001 初級レベルの炎魔法が激しく炎上した件
■以下修正しました。(2018/12/29)
・サブタイトル変更。
・ステータスに性別を追加。
・主人公の名前の漢字表記をこっそり公開。
・冒険者ギルドの登録時に署名する紙の内容を追加。
・ウルフのステータスを少し追加。
■以下修正しました。(2018/12/29)
・サブタイトル変更。
気が付いたら俺は外で寝ていた。
なぜこんなところで寝てるんだ?
俺は寝る前の記憶を辿ってみる。
病室。
病気が手遅れな状態まで進行。
強力な痛み止めで痛みは感じない。
まどろみの中で俺は眠るように意識を手放した。
そうだ。思い出した。
確か俺は病気で死んだはずだ。
起き上がって周りの様子を確認してみる。
目の前には草原が広がり、後ろには十メートルぐらいの高い壁が左右にずっと続いている。
そして草原と壁の間は整地されている。
服装を確認してみる。
俺の今の服装は…Yシャツにカジュアルパンツだな。
持ち物を確認してみる。
リュックサックがあり、中には手鏡が入っている。
手鏡で自分のことを確認してみる。
あれ?俺は45歳だったはずだが、どうみても14、5歳ぐらいだよな。
しかも元々の俺の15歳の時よりもかなりイケメンになってる気がする。
意味が分からない。
死後の世界にしては…天国でも地獄でも無いよなここ。
もしかして、ここはラノベのテンプレの1つ『異世界』だったりして。
…冗談はさておき。
壁沿いに歩いて三十分ぐらいだろうか。
壁に入口があり、何やら兵士みたいな人たちが警備しているようだ。
見てるだけでは何も始まらない。とりあえず情報収集だな。
兵士っぽい人に声を掛けてみた。
「すいません。ここはどこですか?」
「ここはイスニアの街だ。中に入りたいなら身分証を出してくれ。」
「あー、身分証は持っていないです。」
「ならばこの水晶玉に触れてくれ。」
言われた通り、兵士の横の台に乗っている水晶玉に触れてみた。
兵士が水晶玉を覗き込み、何かを確認している。
「通って良し。」
「あ、良いんですか?ちなみに何を見てたんですか?」
「ステータスだ。レベル1だし、何か悪さをしたところですぐに捕まえられるだろうし。」
「そ、そうですか…それでは入らせてもらいます。」
ステータス?
もしかしたらここはゲームの中か?
いや、フルダイブVRでもまだ匂いとか五感全てが再現できていなかったはずだ。
と、考えながら壁の中に入った。
壁の中は街が広がっていた。
壁は大きな街を囲んでいたんだ。
しかも人間では無さそうな…獣の耳を持った者などもいる。
さっき思ったことを思い出してみる。
「もしかして、ここはラノベのテンプレの1つ『異世界』だったりして。」
…イセカイダッタデゴザル。
待て待て!
ラノベの他のテンプレはどこ行った?
『王様に召喚されて勇者になる』みたいに、パトロンがいないと飢え死にするぞ。
『ハーレム』みたいに、女の子に囲まれていないと…ってこれは無くても大丈夫か。
ということは、俺。
自 力 で お 金 を 稼 い で 生 活 し な い と ア カ ン。
マジかーー!!
でも単純に異世界に放り出されるとこうなるよね。
仕方が無い。とりあえず今日の飯と寝床を確保するか。
こういう時、確かラノベだと、何かギルド的なものに加入して、クエストを受けてお金を手に入れる感じか。
ギルドへ向かいつつ、歩いている人や露天の人などから、色々と話を聞いてみた。
ギルドのこと。貨幣のこと。
この街にはギルドがいくつかあり、クエストをこなしてお金を得る冒険者ギルドと、商品の大量仕入れや販売が出来る商人ギルドなどがあるらしい。
貨幣は…実際に入手してからの話か。
色々な人から話を聞いている間に、リュックサックから何かチャリンチャリンと音がしていたな。
リュックの中を確認してみると、いつのまにかコインが何枚か入っていた。
金色のコインが2枚、銀色のコインが3枚、褐色のコインが11枚。
この世界では金貨、銀貨、銅貨と言うらしく、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚と同じ価値らしい。
どこから出てきたんだ?
