攻撃だ!」


ルートの放つ矢はガンドロに向かって一直線で飛ぶ。

ガンドロが横に避けるも、矢もそれに合わせてカーブし、命中する。

矢が命中した左腕が、そのまま地面に落ちる。

「ば、馬鹿な!こんな矢程度で俺の身体が!」

「降りて来ないならこのまま矢で殺す。だが、降りて来たら俺と1対1で勝負してやる。」

俺は続ける。

「逃すワケがないとか言ったか?逆だ。俺がお前を逃すワケないだろ?」

「思い上がるな人間風情が。いいだろう。お前と勝負してやる。」


勝負は一瞬だった。

ガンドロの攻撃を盾でいなして、斬り付けただけで、ガンドロの身体が真っ二つに。


俺はマリアさん、アンナさん、アリスさんをヒールで回復した。


「そういえば、あの魔人、第一王女と第二王女を殺したとか言ってたが、大丈夫か?」

「そのことでナツキ様に手を貸して欲しいのですが、一緒に私の国へ来てもらえませんか?」

「えーと、もう俺に出来ることは無いような気がするけど。」

「私の姉2人は…無傷ならいいのですが、死んだとは考えたくありません。ですが…悪くて絶命、良くても重症と見ています。」

「なるほど。もし死んでなければ、もしかしたら俺のヒールが役立つかも、と考えているわけだな?」

「ええ。」

青い顔して話すマリアさん。


「じゃぁ行きましょうかマリアさん。」

「え?いいのですか?てっきり断られるものかと…。」

「本音を言うと、あまり他人と関わりを持ちたくなかったけど、マリアさん達とは切っても切れない縁があるようだ。」


そう、俺の本音。

巻き込まれたくなくて、どんなに遠くに逃げようとも、巻き込まれてしまう現象が世の中には少なからずある。

元の世界でもそうだったな。


お城の一室。

2人の女性がベッドに横たわっている。

マリアさんの淡い期待も虚しく、2人の王女様は殺されていた。

「そ、そんな…ステラお姉さま、レイナお姉さま…。」

「衛兵が見付けた時にはもう既に…マリアよ。一体何が起きておるのじゃ…。」

この人が服装からして王様っぽいな。

傍らにもう1人の女性…恐らく女王様か。


「アンナ、アリス、父と母を他のところに…」

「「はい。」」


アンナとアリスに連れられて、王様と女王様が部屋の外に出る。

部屋の中には、横たわっている2人の王女様、そしてマリアと俺、ルート、カノン、ラキエルだけとなった。

「ナツキ様、また、奇跡を…私をお救いになった奇跡を…どうか…」

「あれはただの回復魔法だよ。回復魔法で死者は蘇らな……ん?」

俺は自分の持つスキルを思い出していた。

確か、ヒール、キュアのスキルの下に…。


「マリアさん、試したことないからどうなるか分からないけど、これからやることは」

「他言無用は守ります!だからお願いします!」

食い気味に返答するマリアさん。


確か元の世界でのラノベのテンプレだと、死んでから一定時間が経過すると生き返らせることができなくなるとか、あった気がする。

そもそも死者蘇生は禁忌、というのもテンプレか?

