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謁見の間では現在、国内の貴族が集まっており、本日の主役である皇太子の嫡男であるアルフォンソの登場を、今か今かと待っていた。
「やっとこの日を迎えられましたなぁ」
「本当に。噂ではとても愛らしいお姿をされていると伺っておりますが、正式な御披露目が済むまでは、絵姿も王家の私的な場所にしか置かれておらず、よほど親しい間柄でないとアルフォンソ様ご本人にお逢い出来ないばかりか、その絵姿さえ観る事は叶いませんからね。」
そんな話が所々でなされていた。と、
「国王、王妃両陛下ならびに皇太子、皇太子妃両殿下の御成りでございます」
との声が響き、一瞬の間に静寂が辺りに広がる。
一斉に最敬礼をとる貴族たちの前をゆっくりと進み、玉座の前で止まり貴族たちの方を向くと、国王はこれがアルフォンソの公式初披露目の儀である事を宣言する。
国王の宣言に続き皇太子が挨拶の言葉を述べているが、要するに
『息子が5歳になったのが本当に嬉しい。もうマジ天使。これからお披露目するけど、変な気起こすなよ?わかってるだろうな?よろしく頼むわ。今日は来てくれてありがとな』
って事を、長く小難しく綺羅綺羅しい言葉で並べ立てて言っていただけであった。
王や王妃、貴族の視線が生暖かく皇太子に注がれるなか、皇太子妃はさも当然とばかりに頷いている。似た者同士の親馬鹿であった。
続いて、アルフォンソの入場が伝えられ、皆の目が一斉に登場方向へ向けられる。
少し緊張した面持ちながらも、堂々とした足取りで歩いてくるアルフォンソの愛らしい姿に、そこかしこから感嘆の息が聞こえてくる。
特にご婦人方は手にした扇で口元を隠し、叫びそうになるのを必死で堪えている姿が多数見受けられた。
『マジ天使』
この日謁見の間に集まっていた貴族は、その言葉に皆ひどく納得したのだった。