まさか手鏡からか?と手鏡を覗いてみると、何かが表示されていた。
■ナツキ(男)
・人族
・無職
・レベル1
・HP30/30
・MP30/30
■ステータス
・攻撃力1
・防御力1
・魔法力1
・素早さ1
・運1
小学校の通知表かと思ってしまうぐらい、見事なまでにオール1でした。
ロールプレイングゲームだったら詰んでるよなこれ。
ちなみにナツキは俺の名前だ…って誰に説明してるんだ俺?
漢字で書くと『夏雪』なのだが、なぜかカタカナで表示されている。
手鏡をスマートフォンのように操作してみたら、画面をスクロールできた。
■物理スキル
・剣1
・槍1
・斧1
・弓1
・拳1
・盾1
■魔法スキル
・ファイア1
・アイス1
・ウインド1
・グランド1
・サンダー1
・ヒール1
・キュア1
・リザレクト1
■パッシブスキル
・神の黄昏1
・勇者の黄昏1
・魔王の黄昏1
・魔人の黄昏1
・他言語翻訳1
スキルがいっぱいあるのは嬉しいけど、この数字はレベルだよな?
全レベル1とか、詰んだ感が満載。
あとパッシブスキルの内容が何か不穏な気がする。
勇者とか魔王とかモロにラノベな展開だし。
異世界の人々と言葉が通じてるのは他言語翻訳とやらのお陰なのかな。
もう少し手鏡の中をスクロールさせてみる。
■その他
・経験値0
・金貨2
・銀貨3
・銅貨11
・奴隷0
最後にまた不穏な単語が出てきたな。
異世界モノのラノベには、確かに奴隷制度があって奴隷が出てくる作品もあるが。
街の入口の水晶玉もこの情報が全部見られちゃうのかな?
宿に宿泊できるぐらいのお金が手元にあるけど、あまりこれをアテにするのも良くないだろうな。
とりあえず冒険者ギルドに行くか。
冒険者ギルドに着き、受付の女性に声を掛けてみる。
「えーと、ギルドに登録したいのですが…。」
「依頼ですか?冒険者登録ですか?」
「冒険者登録です。」
「それではまずこの水晶玉に触れてください。」
街の入口のものと同じ水晶玉、再登場。
言われた通り、触れてみる。
そして受付の女性は水晶玉を覗き込む。
「あ、俺も見てもいいですか?」
「どうぞ」
俺も水晶玉を覗き込んだ。
■ナツキ(男)
・人族
・無職
・レベル1
・HP30/30
・MP30/30
■ステータス
・攻撃力1
・防御力1
・魔法力1
・素早さ1
・運1
「ステータス的にあまりオススメしませんが、本当にギルドに登録しますか?」
「その前に、水晶玉に表示されるのはこれだけですか?」
「はい、これだけになります。今のところどこの水晶玉でもこれが限界です。」
「あと、ギルド登録した後の流れってどんな感じですか?」
「あちらの掲示板に張り出されているクエストから選んでもらって完了すればお金が支払われます。」
「そうですか。それではギルド登録をお願いします。」
「はい。それではこちらに署名してください。」
受付の女性から1枚の紙を渡される。
他言語翻訳スキルのお陰か、書かれている内容が理解できる。
ギルドとの契約らしいが、簡単に言うと怪我や死亡は自己責任ということだ。
内容的に俺が不利益になるような内容もなさそうだし、名前を書いて渡す。
「それでは5分程度お待ちください。」
良かった。水晶玉ではあれしかステータスが見れないんだ。
ということは、俺の持ってる手鏡って一体ナニ?