でもそういう設定は作品に依るか。


なんてことを考えつつ、横たわる2人の王女様に手をかざして俺は叫ぶ。


「リザレクト!」


この夜、お城では、女王が死んだり、死んでなかったりという展開で、てんやわんやの騒ぎとなっていた。


少しして、魔人ガンドロ出現の顛末について、会議室みたいな部屋で、王様と女王様から説明を求められていた。

王様。女王様。3人の王女様。アンナさんとアリスさん。そして俺達4人。

アンナさんとアリスさんは…多分マリアさんの護衛役か。

あくまで俺は第三王女であるマリアさんとたまたま同行していたクエスト中の冒険者だと既に説明されている。

マリアさんは、他言無用の約束を守ってくれていたようだ。


「説明の前に、まずは自己紹介をさせてください。」

さすがに王様の御前で名乗らないのは失礼だろうし。

「私はイスニアの街を拠点に、冒険者ギルドでクエストをこなす、しがない冒険者のナツキと言います。」

「うむ。ナツキ殿じゃな。して、後ろの3人は?」

やっぱり聞かれるよね。俺の後ろにいる、フードをして顔を隠す3人。

やはり王様の前でフードを被ったままなのは失礼だよな。

隠しておきたかったが、仕方ないか。

「3人とも、顔を出して。」


ルート、カノン、ラキエルがフードを外し、顔をあらわにする。

「おぉ。めんこいのが3人…首輪ということは、奴隷かの?」


「王様から御覧になって、右からカノン、ルート、ラキエルといいます。3人とも俺のパーティメンバーになります。」

「ほう、エルフの奴隷か…高かったのではないか?」

「王様、恐れながら、本題に入っても宜しいでしょうか。」

「あ、そうじゃったの。続けるが良い。」

よし。無理矢理感が否めないが、話を逸らすことに成功した。


「まずはイスニアの街の南東にある洞窟で調査のクエストをしていたら、マリア様たち一行に出会い、協力して洞窟の奥まで行きました。」

第三王女だからとりあえずマリア様と呼んでおかないと不味いだろうな。

「そこには宝剣があり、マリア様が手に入れたところで、ガンドロと名乗る男が現れました。」

説明を求められることもあろうかと、俺自身が目立たないようになる筋書きを全て考えてきていた。

「宝剣には不思議な力があり、ガンドロの正体を暴きました。魔人ガンドロ、と本人は名乗っておりました。」

「なっ、魔人じゃと!!」

「はい。魔人です。しかしマリア様は宝剣を手にガンドロに立ち向かい、ガンドロは倒されました。ちなみにその時、宝剣が折れたようです。」

「なっ、ナツキ様!!」

「マリア様。いかがなされましたでしょうか。」

「いえ、そ、その…」

「何じゃ?マリア?」

「いえ、何でもありません。お父様。」

マリアさんが俺にツッコミを入れようとするも、他言無用につき、何も言えなくなる。

王様にも怪訝な顔をされ、引っ込むしかないマリアさん。


「ガンドロは倒される前に、第一王女様と第二王女様を殺害したと言っていたので、俺達はここに向かい、お2人が亡くなられていることを知りました。」

「あの時何が起きたんじゃ?アンナとアリスに部屋の外に連れ出されている間に、何が起きたんじゃ?」

「あの時、折れた宝剣が光り輝き、気が付いたら第一王女様と第二王女様が息を吹き返しておりました。きっと宝剣の成せる奇跡だったのだと思います。」

「成る程、そういうことじゃったか。ナツキ殿といったか、説明、大儀であった。」

「いえ、もったいなきお言葉。それでは俺達はこの辺で…」


気が付いたら、俺、ルート、カノン、ラキエルの4人は、王城の一室で一泊することになっていた。

これが王族クオリティーか?

王族こえー。


それは王様の鶴の一声だった。

「ナツキ殿、泊まっていかれるよな。」

その真剣な眼差しを前に、俺は王様の申し出を断ることが出来なかった。

何だろう…俺の嘘がバレた…のか?

嫌な予感がする。


翌朝。


「待たせたな、ナツキ殿。」

朝食後、1時間ぐらい経っただろうか。

おもむろに王様が部屋に入ってきた。

いや、王様だけではない。女王様と3人の王女様も。

全員、横並びになる。

あ、これアカンやつだわ多分。


「ナツキ殿、まずは、マリアの命を2度救い、それだけでなく、ステラ、レイナを生き返らせたことと、我が国を救ってもらったことについて、礼を言わせてくれ。」

全員が頭を下げる。

この国で一番偉い王族が全員、俺に頭を下げる。

ナニコレ恐縮すぎて帰りたいんだけど。


「マリアさん、しゃべってしまいましたか。」

マリアさんがシュンとする。

「ナツキ殿、わしがマリア、アンナ、アリスから無理矢理聞き出したのじゃ。だからその者らをあまり責めてやらんでくれ。」

さすがは一国の主と言うべきか。きっと俺やマリアさんの様子から、嘘を看破したんだろうな。

そして誤魔化し切る自信のあった俺ではなく、マリアさん達から強引に聞いたんだろう。


「わしの愛娘たちの命を救ってもらった。これ程の恩を黙って見過ごす者は我が一族に一人もいないと自負している。」

アカン、話が大きくなりすぎている。

「しかしこれ程の恩、どうすれば返し切れるのか…。ナツキ殿、何でも良いから要望を挙げて欲しい。」

「それでは今回の件、もし城内または国民に公表する場合は昨晩俺が説明した通りマリアさんが手柄を取ったことにして欲しいのと、俺の持つ力を他言無用にしていただきたい。それだけで俺は充分です。」