待たされた後、ネックレスタイプの認識票を渡された。
こういうのはドッグタグって言うんだっけ?
「これはギルドの一員である証と同時に、身分証にも使え、また、万が一の時の本人照合にも使われます。」
最後に怖いことを言われた気がしたが、スルーすることにした。
こうして冒険者ギルドへの登録が終わった。
次にクエストを見てみる。
掲示板には様々なクエストが紙で張り出されている。
大別すると早い者勝ちのクエストと何度でも受けられるクエストの2種類があるようだ。
どのクエストも推奨レベルが設定されており、危険度が一目で分かる。
また、推奨人数と平均レベルが設定されたパーティ限定クエストもあるようだ。
日もまだ高いし、採取系のクエストを適当に受けてみた。
手ぶらではさすがに心許ないので、銀貨2枚で安物の剣を武器屋で調達した。
街の外に出てから気付いたのだが、俺が望むと、対象のステータスウインドウが表示されることが分かった。
ナニコレ、コンナスキル、モッテタッケ?
当然だが、目視できる範囲でしか使えない。
使えてしまうのだから、有り難く使っておこう。
でも採取系クエストでこれは反則だな。
ステータス表示で見た物の名前が分かるので、受けたクエストがアッと言う間に終わってしまった。
そんな街の近くの森の中。
街に帰ろうと思った時に、そいつらは現れた。
「グルルルル…」
狼みたいなのが威嚇しながらこちらに近付いてくる。
こいつのステータスウインドウを開いてみると…。
■ウルフ(オス)
・ウルフ族
・レベル10
・HP150/150
・MP0/0
■ステータス
・攻撃力40
・防御力25
・魔…
攻撃力と防御力を見た時点で、俺はステータスを見るのを辞めた。
これ、俺なんかじゃ多分瞬殺されるだろうな。
というわけで剣で威嚇しつつ、後ろにジリジリと下がって行くも、ほぼ同じ早さで追従してくるウルフ。
そして一気に間合いを詰められてしまい、とっさにガードした左腕が噛まれてしまった。
「痛ああぁぁ………くない。なんだこれ?」
左腕をぶん回し、ウルフを振り落とす。
しかし即座にまた攻撃を仕掛けるウルフ。
ダメ元でその攻撃に剣を合わせてみたところ、スパッと真っ二つに斬ることが出来てしまった。
ウルフは右半身と左半身に綺麗に分かれ、地面に落ちる。
確か、剣スキルはレベル1だったよな?
レベル1でもこんなにすごいものなのか?
自分のステータスを調べてみる。
意識して自身を対象にステータスウインドウを開こうとしたら、うまく出来た。
■ナツキ(男)
・人族
・無職
・レベル1
・HP29/30(ウルフからの攻撃で-1)
・MP30/30
■その他
・経験値0
・金貨2
・銀貨1(剣の代金で-2)
・銅貨11
・奴隷0
ん?HPが1しか減ってないな。
ステータスにかなりの差があるにも関わらず、ウルフに噛まれてダメージ1なのか?
あと経験値が増えていない。
経験値が増えないと強くなれないんだよな多分。
とか考えている内に、さっきのウルフの仲間だろうか。
何匹か遠くからこちらの様子を伺っているようだ。
俺が街の方に向かうと、同じ速度でウルフ達が付いてきた。
俺が立ち止まると、ウルフ達も止まる。
このまま追い掛けられるのも嫌だな。
そこで閃いた。
魔法で注意を逸らしてその隙に逃げよう。
どの魔法スキルもレベル1なので、とりあえずファイアを使ってみることにした。
しかし魔法ってどう使うんだ?
魔法名を言えば使えるのかな?
試してみよう。
「ファイア!」
ウルフ達に手の平を向けて、叫んでみた。
手の平の先から小さな火の玉が発生し、ウルフ達に向かって飛んで行った。
そして火の玉が着弾した瞬間。
轟音と共に高さ数百メートルにも及ぶ火柱が上がった。