「ナツキ殿、それだけではとても恩に釣り合わない。何とか恩に報わせて欲しいのじゃ。」

と言われてもなぁ。ここで富や名声をもらうのも何か違うだろうし。


「そうだナツキ殿。さらに今から言う3つの中から欲しいものを選んで欲しい。」

何か思い付いた王様は続ける。

「ただし必ず1つは選んで欲しい。もちろん2つ選んでも良いし、全部選んでも良い。」


必ず1つ選べって…何か色々と逃げ道を失った気分だが、大丈夫かな俺。


「まずは1つ目。この王宮でそれなりの地位で取り立てること。そこら辺の仕事に比べたら安定で高収入じゃぞ。」


「次に2つ目。マリアと結婚すること。どうやらマリアはナツキ殿を好いているようだ。わしもナツキ殿であれば結婚には反対せん。」


「最後に。わしの所有する家を譲ること。王宮の外だが一軒家で、隣には憲兵詰所があるから周辺の治安も良いところじゃぞ。」


この世界での俺の行動方針として、この異世界を楽しむというのがある。

王宮で雇われたら、国から遠出することもできないだろうし、1番目の選択肢は無いな。


マリアさんと結婚?

結婚か。考えたことは無かったな。

そもそも元の世界では生涯独身だったし、結婚は俺の視野に無いものだな。

マリアさんか。美人、の部類に入ると思うが…。

マリアさんからは懐かれているという感覚はあるが、果たして俺と結婚したいほど好かれているのだろうか。

やはり、結婚の話をされてもいまいちピンと来ないな。

2番目の選択肢も…今は、無いだろうな。


そうなると最後の選択肢。

家。一軒家か。

今はイスニアの街の宿屋を拠点にしているが、宿の部屋が手狭になっているのも事実。

一軒家があると便利かもしれない。

1つ必ず選ばなければいけないとしたら…これはもう決まりだな。


「王様。家を希望します。」

「マリアと結婚し、家から通い、王宮で働きたい、と?」

「いえ、そんなことは断じて申しておりません。」


こうして俺は自分の家を手に入れることとなった。


俺 の 意 図 し な い 内 容 が て ん こ 盛 り で。


王宮で昼食をいただき、早速俺達はその家の前までやって来た。

ちょっ、これ大きすぎない?

4人で住むには明らかに大きい、3階建ての家がそこにあった。

パッと見、部屋数も30とかありそうだ。

家の前で、首輪を着けた…つまり奴隷のメイドさんから声を掛けられた。

「あなたがナツキ様ですね。ご主人様から伺っております。こちらへどうぞ。」

ん?何これ。

状況が把握できないまま、俺はメイドさんに連れられ、家の中に入る。


家の中には、なぜかマリアさん、アンナさん、アリスさんの3人がいた。

いや、それだけでなく、首輪をしたメイドさんが20人はいるな。

さて、イ、イ、イスニアの街に帰るかな。(現実逃避)


「ナツキ様、無言で回れ右はやめて!」

マリアさんにガシッと腕を掴まれる俺。

「えーとこれはどういうこと?」

「今から父上からの伝言をお伝えします。」


マリアさんの言葉に耳を傾ける。


「マリアが一緒に住まないなんて誰も言っていない。」

「使用人が住み込みで働かないなんて誰も言っていない。」

「家の件、断ってわしに恥をかかせたりせぬよな?」


老獪ここに極まれり、と言ったところか。

さすが王様…無難と思える選択肢にこんな罠を仕掛けるとは。

でもこれ、さすがにやり方が汚くない?


昨日、俺が考えていたことを思い出していた。

『巻き込まれたくなくて、どんなに遠くに逃げようとも、巻き込まれてしまう現象が世の中には少なからずある。』

少なからずあったよ。先読みの天才だな昨日の俺。


「ちなみに、アンナとアリスは私の護衛で当然一緒に住むし、使用人達は全員、私の配下の者よ。」

見たところ、マリアさん達もそうだが、メイドさん達も全員女性で住み込み。

もちろんルート、カノン、ラキエルも女性。


俺の家は一瞬にしてハーレム屋敷と化したのだった。


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